ブラジル留学日記07「いきなり夢が叶うなんて」
昨日は語学学校でガックリしたが、良いこともあった。
今西さんが、
「大阪の音楽仲間が明日サンパウロに到着します。夜にホーザ・パッソスのショーがあるので行こうと思っていますが、出演者を確認したらプロヴェッタの名前がありました。一緒にいきませんか?」
え?
もう夢が叶う!!!!
というのも、私がブラジルに短期留学を決めた理由は、このプロヴェッタという人に会うのが目的だったからだ。
ナイロール・プロヴェッタを知ったきっかけは、日本人フルート奏者熊本尚美さんが日本の音楽雑誌に投稿していた連載がきっかけだった。
尚美さんはブラジル初の国産ポピュラー音楽であるショーロに魅了され、今ではこちらの有名ショーロ学校の先生になられた方だ。
プロヴェッタはブラジルのサックス/クラリネット奏者、作曲家で、彼がショーロのアルバムを制作した際、尚美さんはレコーディングに参加。その様子を連載に書かれていた。
レコーディングには尚美さんを始めショーロの発祥地リオデジャネイロでバリバリ活躍するメンバーが参加していたが、主役のプロヴェッタはサンパウロ出身、今もサンパウロ在住だった。
▼そのアルバムはこちら
ショーのチケットをフナッキ(fnac、現在閉店)というパウリスタ大通りにあるレコードショップまで買いに行った。
会場はトン・ジャズという(当時の)サンパウロでブルーノート東京のような場所。渡されたチケットがいかにも高級感を醸し出すように、ラミネートでキラキラしていた。
当日、今西さんは音楽仲間を迎えに行ったので、私は一人でトン・ジャズに向かった。
夢にまで見たプロヴェッタの演奏を生で聴けるとは。
私はかなり緊張していたのか、心配で開演時間の随分前に到着してしまった。店内は私を含めてまだ3人程度しかいなかった。
何か食べ物を頼むことにした。
店内は冷房が必要以上に効いている。
決して安くないホットサンドを頼んだが、すぐに冷めてしまった。
友人が「ブラジルは高級感を出すためにエアコンをガンガンかける店がある」と言っていたのを思い出した。
21時前、開演ギリギリで今西さんとホーザの大ファンだという女性Mさんがやってきた。
ブラジルに着いたばかりのMさんは、(当時)音楽活動を控えめだったホーザが出演するならブラジル国内どこでも行くと言っていたら、到着日にいきなりホーザに会えることになった。
ブラジルと縁がある人は、こういう偶然がよく起こる(たぶん私もそうなのだろうと密かに喜んだ)。
開演時間を少し過ぎ、満席となったところで、ついにプロヴェッタたちトリオが先に登場した。
私のアイドルが目の前にいる。キャーキャー叫ぶ声は聞こえない。
プロヴェッタも、ベースのパウロ(トリオ・コヘンチのメンバー)もピアノのエリオもニコニコしながら登場し、お客さんも随分リラックスしているように感じた。
CDで聴いたとおりの、プロヴェッタの温かい音。
「サックスは木管楽器だ!」と大声を出して言いたくなるような柔らかさと軽やかさ。もう感無量だった。
そのあとホーザが呼ばれ、ボサノヴァの名曲を歌い会場は一層盛り上がった。
ドラムやパーカッション奏者はいないが、パウロがベースを弾きながら得意のビートボックスで曲調に合う軽やかなビートを表現。バンドの演奏は完璧だった。
意外だったのは、ささやくような声かと思っていたホーザの声量だった。
かなりデカい!!
吐息も響いているようなポテンシャルある声だった。
生声がしっかり聞こえるぐらい近い席だったのもあるが、びっくりした。
ブラジルのコンサートは終演後、出演者が客席やエントランスに現われることが多い。
終わって間もなくホーザは客席にやってきた。
Mさんは何の迷いもなくホーザに日本のお土産を渡しに行き、事前に用意していたポルトガル語のフレーズで何か伝えていた。ホーザは真剣に話を聞いて、Mさんを強く抱きしめた。
私も一緒について行って写真を撮ってもらった。
これで満足。帰る気だったが、今西さんが「プロヴェッタと話せましたか?」と言うので、待ってみることにした。
しばらくしてプロヴェッタがやってきた。
既に多くの人に囲まれていたので、その様子を見ていたが、どんどん人がやってきて一向に話せる気配がしない。
しかし、見慣れない私の姿に気づいたプロヴェッタが先に話しかけてくれた。
私は「ムイト・プラゼー」と教科書どおりの挨拶をして、その後は何を話したか覚えていない。
でも何か質問しなきゃ…と思って、使っているマウスピースは何ですか?と質問し、緊張しすぎたのか今ではその答えすら覚えていない。
しかし私が日本から勉強しに来たことは伝わったようで、「ヴォセケー?」と何か質問されている。
全くわからず、今西さんを呼んで通訳してもらった。
なんと、プロヴェッタは来週ここであるバンダ・マンチケイラ(プロヴェッタがリーダー)のコンサートに私を招待してくれるというのだ。
「ムイトオブリガーダ」(どうもありがとう)を連呼して、私の名前を書いて渡した。
もう私の夢は叶い、一番の目的も達成してしまった。
実はこの先にもう一つの夢があった。
この時は緊張しすぎてプロヴェッタに伝えられなかった。
写真も撮り忘れた。
でもまた来週プロヴェッタに会える!!
こんなに順調で良いのだろうか!
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