嘘の武勇伝029
2020年6月29日(月曜日)
なんだかんだで四十路になっている私ナカムラ・タカハシ。
20代後半頃まではのらりくらりと人並み程度には“大人の階段”を登っていたのですが、ブラック企業に数年勤め、両親の離婚やら、他界やらを経験し、色々と思うところもあって(たいして思うところもなかったですが)
平たく言うと“ドロップアウト”したと言うか“世捨て人”になったのでした。
とは言っても“低所得な事”と“人と関わらない事”以外はいたって“普通”に暮らしているとは思うのですが
世間の目からどう見られているのか?は定かではないし、世間の目からどう見られているのか?というモノサシは既に僕にとってはどうでも良い事になっているのです。
で、その日もいつもと同じように仕事を定時で終え、帰宅途中のスーパーに寄り、夕飯のオカズを物色していたのですが
「ナカムラ・タカハシさんですよね?」
と突然話し掛けられたんです。
賢そうな中学男子に···
“賢そう”にもう一つ付け加えるなら“教師に疎まれるタイプの”と言った感じの中学男子
“教師に好かれるタイプの賢そうな子”は実際はたいして賢くないので“教師に疎まれるタイプの賢そうな子”である彼は実際に賢い方の賢そうな中学男子なのであろう。
まぁ、その辺はただの僕の偏見の話なのでどうでも良いですが···
見ず知らずの中学男子に話し掛けられ、まったくリアクション出来ない社交性皆無の中年おじさんに
「ラジオネーム、それいけウォンバットマン改め、コルサコフマーマレードドッグ改め、ずるいアヒルと俺改め、江戸スッポン改め、エッチな寺子屋の、ナカムラ・タカハシさんですよね?」
と追い打ちを掛ける中学男子
インターネットガチ勢がその気になれば、僕の住所や本名程度は、僕のブログなどから調べる事は出来るだろうけど、歴代のラジオネーム、ましてや最近使いはじめた“エッチな寺子屋”まで知ってるとなると穏やかじゃないぞ···
いや、ラジオネーム“エッチな寺子屋”ではまだ一度も採用されてないから知ってるはずがないのに···
と考えつつ引き続きフリーズ中の僕に
「実はボク、タカさんとは何度もお会いしてるんですよ」
と少年
いや、初対面だろうと、会った事があろうと、“エッチな寺子屋”を知ってるなんて?どういう事だ?あり得ないぞ?
と頭の中でグルグルと考えつつ、引き続きフリーズ中の僕に
「実はボク、今日2020年6月29日の月曜日から、7月5日の日曜日までの一週間を何度もタイムリープしているんです。で、訳あって3回目のリープからタカさんと一緒に行動させて貰ってまして、今回が8回目のリープなので、タカさんに「はじめまして」のご挨拶をするのは6回目なんです」
と少年
うへぇ···タイムリープと来たか···
これまで天狗にヒグマの骨を移植されたり、巨大な猿のバケモノを退治したり、しゃべる犬と一緒にアトランティス文明の秘宝を探す旅をしたり、爬虫類タイプの地球外生命体とサンダードームでデスマッチをしたりして来た百戦錬磨の僕もにわかには信じられない展開だぞ
と引き続きフリーズ中の僕に
「いきなりタイムリープとか言われても信じられないでしょうから、今日のところは挨拶だけです。あとこれを渡しておきます。」
と何やら数字の書かれたメモ紙を僕に渡す少年
「これは明日の火曜日抽選のミニロトとナンバーズの当選番号です。この番号が実際の当選番号と一致したら、僕が未来を知ってる事の証明になりますよね?まぁ、この当選番号予知でタイムリーパーだとアピールするやり方はタカさんのアイデアなんですけどね」
「では、また水曜日に伺います」
と言うと少年は去って行きました。
結局一言も話せなかった僕は、とりあえず半額のお刺身を買って店を出た。
続く。
※天狗にヒグマの骨を移植された話 巨大な猿のバケモノを退治した話 しゃべる犬と旅をした話 爬虫類型エイリアンとデスマッチした話 などはこのnoteで読めます(まだ途中ですが···)