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「えっほ!えっほ! えっさ!えっさ!」

大学時代、準備体操は正直嫌いでした。

ラジオ体操のように身体を曲げる過程で筋肉や関節を曲げ伸ばしする動作は納得がいきます。

いかんせん苦手なのは「舟こぎ運動」等、合気道で見られる特徴的な運動法でした。
入部当初はみんなが揃って前後に身体を揺らすこの動作に、何の意味があるのか全くわかりませんでした。

「えいほ! えいほ! えいほ!」
 「えいさ! えいさ! えいさ!」

何より掛け声が恥ずかしい……。

一応声を出してはいるものの、下を向いて舟こぎ運動が終わるのを待つ、こんな日々が続いていました。


ある日の師範練、大学のゼミで会議が長引き遅れてしまいました。
準備体操を手短に済ませて参加しようとしたところ、

「じじじ準備体操をしっかりやってから稽古に入ってな。
 準備体操にはな、身体の使い方のコツが詰まっとんよな

稽古の後、こう付け加えてくれました。

「2代目道主(植芝吉祥丸道主)は本部道場の下の階できっちり準備体操してから道場に上がってきよったと聞いたことがあるわの。
道主のところへは世界中からいろんな人が稽古に来るやろ、それを相手にするんには、始まる前からエンジンを温めかないかんのやろな。」

養神館の塩田剛三先生も、技の説明をしながら自分の手首に手を当て、適切な心拍になるのを確認していたのだとか。

膝、丹田、両手の使い方……。舟漕ぎ運動をはじめとする準備体操には、身体の使い方のエッセンスが詰まっていると実感するのは、もう少し先の話になります。

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