見出し画像

こんにちは、エバンス愛です。アメリカ人の夫と国際結婚し、夫婦で英語を教えています。

突然ですが、今すごく話題になっている「弥助(やすけ)」って知ってますか?

弥助(やすけ)というのは、織田信長に仕えていた黒人奴隷のことです。現在のモザンビークあたりの出身で、ポルトガル宣教師の奴隷として日本に連れて来られ、それを信長が珍しがり気に入って家来にしたようです。

信長は弥助の肌が黒いことに驚き、黒く塗っているのだろうと思って体を洗わせたけど、黒い色は落ちないどころかいっそう黒光りした・・・みたいなエピソードが記録として残っているそうで、私もドラマでも見たことあります。

多分、この『MAGI-天正遣欧少年使節-』というドラマだったと思う。織田信長役は吉川晃司さんでした。

ただ、弥助って、日本史の授業では習わないですよね。もともとは、歴史に詳しい人しか知らないような存在でした。そんな弥助が、「英雄的な活躍をした黒人侍」として、世界で大注目されているんです。


たとえば、海外ではここ最近だけでも・・・

1.弥助の物語の映画化が決まりました。

2.ブロードウェイミュージカル化も決まりました。(えぇ・・・汗)

3.「アサシンクリードシャドウズ」という、 弥助が主人公のゲームが発表されました。

が、これが、いろいろ問題になっているんです。

弥助は英雄?侍?

まず、「弥助は侍なのか」という議論があります。侍のはっきりした定義があるわけではないそうですが、基本的には身分制度で決まっていますよね。自分でなりたいと言って侍になれるものではなく、また、鎧を着て刀を持って戦ったからと言って、それで侍と言えるわけでもないようです。

弥助は名字ももらっていないし、侍と呼ぶのは無理がある・・・というのが、多くの日本人の見解のようです。

しかも、日本では弥助が英雄と崇められているという、聞いたことない話が出てきているのです。「英雄」と呼べるかも「侍」と呼べるかもわからない弥助が、海外でそのように考えられ、情報が拡散しています。

アサシンクリード

アサシンクリードというゲーム、ご存知ですか?フランスの会社のゲームで、これまでいろんな国を舞台にしたシリーズが出ています。

このゲームを持ってる夫のマイクによると、アサシンクリードシリーズは厳密な歴史考証に基づいて、当時の建物や服装などができる限り忠実に再現されていることで有名らしいです。だから、このゲームは、歴史好きな人に特に人気なんだそう。

たとえば、古代ギリシャが舞台のゲーム。↓

パルテノン神殿が実はカラフルな建物だったとか、そういった研究に基づく事実がゲームの世界に反映されてるらしいです。

そして、これまでの「アサシンクリード」シリーズのゲームでは、主人公は必ずそのゲームの舞台になった土地の人たちでした。たとえば、古代ギリシャが舞台なら、当然ギリシャ人が主人公です。

なのに。

今回新しく発表された、日本の戦国時代が舞台の「アサシンクリードシャドウズ」は、なぜか主人公は黒人の弥助。(と、日本人の忍者の女性)

そして、歴史に忠実なことで定評のあるゲームだったはずなのに、正確さの検証もガバガバで、畳が正方形だったり、ススキが生えてる季節に満開の桜が咲いてたり。(苦笑)

↓ツッコミどころ満載のゲーム予告動画

DEI

今、「DEI」という概念が欧米を中心に広まっていて、その波は日本にも来ています。

DEIというのは

・Diversity(多様性)
・Equity(公平性)
・Inclusion(包括性)

の頭文字で、要するに、「人種、性別、年齢、宗教、性的指向、 障がいの有無、外見の美醜などのあらゆる差をなくして、みんなに平等な活躍の場を与えよう」という考え方です。

もちろん、平等な「チャンス」は、すべての人に与えられるべきだと思います。でも、このDEIのやっかいなところは、平等な「結果」を求めていること。

具体的には、たとえばアメリカの大学入試で、黒人やヒスパニックの学生を優遇し、彼らより成績の良かった白人の学生が不合格にされたり(つまり合格者数という「結果」を平等にする)、映画で有色人種やLGBTQの俳優や制作スタッフなどが、その実力や才能のためではなく、多様性のある人材活用の結果として起用されたりしています。

その結果、映画やドラマで不自然なまでの黒人俳優の起用や同性愛描写が増えたりと、欧米の作品の質の低下にうんざりする人が増えています。そして、今回の弥助ブームも、このDEIムーブメントに乗じたものではと言われています。

でも、日本人の立場からすると、

人種差別が問題なんだったら、有色人種の日本人男性をちゃんと主人公として採用してよ!これこそ、日本人に対する差別やないかい!

って話ですよね。なので、日本人はもちろん海外の日本好きの人たちも、このゲームを批判していて、発売禁止の署名活動などが行われています。

ファンタジーがいつしか史実に?

そもそも、弥助については、実在したことは確実ですが、ほとんど記録が残っていません。記録がないということは、はっきり言ってそれほど重要な人物ではなかったというのが、実際のところだろうと思うわけです。

それなのに、これだけ世界的に弥助が有名になったのは、なぜなんでしょうか?その裏には、イギリス人のトーマス・ロックリーという人物がいます。日本大学准教授であるロックリー氏は、すごくかいつまんで言うと

・九州では黒人奴隷を使うことが流行していた
・弥助は本能寺の変で活躍し、日本で英雄視されている

といった自身の想像を「ノンフィクション」として著作に書き、自身の説をもとにwikipediaの弥助に関する項目を自ら執筆しています。まあ、wikipediaはだれでも書けるのは周知の事実ですし、間違った情報が掲載されているのはよくある話ですが、信頼している人もたくさんいますよね。

この左側の男性がロックリー氏↓

ロックリー氏の説をもとに、弥助に関するNHKの「Black Samurai 信長に仕えたアフリカン侍・弥助」という歴史教育番組も作られてて、数年前私も見ました。本能寺の変で信長が切腹後、介錯されたその首を持って逃げ、敵側に渡るのを防いだという内容でした。

私は専門家ではないのでわかりませんが、この説を裏付ける文献などの証拠はなく、ロックリー氏の妄想というのが大方の意見ようです。でも、「NHKがそう言うのなら、そうなのだろう」と思う人は多いでしょう。

さっき上で述べた、弥助が関わっている映画、ミュージカル、ゲームは海外の作品なので、日本人以外が製作の指揮をとっています。

ということは?

その製作において参考にするのは、「大学准教授」であるロックリー氏の英語の著作、そして英語のwikipediaなわけです。まあ、英語で他に弥助に関する資料はほぼないだろうから、仕方ないですよね。なので、ロックリー氏の頭の中のファンタジーが、海外で「史実」と捉えられているんです。

ていうか、妄想を多分に含む著作なのに、英語のタイトルは、Yasuke: The true story of the legendary African Samurai(弥助:伝説的アフリカ人侍の真実の物語)ですからね(苦笑)。「真実の」って書いちゃってる。

ちなみに、ロックリー准教授はもともと歴史の専門家ではなく、英語講師だったみたいです。だからなのか、歴史資料の扱い方とか史実と想像の区別とかで、かなり甘い部分がある様子。

ロックリー氏はこんなにおおごとになると予想してなかったのかもしれませんが、「こういう可能性もある」というつもりで書いた妄想に、だんだんと尾びれ背びれが付け足されていき、「日本では、黒人奴隷が酷使されていた!」「日本は、人種差別的なひどい国だ!」みたいな言説が、「真実」になってしまうかもしれません。吉田清治の件のように。(知らない方は、調べてみてください)

なので、この件については、大きな問題に発展していて、国会議員も調査しているようです。

日本は黒人が作った国?

で、これはかなりトンデモな話なので、半分ネタとして聞いていただきたいのですが、「坂上田村麻呂黒人説」というのも騒がれています。

坂上田村麻呂とは、平安時代に征夷大将軍として、蝦夷討伐で功績を残した人物です。その坂上田村麻呂が黒人だったという説を唱える人がいて、しかも、征夷大「将軍」なので、「日本には黒人のSHOGUNがいた!日本は、黒人が作った国だ!」という話があったりするのです。(;・∀・)

私は、マイクからこの話を聞いて、椅子から転げ落ちそうになりました。

1619プロジェクト

はいはい、そういう変なこと言う人いるよね・・・で終わらせては、危険かもしれません。たとえば、アメリカでは、「1619プロジェクト」という運動が盛んになっています。アメリカの建国は1776年だと学校で習いましたよね。でも、実は1776年じゃなく1619年だという説が、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。

1619年というのは、アメリカにはじめて黒人奴隷が連れてこられた年だそうです。つまり、アメリカは黒人によって建国された国であり、建国の経緯からして、白人による人種差別的な国だったという歴史の再認識(書き換え)であり、これは、アメリカを根幹からゆるがす問題です。

こういうのって、「一部の黒人たちが勝手に騒いでるだけでしょ」と思うかもしれませんが、そうじゃないです。白人を含め、いろんな思惑のもと、歴史を修正しようとする人たちがいます。

私たち日本人が声を上げなければ

日本人ってこういう場合、「ああ、変な人がデマを流してる」「そのうち、騒ぎも収まるだろう」って放置しがちなところがあると思うんです。「いずれ、わかってくれるだろう」って。

でも、ちゃんと違うことは違うと言わないと、国際問題になってしまう可能性があります。だから、私たち日本人がちゃんと歴史を学んで、英語で発信できないといけないな、と本当に思いました。

歴史の知識と英語力がなければ、必要な時に戦えない。

私は、最近ますます、

「ここは、奥ゆかしい日本人も、ちゃんと主張すべきことは主張しないと。そして、日本語で主張しても世界には届かないから、英語でそれが言えるようにならないと。それができる日本人を、増やさないと…!!」

と思うようになりました。

これをお読みのあなたは、どう思いますか?

日本史を勉強し直します

だから私も、中学生レベルの日本史の知識しかないので、勉強し直そうと思っています!世界史の基礎はやり直したんですけどね、日本史はまだだったんです。

世界史をやり直した話↓

私は、「スタディサプリ」という学生向け(大人も受講できる)の通信講座を活用して、ずっと挫折続きだった世界史の勉強をやっとやり直すことができました。そして旅行をより楽しめましたし、トルコ人女性に熱烈にアイラブユーと言われ、生涯トルコ旅行が無料になりました(笑)。詳しくは上記の記事で。

私がスタディサプリを使ってどう勉強したかは、以下の記事にも書いてますので、ご興味があれば、あわせてどうぞ!

●【大人の学び直しにおすすめ】40代で学生向けスタディサプリで勉強してみた結果

●国際結婚した歴史オンチが世界史を学び直した勉強法5つと教材10選

では、今日はこれで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?