合気道の「受け」について、整理してみました。(1 / 5)
(0)合気道は、わかりにくい?
① 試合をしないとダメですか?
合気道に馴染みのない人が、合気道の演武等を見て抱く感想は、大きく分けて次の2つだと思います。
何をやっているのかよく分からない。形(かた)?
ヤラセ?技が効くから人が跳ぶ?それとも自分から跳んでいるの?
合気道は「武道」です。そして、試合等によって、勝敗・優劣を争うことをしません。
ですが、現代人の多くにとって、「武道」とは、テレビなどでよく目にする、柔道・剣道・空手道などであり、「試合で勝敗を争うもの」(または「形」で点数を競うもの)であるようです。
片方が技を掛けて、片方が技を受ける(または捌く)。
稽古している身としては、ただそれだけのことなのですが、「試合をしない武道」というだけで、「わかりにくい武道」と思われるようです。
② 伝統的には「試合をしない」ほうが主流
ですが、日本の伝統的な「道」では、「試合をしない」ほうが主流です。茶道・華道などの文化・芸術の「道」に限らず、武士が中心となって生み・育ててきた武道も、いたずらに試合をするものではありませんでした。
それもそのはず。
大衆の面前で「試合」を行ったり、「形」を披露することは、自らの手の内を晒すことです。そして、手の内を晒すことは、木剣(または真剣等)での勝負においては、死に直結します。道場主であれば、試合での1度の敗北は、信頼の失墜を意味します(実戦で使えないと証明されたのですから)。
現代からは想像できないほど、技術の流出・公開に慎重だったのは、想像に難くありません。
そのため、日本の伝統的な武術・武道の多くは、一子相伝・家伝、または御留流・御留技(*1)といった形で、技術の継承範囲を限定していました(※技術を正確・確実に伝えるため、という意味合いも強いと考えられます)。
ちなみに、合気道もその歴史は戦前まで遡りますが、広く一般に公開されたのは1956年からです。
「戦後、広く一般に広まった武道」であるため、合気道は柔道・剣道・空手道等と併せて、「現代武道」に分類されます。ですが、「試合をしない」などの特徴が示すように、合気道は「伝統的な武道の特徴」を、より色濃く残している、と言えそうです。
③「受け」の存在・役割が、わかりにくくしている?
「試合をしない武道」である合気道において、大きな特徴であると同時に、最も理解されにくいのが「受け(技を受ける人)」の存在・役割だと思います。
特に、「武道とは競い合うもの」という、(新しい)固定観念を持つ方々にとっては、相手の技を素直に受けるという、「受け」の存在・役割が理解しにくいようです。
だからこそ、「ヤラセ?」という感想が出てくるのだと思います。
また、合気道を稽古している人にとっても、その関心は技を掛けること(「取り」といいます)に重きが置かれます。道場稽古でも、さまざまな道場から人が集まる講習会・研修会でも、そのほとんどの説明は、「取り(技)」に関するものになります。
そのため、稽古において致命的に重要であるにも関わらず、「受け」について体系的に教わる機会は、ほとんどありません(「受身」を除く)。また、合気道について書かれたテキストは大量にありますが、「受け」について、言葉を尽くした記述には出会ったことがありません(私が寡聞なだけかもしれませんが…)。
体系的に教わることがないため、「受け」についての考え方は千差万別です。だからこそ面白いとも言えますが、よくよく注意しなければ、「目指すべき稽古」を阻害するものにも変身します。それだけ、合気道の稽古において「受け」は重要なのです。
④「受け」について書いています
この記事では、合気道の「受け」について書いています。読んでくださる方の、合気道を知るための1つの手がかりとなれば嬉しいです。
なお、この記事の内容は、あくまでも私が学び、考え、文献資料などを加味して整理したものであり、「唯一の正解」などではありません。
それぞれの先生・道場が目指す稽古の方針によって、「受け」の役割や、そのあるべき形などは変化します(後述)。そして、そのどれもが「正解」なのだと思います。
この点を念頭に置いて、読み進めていただきたいです。
【参考・引用文献】
(*1)「御留流・御留技」:大先生が北海道開拓時代に師事した武田惣角師は、会津藩の「御留技(藩外不出の秘伝)」である大東流柔術の、「中興の祖」とされている(参考:『合気道開祖 植芝盛平伝』植芝吉祥丸 編著, 植芝守央 改訂版監修(1999), 出版芸術社, pp93-99)。
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