【ライブレポ】2024/04/09 小曽根真&アンドレ・メマーリ@サンパウロ
4月9日、小曽根真&アンドレ・メマーリのデュオ・コンサートに行ってきました!お二人とも世界で活躍するピアニストです。
実は小曽根さん、2022年にも来伯されています。
その際はサンパウロ市で開催された国際ピアノフェスティバル(FIP Jazz)に出演後、特別公演として同市の東洋人街リベルダージにあるブラジル日本文化福祉協会ホールで演奏を行いました。
アンドレ・メマーリはブラジル人のピアニストで、昨年日本公演を行っています(何度か来日しているはず)。
今回は「TUCCA」という小児がんの子どもたちを援助する団体が、サンパウロで複数のコンサートを開催。
小曽根&メマーリデュオ以外にも、デューク・エリントンオーケストラやアントニオ・サンチェス、ブラジルを代表するヴァイオリン奏者ヒカルド・ヘルツがイスラエルの木管楽器奏者アナット・コーエンと共演など興味深いプログラム。
一応、ジャズが4公演、クラシック音楽が6公演と分けられています。
チケットは90~400レアルと、サンパウロ市内コンサートの価格では比較的高額ですが、売上は全て同団体を通して子どもたちの治療のために寄付されるそうです。
平日なので20時30分開演。
指定席でしたが、20時前に会場に到着!
サーラ・サンパウロは間違いなくブラジルで最も美しい劇場の1つ!
普段はサンパウロ交響楽団のコンサートがありますが、クラシックに限らず、ビッグバンドやマーチングバンドのコンサートあります(無料コンサートや公開リハーサルも)!
ただし、市内で最も危険と言われるエリアに位置しており、会場へは直行直帰がおすすめ。
移動は自家用車か配車アプリのタクシーがおすすめですが、地下鉄ルース駅から直通出口も利用できます(まだ使ったことがないので治安は不明)。
この日はサンパウロ在住の日本人や日系人の業界人を沢山みかけました。
あ、パウロ・ブラーガ(ピアニスト)もいましたよ!
コンサートはほぼ時間通りに開演。
私達は1階席、ステージ真正面、列は真ん中より少々後ろに座りました。
サーラ・サンパウロの1階席は段差が少ないので、後ろに近くてもステージを見下ろすというより、見上げる感覚です。
まずはステージ上のスクリーンにTuccaのプロモーションとして、この日の午前中に小児がん患者病棟に訪問した小曽根さんとアンドレの様子が映し出されました。
小曽根さんはカシオの61鍵盤のキーボードをにこにこしながら弾き、アンドレは鍵盤ハーモニカを吹いていました。
更に小曽根さんはカシオのお馴染みリズムプリセットで8ビートを呼び出し、子どもたちに自由に鍵盤に触らせて一緒にセッションを楽しんでいるではないですか!!
子どもたち、本当に良い顔していました。
映像が終わり、スクリーンが自動運転で上に収納されると、本日の主役の登場です。
白いサテンシャツを着た小曽根さんと、全身黒の衣装に野球帽(おそらくTuccaのグッズ?)のアンドレが舞台下手から入ってきました。
以下、演奏曲目を書きますが、マイクのリバーブが深くて、曲名を一発で聞き取れませんでした。ごめんなさい!
1.曲名不明:バロック調の楽曲(アンドレ・メマーリ)
コンサートはアンドレの作品からスタート。アンドレが長いメロディを一人で一度弾ききったあとに小曽根さんが入ります。この曲は殆ど楽譜を読んでいる感じ。
終わって、小曽根さんは「ボア・ノイチ」とポルトガル語でご挨拶したあと、英語でトークを続けます。2年前にサンパウロに来たこともあり「戻ってこれて嬉しいです」と話していました。
2.曲名不明:ブルース(小曽根真)
1曲目とは異なり、活き活きと。アドリブもあり、お互い顔を見合わせることもありました。小曽根さんの音、明るいな~!!音の粒がはっきり。
3.ことボッサ(アンドレ・メマーリ)
来日経験もあるメマーリが「日本人はボサノヴァが好きだから」と話すように、それを意識し、真+ボサノヴァで「ことボッサ」と名付けたようですが、私的には「ことショーロ」かな。
ショーロはボサノヴァよりも、そしてサンバよりも前に誕生日したブラジル初の国産ポピュラー音楽です。アンドレが弾く左手のパターンと、16分音符が多いメロディがショーロの典型的なパターンでした。
4.Pandora(小曽根真)
小曽根さんがあのチック・コリアと録音したデュオ。アドリブが終盤にさしかかった時に、音がひとつ消え、またひとつ消え…とんでもない緊張感がサーラ・サンパウロを包み込む!!
唾も飲み込めないほど張り詰めた空気。
そこから主題に戻る時の美しさと言ったら…鳥肌ものでした。
そんな時に誰かのスマホが鳴る事件。
ブラジル…泣
5.曲名不明:ワルツ(おそらくアンドレ)
「パンドラ」が良すぎて、放心状態だったのであまり覚えていません。。
曲の紹介ありませんでしたが、曲調からするとアンドレの曲かな。
ヨーロッパ風なワルツです。
6.小曽根ソロ:Luiza(アントニオ・カルロス・ジョビン)
私はまだ4曲目を引きずっていたけど、ここで動きが。
アンドレが退場し、小曽根さんのソロステージです。
ステージ下手側のピアノに座り、一息ついてから弾き始めると、それはまるで自由に羽ばたく蝶のようでした。
私はコード進行的にジョビンの「Luiza」か?と途中で気づいたのですが、2コーラス目で小曽根さんがオリジナルのメロディを弾いた時に会場がザワザワっとなりました。おそらく殆どの人がここで「Luizaだ!」と気づいたのです。
私の後ろに座っていた人は「シコ・ブアルキね」と言ったので、「ジョビンだよw」と突っ込み入れたくなりましたが、その後は小曽根さんのピアノに集中。アドリブはなく、メロディを弾ききって終わり。
これは会場を沸かせました。
↑ なんと、小曽根さんが「Luiza」を演奏する動画が(ソロではなく歌手とだけど)。いつだろう?ちなみにこの動画と同じキーで演奏されていました。
7.Chega de saudade(ヴィニシウス・ジ・モライス、アントニオ・カルロス・ジョビン)
やっぱりブラジルを代表する曲を弾いてもらえるほどブラジル人が嬉しいことはないんですよね。
小曽根さんは大きな拍手を受け続け、そこにアンドレが入場。
その勢いでボサノヴァ第一号とも呼ばれる「Chega de Saudade」(邦題は「想いあふれて」)。
かなり自由な演奏で素晴らしかったのですが、ブラジル人はいつでも知っている曲は歌いたくなってしまうのです。。
小曽根さんとアンドレはワンフレーズごとにメロディを交換しながら弾いていたので、崩し気味だったメロディが少しでも安定すると会場はここぞとばかりに歌おうとする。笑
でも2人は完全に「2人の世界」!!
結局、お客さん一度も歌えず終了。
もちろん、2人のコンサートなので全く問題ありませんが、ブラジル人はあのジョアン・ジルベルトのショーですら一緒に歌ってしまう人たちなので…笑(晩年は神経質なジョアンのコンサートでは一緒に歌うことはタブーとされており、ジョアンが歌って!と会場に言った時だけ歌うような暗黙の了解があったけど)。
8.アンドレソロ:即興メドレー
お次はアンドレのソロステージ。
メモ帳とペンを持ってきて、「みなさん!どんなブラジル音楽が聴きたいですか~?」とリクエストをとりはじめました。
「エドゥ・ローボ!!」「シーコ!(シコ・ブアルキ)」「ミルトーン」と、叫ぶお客さんたち。なんとなく客層がわかります(60代以上かな)。
アンドレはメモを取り、それをメドレーで演奏するというのです。
「ピアソラ(お隣アルゼンチンの音楽家)?彼のは著作権を高くとられるから弾けないよ笑」なんて冗談も。
メモ帳をピアノの蓋に置くと、アンドレはあの超有名なイントロをひき始めました。エドゥ・ロボの「Ponteio」です。
この動画とほぼ同じアレンジでした。この後はこんな感じ…
Ponteio (エドゥ・ロボ)
Valsa Brasileora (エドゥ・ロボ、シコ・ブアルキ)
Carinhoso(ピシンギーニャ、ジョアン・ジ・バーホ)
オブリビオン(アストル・ピアソラ)
曲名をド忘れしましたが、おそらくジスモンチの曲
Um a zero(ピシンギーニャ)
A列車で行こう(デューク・エリントン)
もしかしたら、もっとあったかもしれません。ピアソラ弾きましたね。笑
最後はこれらを組み合わせて圧巻のフィナーレ!
いやぁ…また観たいです。
9 O’berek(小曽根真)
小曽根さんがステージに戻り、最後はこの曲!
アンドレのリクエストだったそうです。
この曲はポーランドのダンス音楽だと小曽根さんがトークで説明。
実はブラジルはポルトガルの植民地だった背景もあり、ヨーロッパの音楽、その中でも娯楽であったダンス(ポルカ、ワルツ、スコティッシュ、ハバネラ、マズルカなど)はブラジルでも親しまれていたのです(それがブラジル風になったのが先程書いたショーロ)。
そんな縁もあり、フィナーレに相応しい曲だったと思います。
更にはアンドレはアドリブの部分でエイトル・ヴィラ=ロボスの代表作「Bachianas Brasileiras Nº 2」(別名「O Trenzinho Do Caipira」で親しまれる)のメロディをそのままそっくり引用。
この曲はエドゥ・ロボが歌っているのもありブラジルでは有名曲。アンドレ、最初から弾くこと仕込んでいたのでしょう。
と、いう感じで約1時間半のコンサートでした。
アンコールは…デュエットと言えばこれ!!
アントニオ・カルロス・ジョビンの「Águas de março」でした。
今年の3月の雨(夏の終わりを告げる雨)はドバっと降って、4月になるとぱったり止んだので、タイミング的にはバッチリではなかったのですが、2人が楽しそうに演奏していたのは見ている方も幸せになりました。
実は私、17年前に東京ジャズで小曽根さんの生演奏を聴いているのです。
今回も、その時の同じワクワク感をいただきました。
小曽根さんの音は粒がそろって、一音一音に行き先がある強いエネルギーを感じます。弦の最も良いところを叩かれた時に鳴るような、クリアで抜ける音なのです。
対するアンドレは由緒あるオーケストラ(しかもリマスタリングされた)のような厚みがある。音は指揮者であるアンドレの中に包み込まれている感じ。
コントラストの強い小曽根さんに対してアンドレの音はオールド感のあるセピア調。
こんなにも2人の音が違うので、どんなピアノを使っているのかと終演後ピアノを観に行きました。
デュオの時、アンドレのピアノは蓋あり、小曽根さんのピアノは蓋なしだったので、音色の違いはその影響かな?とも思いましたが、小曽根さんはソロで蓋ありのピアノを弾いた時も「小曽根真の音」と感じました。
ただ、他の席で聴いていた友人は「そんなに違いを感じなかった」と言っていたので私の思い込みなのかもしれません。
終演後、小曽根さんはCDサイン&写真撮影に応じていました。
今回のコンサート、聴いたところによるとアンドレからのラブコールだったそうです。遠いサンパウロまで来てくれて嬉しい限り。
また次回もお待ちしています!!
【余談】
なんだか小曽根さん、17年前より若くなっているような気がしました😲
最近、デビュー40周年で新しいトリオ(ベース/小川晋平、ドラム/きたいくにと)を組んだそうです!全曲聴きましたが素晴らしい。。
ゲスト、パキートも良いけどアルトサックスの佐々木梨子さんがめちゃくちゃ良いです!
いつかサンパウロに来てくれることを祈っています😊
私が一番気にった曲はこちら!
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