感想、そして交錯する幾層もの感情――福海陸「日曜日(付随する19枚のパルプ)」(文學界2024.5)
「ゲイ小説」「LGBT小説」「当事者小説」……。
そのような表現の宣伝や批評を見るたびに、言いようのないもやもやが湧く。異性愛を扱っているだけで「ストレート小説」とは言わないし、シスヘテロの人物が主人公なだけで「シスヘテロ小説」とは評されない。もっと言うとシスヘテロ男性健常者純日本人当事者がシスヘテロ男性健常者純日本人主人公の小説を書いても決して「当事者小説」とは扱われないからだ。伝統的な文学のジャンルとして「私小説」と呼ばれるそれを、何らかの少数性を属性として持った者が書