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『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』を今見てる

現在、Amozonプライムビデオでは「映画ドラえもん」シリーズの全作品が配信されている。
ずらっと並んだそのラインナップをぼんやりと見ていて、小学生の時に親に近所のレンタルビデオ店に連れて行ってもらったころのことを思い出した。
その時は、映画ドラえもんは20作くらいがビデオとして出ていて、ドラえもん博士になりたかった自分は、それを全て見てやろうと思っていた。
ただ、いつ行っても貸出中の作品があったりして、計画はいつの間にやら頓挫してしまった。小学年高学年になるころには自分もドラえもんから心が離れることとなり、それからしばらくしてドラえもんたちの声も製作陣も変わったこともあり、ずいぶんと遠いところに行ってしまったような気がして今に至る。
結局、『のび太の鉄人兵団』だけは映像を見ずに漫画で読んで何とかしたような気がする。

今は、目の前の画面上に並んだ作品を一つボタンを押せば見ることができる状態にいる。
貸出中に悩まされる必要もないし、延滞料金を払って「ああ、なんてバカなことをしたのだ」と自分を呪うように後悔することもない。
贅沢だ。サブスクは贅沢だ。
これはあれだな。「大人買い」なんだな、と思った。
レンタルビデオの大人買いなのだな、サブスクっていうやつは。
サブスクに何かをキッカケに入ったっきり、生活の中にうまく組み込むことができないというか、サブスクの立ち位置というものを自分の中で見つけれられずにいたのだけれど、大人買いをしていると思えば、まあ、なんとなく合点がいくというか、うまいところ落としどころを得た気がする。
ありがとう。ドラえもん。
そんな大事なことに気が付かせてくれて。

ドラえもん のび太のドラビアンナイト

それで見てみたのは『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』。
特に理由はなくて、なんとなく目に入った、ということ。見た記憶はあるが、内容の記憶がないという印象があって、ある程度、新鮮な気持ちで見れるんではないか、と思ったこと。あたりが理由になるかもしれない。

絵本の中に入って、その世界を体験できるという秘密道具を使って遊んでいたら、とある事故でしずかちゃんがシンドバッドの冒険の絵本から出てこれなくなってしまう。不幸なことに、その絵本自体を焼失してしまう。何とかして、しずかちゃんを救おうとドラえもんたちはある秘策を思い付くのだが…

序盤のあらすじだけを書くとこういう感じ。

タイトルからわかる通り、そのあとは舞台は中世の中東に移り、アラビアンナイトの世界での冒険が始まる。

この冒険にワクワク感があるかどうか、というのがドラえもん映画の肝だと思うのだけれど、この作品はそんなにワクワクはしない。

同じ『千夜一夜物語=アラビアンナイト』を描いた作品だと、先に頭の中に出てくるのはディズニーの『アラジン』なわけで、それと比べるとやっぱり見劣りしてしまうのはしょうがない。
やはり先人が強いと困るよなあ、などと思っていたものの、調べてみると『ドラビアンナイト』の公開は1991年3月。で、『アラジン』の公開は1992年11月。
『ドラビアンナイト』の方が1年以上先に公開されていた。

ということは、当時『ドラビアンナイト』を映画館で見た人たちは当然、『アラジン』を見ていないわけで、そうなると今見てる自分とは見え方が違っていたんだろう。

もっとビビッドにあの世界観を感じれただろうし、もっとワクワクしたのだろうな、と思う。今じゃなかなかわからないのは残念だけれど。

それにしても、ディズニーとドラえもんで同時期に同じテーマのアニメが作られていたのは興味深い。

ディズニーの次回作がアラビアンナイトであるという情報はすでに流れていて、それに乗っかるような形で企画されたのか?

世界的にアラビアンナイトが流行っていたのだろうか?

それとも単なる偶然なのか?

まさかディズニーがドラえもんに影響を受けた?というのは妄想が過ぎるか。

老年の生き甲斐とは?

あまり強調されているわけではないので、これがこの映画のテーマだ!と言える感じではないかもしれないが、老年期の生き甲斐について、という渋いテーマも扱っている。

ゲストキャラクターとして老シンドバッドが出てくる。これがこの映画の鍵である。

この老シンドバッドは孤独ではあるものの、宮殿で悠々自適な生活をしている老人で、かつての船乗りシンドバッドの面影はない。

ピンチを迎えて泣き言を言う老シンドバッドに対して、若かりし頃の冒険家船乗りシンドバッドに憧れていたのび太が声をかける。それを受けて、老シンドバッドが奮い起つというシーンが描かれる。

たとえ年老いたとしても、心まで老いる必要はない。いつだって心は若返ることができる。

あの日の背中をきっと誰かが見ていて、その背中を見ていた人がいつかあなたの背中を押してくれる。

ずいぶんと渋い。渋過ぎやしないか。小学生にわかるのか?このテーマは。

まあ、実際には、この辺りの展開はかなりさらりとしているし、老シンドバッドは戦いが終わったあと、また隠居生活に入るし、そこまで主題というほど重いものではないとは思うけれど、じっくりと味わってみると心に響くものがありました。

名曲『夢のゆくえ』

クライマックスを迎えたあと、割と余韻もなくエンディングのスタッフロールが始まるのは少しビックリしたものの、さらに驚いたのはエンディング曲の『夢のゆくえ』があまりにも良い曲だった、ということ。

思わず聞き入ってしまって、終わったあとも何回か巻き戻して聞いてしまいました。

ゆったりとしたオシャレで都会っぽい感じもありながら、どこか幻想的な感じもする浮遊したメロディに白鳥英美子の澄んだ歌声が乗っかる。

特に曲が進むにつれて徐々にコーラスが重なっていって、終盤のla la laのあたりはあまりにも美しくって強くってで圧倒されてしまう。
もしかしたら、同時期に流行っていた山下達郎の『クリスマスイブ』のあのカノンのコーラスの影響もあったのでは?なんて邪推するほど、見事なコーラス。

武田鉄矢作詞の歌詞も、作品にあった砂漠という言葉を使いながら、幻想的な情景を描いている。

個人的には夜汽車、星屑、汽笛、というフレーズにフォーク味がありすぎて、ちょっと浮いているような感じが少し引っ掛かる気もするが、そんなことは大した問題ではない。

このエンディング曲はとにかく名曲で、この曲があってこそこの作品は完結するわけである。

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