西陣織マスクを5000個作った感想
東京の小池都知事が週末の外出自粛を要請して5日後の2020年3月30日、この頃世間では慢性的なマスク不足が話題になっていました。
そんな中いつものようにツイッターでブランドのエゴサーチをしていたところ「renacnattaでマスクを作ってほしい」というツイートを見つけ、私はリツイートをしました。
この時、マスクを作るか、ぼんやり考えていたものの、「布マスクは意味がない」と言われまくっていた時期なので正直やる意味があるのか悩んでいました。そんな時、このツイートを見つけ背中を押されてような気持ちになり、続いて私のリツイートのリプライでいつもお世話になっている西陣織の織元さんと縫製工場さんが乗ってきてくれました。(この私の「お」を汲み取ってくれる2社最高じゃないですか?)
そこで、「一度やってみるか〜〜〜」ということで期間限定でマスクの商品化をすることになったのです。
ここから今日までは本当にマスクマスクマスクの日々で、次から次へと巻き起こる思わぬ展開や湧き出てくる課題にてんやわんやだったのですが、最近ようやく販売も落ち着いてきて、あれ?数ヶ月前よりだいぶ成長してない?と感じたのでこのマスクの日々を書き残しておこうと思います。
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やると決めたからにはスピード勝負!ということで早速西陣織の織元さんと打ち合わせと試し織りを繰り返し、柄と色を決定。それと平行して縫製工場さんにはすぐにサンプルを作ってもらいました。せっかく作るなら機能的にしたかったので、抗ウィルスのフィルターなどが入れられるポケット式を採用。2社がスピード感をもって対応してくださったおかげで、3週間で自分の中で理想的な布マスクができ、無事4/22にリリースすることができました。
今でこそ布マスクは普及していますが、この時はまだまだ布マスクに抵抗ある人が多く、私も使い捨てのマスクしかしていませんでした。(数ヶ月で本当に様々な価値観が変わったな〜〜〜)そんな布マスクに抵抗を持つ自分でもつけたくなるようなシンプルだけど上品なマスクを意識して作りました。
(どんな商品を出す時もそうですが、伝統的な生地やエシカルな素材を使うことに満足するのではなく、「そして自分が身に付けたいか」というのが1番大事なチェック項目だったりするんですよね。)
リリースのnoteとツイートがプチバズり、複数のメディアにも取り上げられ、最初用意していた200個弱の在庫は一瞬で完売しました。サイトもサーバーが落ちました。。。
最初の完売直後に受注生産に切り替えたのですがここからが嵐のような日々の始まりでした。これまでにないほどの注文のペース、そして永遠に止まらない…嬉しさよりも驚きが勝るほど。
これはさすがにやばいと思い、急遽、オーダーと在庫を管理をしてくれるスタッフを募集しました。そう、それまで一人でやっていたんです、、!今思えば私だけでどうやって運営できていたのか思い出せないほど、その時採用したスタッフちゃんに日々助けられています(涙)
最初300個ほどオーダーが入るかなと思っていたものが最終的には3000個のオーダーを受けることになりました。
この3000個のオーダーを受けた第一弾では「受注生産なので発送まで時間がかかる」旨をサイトやSNSでお知らせしていたつもりでしたが、私の管理下ではないところで知った人があまりにも多く、最初にその情報を得ず、サイトの説明も見ずにポチッと購入した方がちらほら出てきて、「注文したのに届かない!遅すぎる!キャンセルしてください!!」というクレームのようなメールが毎日数件くるようになりました。全体からすると1%ほどなのですが、今まで受けたことのない文面の圧に私もスタッフの子もかなりこたえました…メール通知の音が鳴ると「クレームかも」と体が勝手に反応してストレスを感じる日々を過ごしていました…笑
私よりもまだニュートラルに対応できるスタッフちゃんがいたおかげでなんとか乗り切ることができましたが。。。
そして以下のように誓いました。
これまで、レナクナッタでは2〜4万円の価格帯の商品がほとんどだったので概要欄を見ず、ブランドも深く知らずに買う人はほとんどいなかったと思います。しかし、今回は3520円とマスクの価格としては決して安くないのですが、世の中の需要に合いすぎてしまい、どんなブランドか、どんな生産背景かも知らないまま、受注生産なので「必ずマスクが手に入る」という部分だけを見て買う人が増えました。
このマスクの生産や発送に携わってくれた人全員が早く届けようと全力を尽くしてくれていたのですが、どうしても一般的な生地よりも生産に時間がかかるので、お届けまでかなりの時間を要しました。受注生産なのでキャンセル不可とも書いていましたがそれすら読まれずに届くキャンセル希望のメールたち。ブランドとして西陣織マスクをつくっている意味を理解してもらえずキャンセルを望んでいる人に無理やり届けても誰も喜ばないのでキャンセルはすべて受けました。
正直、届かなくてもいいところまで広まってしまったと思いました。
改めて私はレナクナッタは「届けたい人たち」だけに届けばいいからむやみに多くの人に知ってもらう必要はなく「届けたい人たちを丁寧に増やそう」と心に決めました。
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他の色も欲しいという要望も多くいただきそれに応えるべく第二弾では、新色2色を用意しました。
第一弾のようなキャンセルを防ぐため、受注生産でオーダーを締め切った後に生地を織るためお届けまでに1ヶ月以上かかるということをとにかく徹底的に伝わるようにし、メディアでも必ず生産背景を取り上げてもらうようにしました。そのおかげで、前回のようなクレームはほぼなくなり、精神も安定を取り戻していきました…
体も心もヘルシーに仕事をするのが1番…(涙)
ネガティブなことを書いてしまいましたがいいことの方がもちろんたくさんあります。まず、多くの人に買ってもらえたおかげで、職人さんや縫製工場さんなど作る側の人たちにも喜んでもらえたのが私の中で大きかったです。途中からは「文化を止めるもんか!」という思いでひたすらに走っていました。
そして西陣織マスクが話題になったことで、シンプルにレナクナッタをたくさんの人に知ってもらいました。あと、これまでレナクナッタのアイテムを買えなかったけど今回はじめて商品を手にできて嬉しい、というお声も。マスク販売はこれまで以上に多くの人と繋がれるきっかけとなりました。
受注生産で作ったマスクは4500個。さらに在庫販売用も用意して合計5000個ほど作りました。
オーダーした西陣織は100cm幅で280mにもなりました。
それでも西陣織業界全体でみるとコロナ禍でとても厳しい状況が続いています。行政からの支援はあるものの、コロナが収まったことには多くの業者がなくなっているでしょう…
着物というのは現代において贅沢品であり、経済の悪影響を最も受ける業界の一つです。私は色々な作り手さんと携わって、生産し、広める手伝いができたらと思いますが、なかなか産業の中の人に私やレナクナッタの存在を知ってもらうことって難しい。なのでこういうブランドがあると知ってもらえるよう、さらに私からも提案できるようブランド力をつけていこうと改めて思いました。
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そして、本日9/2から私が代表を務める株式会社Dodici(ドーディチ)は2期目に突入しました。経営面では前半に書いた通り思わぬ注文数を受け一人でまわすのが難しくなり人にお願いをせざるを得なくなったのですが、これをきっかけに人を頼ることができるようになりました。これまで臨時のときに誰かに頼むというスタイルで、常に手伝ってもらうスタッフさんを入れるタイミングがわからず自分の中の課題だったのですが、いざ身を任せてみたら少しずつですが体制ができてきました。今はスタッフさん二人、梱包スタッフさん五人に支えられています。これも怒涛の西陣織マスク販売があったからこそ。
ブランドが少し大きくなり、そして今後どう発展させていきたいかが明確に見えた数ヶ月だったので、2期目の初日に忘備録として書きました。
今後もrenacnattaを課題解決&価値創造型ブランドとして成長させていけるようがんばりますのでどうぞよろしくお願い致します。
p.s. マスクはまだ在庫販売しています!売り切れている色の予備の在庫やキャンセルからの在庫戻りの販売は10月3日(土)の販売を予定しています〜〜〜!!
https://renacnatta.theshop.jp/
読んでくださりありがとうございます。いただいたサポートは全てブランドで使用する生地の買い付け費用として使わせていただきます!