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日本経済を分析するためのノート(14)

さて、これまで見てきたことに踏まえて、IT化のもたらすものについて考えてみましょう。
IT化のもたらす生産の効率化はすでに述べたように、節約による省力化・合理化です。IT化を進めるために巨額な設備投資が必要になるわけでもありません。
現在の日本の経済の構造を前提とするならば、IT化の進展のもたらすものは就業者数もしくは労働時間の減少でしょう。しかしそれは労働者を楽にするものではありません。IT化の進んでいない労働集約的な分野で働く人がますます増えていくことにしかなりません。
現在、宿泊業・飲食サービス業で70%、卸売業・小売業で47%が非正規雇用です。こうした分野での雇用がますます増えていくことでしょう。さらにこうしたところでもIT化が進めば(セルフレジやタッチパネル注文など)さらに別のところに人は流れていくしかありません。
(介護職はその4割ほどが非正規ですが人手不足です。外国人労働者も増えてきています。そこでIT化が進むとしたらどのような形になるのでしょうか。機械中心では介護は成り立ちません。人との触れあいが高齢の方には必要不可欠できわめて大切なものです。)
また、IT関連の労働者も、
①高度なIT技術を開発する技術者
②プログラムなどを作成する中級の技術者
③端末やパソコンの入力などの操作を担う人
といったように分かれ、少数で高所得の①、低賃金の非正規などで雇われる③というように階層化されるのは間違いないと思われます。
そしてそれに見合った形に教育も再編されるかもしれません。

いずれにしても、IT技術の導入によって労働が軽減されて人々は余った時間を様々なかたちで使うことができるなどということは起こりえないでしょう。労働時間の短縮や労働の単純化は正規社員の非正規への置き換えと賃金の低下をもたらすというのが日本の現状です。
結果は、よりいっそうの格差社会の進展でしょう。

つづく


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