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#02 Olha Pro Céu / Trio Nordestino

サンパウロ、6月の最低気温は12℃!
びっくりするぐらい肌寒くなります。

「ブラジルは常夏の国だぜ~」と思い込み、短期留学時に夏服しか持っていかなかった私は大変後悔しました。
出発前に『地球の歩き方』を買ったのにちゃんと読んでいない証拠ですね。笑

私が住んでいるサンパウロの田舎町に建てられている家々は、寒さよりも暑さに耐えられるような構造になっています。
更には建付けの悪いドアや窓枠から冷たいすきま風が。泣
暖房器具はあまり一般的ではありませんので、家の中が常にひんやりしている感じです(夏は良いんですが)。
そのため、冬になると人も街も全体的に元気が足りないような気がします。

ですが、そんなブラジルの冬にも素敵な楽しみがあります!
そのひとつが、フェスタ・ジュニーナというお祭り。

フェスタ・ジュニーナは6月に行われるキリスト教の3人の聖人である
サント・アントニオ
サン・ジョアン
サン・ペドロ
にまつわるお祭りの総称です。
一大イベントはサン・ジョアンの誕生日6月24日を祝うもので、23日から2日間に渡って行われます。

「サン・ジョアンのお祭り」の起源は中世以前、夏至と冬至に、自然と豊穣の神々に感謝の意を込めてお祝いされていたものに、キリスト教が宗教的な意味合いを与えたものとされています。
ブラジルのポルトガル植民地時代にポルトガル人によって伝えられ、多数の人種による文化の影響で変化を伴い、今のスタイルとなりました。
先住民の収穫祭の影響もあるようです。

今ではブラジル各地で親しまれているお祭りですが、主に北東部で大々的に祝われていたもので、ブラジル最大のサン・ジョアンのお祭りが北東部パライバ州のカンピーナ・グランジで行われています。

内陸部のマトグロッソ州などでは別の方法でお祝いが行われるようですが、今日は北東部発祥のフェスタ・ジュニーナの特徴を紹介します。

フェスタ・ジュニーナの食べ物

老若男女問わず好まれるラインナップです!(imagem: canva)
  • ポップコーン

  • とうもろこしのケーキ

  • パモーニャ(潰したトウモロコシの粒を葉で包んで茹でたもの)

  • カンジッカ(専用のトウモロコシを練乳とココナツミルクで甘く味付けしたもの)

  • パソッカ、ぺー・ジ・モレッキ(ピーナッツのお菓子)

  • アホース・ドーシ(お米を牛乳や練乳で甘く煮たもの)

収穫時期であるとうもろこしを使った食べ物が多めです。
お祭りは教会や学校、街の広場(いずれも野外スペース)で行われ、“ザ・地元の祭り”という感じ。
食事というよりは、簡単につまんで食べられるものがメインです。

フェスタ・ジュニーナの飲み物

  • ケンタォン(サトウキビの蒸留酒カシャーサに果物やシナモン、生姜などを加えて煮たもの)

  • ホットワイン

どちらも寒い日にはピッタリ!
ただしケンタォンは甘くて飲みやすいので酔っぱらわないように注意です(←体験談)。
子供たちはブラジルの炭酸飲料ガラナやジュースを飲みます。

フェスタ・ジュニーナの楽しみ

  • 田舎風の仮装(チェックのシャツ、麦藁帽子、ボリュームのあるワンピース、繋げられた眉毛、ひげ、真っ赤なほっぺにそばかすメイク等)

  • カラフルな旗など、会場の飾り

  • 喜劇やゲーム

  • フォホーやクアドリーニャとよばれるダンス

  • 焚き火

クアドリーニャはフランス王宮を起源し、時を経て農民が楽しんだダンス。ブラジルのクアドリーニャはフォークダンスのようなシンプルで誰もが楽しめるものです。学校や教会で覚えます。
ブラジル人が踊れるのは、実はサンバではなくクアドリーニャなんだそう。
(確かに、サンバのステップは難しいけど、クアドリーニャは私でもすぐに踊れそう。。)

焚き火は23日の夜に点火されていましたが、現在はフェスタ・ジュニーナの象徴として日に関係なく点火される場合もあります。

余談ですが、宗教上の理由でカーニバルに参加しない人たちも、フェスタ・ジュニーナには参加します。
そのため、ブラジル全土で開催される祭りとしては、カーニバルよりも参加者が多いと言われています。

↑ こちらが学校で行われるフェスタ・ジュニーナのクアドリーニャ

↑ 高校生も踊ります!

↑ なんと!クアドリーニャのコンクールもあるんです!!

フェスタ・ジュニーナの音楽

南米のお祭りに踊りは付き物!
フェスタ・ジュニーナでは前述したクアドリーニャと、北東部発祥のフォホーとよばれる音楽に合わせて踊ります。

そこで忘れてはならないのがルイス・ゴンザーガ(1912-1989)の存在です。
彼はフォホーの名曲を沢山残し、ブラジル全土に北東部の音楽を広めた重要人物(詳しくは他の日に書きますね!)。

↑ ルイス・ゴンザーガ(左)、トレードマークはブラジル北東部の盗賊カンガセイロが使用していた皮の帽子

ちなみにフォホーはフェスタ・ジュニーナの時だけに聴かれるものではありません。
北東部では生活の一部のようなものであり、サンパウロでもカーザ・ド・フォホー(フォホーの家)と呼ばれるいつでもフォホーが聴ける(というよりも“踊れる”と書いたほうが正しいですね)場所が存在します。

フォホーのトラディショナルな編成といえば、前記したアコーディオンとトライアングル、ザブンバ*のトリオ。フォホー・ペー・ジ・セーハ(Forró pé de serra)と呼ばれます。
メンバーはヴォーカルとコーラスも担当することもあります。

*ザブンバ…両面に皮が張ってある太鼓、2本のバチで両面を叩きます

↑ いやぁ~素敵!ザブンバを叩く女性のステップに注目。これがフォホーのノリです!
あれ?よ~く見たら、ザブンバじゃない!笑
よくあることです。ブラジルでは何でも代用しちゃいます。

こちらがザブンバです。比較的軽くて、裏が叩きやすいように胴が短めです。(image: Zabumba Contemporanea 228C Madeira)

結成60年超! Trio Nordestino

今日ご紹介するトリオ・ノルデスチーノ*は、1958年にサルヴァドールにて誕生した伝統的なフォホーのグループです。
*ノルデスチーノとは、北東部出身の人の総称

リンドゥ (アコーディオンと歌)、コロネー (サブンバ) 、コブリーニャ (トライアングル)によって結成され、ルイス・ゴンザーガの御礼を受け、これまでに42枚のCDをリリースしています。

現在は結成者たちの息子や孫がグループを引き継いでいます。
ちなみに現メンバーのコロネーの孫コロネト。この“ネト”とはポルトガル語で孫のことです。
コロネーのネトだからコロネト。非常に面白い芸名を思いついたと感心してしまいました。笑

トリオ・ノルデスチーノは北東部を代表する有名アーティスト(アルセウ・ヴァレンサ、エルバ・ハマーリョ、ドミンギーニョス)の録音に参加していますが、演奏する音楽がフォホーに限定されている彼らはアルバムランキング上位になるような大ヒットグループではありません。

それでも60年以上も活動を続けていけるのにはブラジルらしい訳があります。

彼らの主な活動とは、いわゆる地方巡業です。
ブラジル田舎町の週末、何もないまっさらな土地に、ド派手な舞台照明と爆音スピーカーがいきなり現れ、彼らのような踊れるバンドが演奏します。
来場者は音楽と共に踊りまくり、演奏を聴きに行くというよりは、ひとつの地域交流のような意味合いもあります。
彼らのような“踊れる音楽”は都会に比べて夜の娯楽が少ない地方では大人気。

彼らのウェブサイトをみると、グループのバイオグラフィ、ディスコグラフィだけでなく、舞台の配置や必要機材、控え室に用意される軽食の指定事項まで、彼らを呼ぶために必要な事項が掲載されています。

このように活動するグループはブラジルでは珍しくありません。
セルタネージョ・ウニヴェルシターリオの歌手たちも、主な仕事はレコーディングではなく地方巡業です。

最近の流行りも考慮し、近年のトリオ・ノルデスチーノはベースやドラム、コーラスが加わったアレンジが主流となっています。
ちなみに彼らのアルバムはウェブサイトで全曲ストリーミング再生可能。

今回選んだ「Olha Pro Céu」が収録されるアルバムは、上質なブラジル音楽を届けるレーベルBiscoito Finoによるプロジェクトで、北東部を代表する作曲家に対するオマージュです。
「Olha Pro Céu」はルイス・ゴンザーガの数ある有名曲のひとつで、Arrasta-péという非常に軽快なスタイルの曲。

これまでフェスタ・ジュニーナに何度も参加しましたが、この曲がかかるとケンタォンで良い感じに酔っぱらっているのもあり、みんなで輪になって踊り、祭りは最高潮に達するのでした。

あ~!無条件で体が揺れてしまいます!!ブラジル音楽最高!!

アルバム:Canta o nordeste (2017)
作詞作曲:Luiz Gonzaga / José Fernandes
録音:Trio Nordestino 他不明
【参考】https://www.todamateria.com.br/festas-juninas/  https://www.todamateria.com.br/festas-juninas/
https://cartacampinas.com.br/2018/01/trio-nordestino-canta-o-nordeste-e-homenageia-joao-do-vale-e-luiz-gonzaga/

https://nipo-brasil.org/archives/11899/

※ この記事はサイト『南米音楽365日』の2020年6月23日投稿分を一部修正して掲載しました


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