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ツンデレ童話集

あらすじ

 ツンデレ童話集は、ファンタジーとリアリズム、シュールなユーモアが融合した独自の世界を展開しています。現代の童話が描く美しく完璧なハッピーエンドとは異なり、童話の本質に焦点を当てています。

 原作の童話には、忘れ去られがちな深い教訓を伴う残酷で衝撃的なエピソードが多く含まれています。魔女、悪魔、盗賊、毒物による幻覚、殺人、凍死、拷問、処刑など、これらは童話が本来持つ生々しさと過酷な現実を映し出しています。

 ツンデレ童話集では、童話の残酷性や暗い面を削除せず、ユーモラスに描くことで、童話の普遍的な教訓と結びつけ、読者に深い印象を残す唯一無二の体験を提供します。

ツンデレ童話 (1) 甘い葡萄

ツンデレ童話 (1) 甘い葡萄@ラブコメ風


 古代ローマ時代のエトルリア(トスカーナ)に、ジュリアという可憐なツンデレ美少女が住んでいました。エトルリアは、キャンティや、サンジョヴェーゼ・グロッソ、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノといった有名なワイン用葡萄品種の産地で、葡萄が沢山ありました。ブローノ・ブチャラティ もワインの名前のようですが、ブチャラティ は、ジョジョの奇妙な冒険に登場するスタンド使いの名前です。

 ある日、ジュリアはキャンティ畑で美味しそうな葡萄を見つけて、それを食べようと思いました。その葡萄の房は低いところにあったので簡単に採ることができました。ところが、誰も見ていないところで、手が届かないふりをする『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』のアーニャ風チビッ娘萌えの練習をしてから『ふん、見るからに酸っぱそうな葡萄ね。でも、私が試しに一つだけ食べてあげてもいいけど…!』と、一人ツンデレしているところに、白衣を着たダンデレ博士が通り掛りました。

『ボクはキミのためにその葡萄を採ってあげたいんだけど、ボクじゃだめかな? いや、ナンパとかそういうんじゃないから。ただ、キミの喜ぶ顔が見たくて…』とダンデレ博士は、勇気を出してジュリアに声を掛けました。

 ダンデレ博士に一人ツンデレしているところを見られてしまったジュリアは、『なによ、あんた! ここは白衣を着た博士じゃなくって、白馬に乗った王子様じゃないと、お話にならないわ。で、でも、シュタインズ・ゲートの岡部倫太郎 みたいな白衣萌え もありかも♡』と一瞬思いましたが、白馬に乗った王子様じゃなかったので、少し萎えてサドデレ モードが入ってしまいました。

『この葡萄、一つ食べてみる? あなたの反応が楽しみね。私の酸っぱい顔を見たいの? それとも、私が美味しいと言うのを期待しているのかしら?』と、ダンデレ博士のマゾデレ心を焚きつけました。

 元々マゾデレ気質のあったダンドレ博士は、ジュリアのサドデレに一瞬で萌えてしまい『ボ、ボクはキミの酸っぱそうな顔も、美味しそうな顔も素敵だと思うよ…』と、ジュリアのサドデレ心に油を注いでしまいました。

『ふふ、それなら見せてあげるわ。酸っぱくても美味しくても、私の顔は…特別公開よ!』と、ジュリアは葡萄を一粒食べると、思いがけず甘くて美味しい表情を見せて、『あら、意外と甘いわね。まあ、私が食べたから美味しく感じるのかもしれないけど…』とツンっぽい表情でとダンデレ博士を見ましたが、その表情は少しだけデレていました。

葡萄のあまりの甘さに癒し系ツンデレになってしまったジュリア

 ダンデレ博士は、ジュリアのチョイデレに心を躍らせて、内心でガッツポーズをしながら『キミのおかげで、僕も甘い気分になれたよ。これからも、キミのために何かできることがあったら…』とデレながら答えました。

 ジュリアはそれを聞いて、少しデレながら『まあ、たまにはあなたの役に立ってあげてもいいかもしれないわね』と、いつものツンデレ振りを見せつつも、心の中では『癒し系ツンデレしか勝ったん!』と勝利を確信していました。

 二人はその後、葡萄畑でしばらく話をして、少しずつお互いの萌えと萎えのツボを知り合っていきました。

 ダンデレ博士が実験室に帰った後も、ジュリアは時々、葡萄畑でダンデレ博士を探している自分に気づくようになりました。彼女の心の中に、ほんの小さな甘い思いが芽生え始めていたのです。

 ジュリアの心に芽生えた小さな甘い思いは、日を追うごとに大きくなっていきました。彼女は、ダンデレ博士との会話を思い出しては微笑み、次に会う日を心待ちにするようになりました。

 ある日、ジュリアは再び葡萄畑を訪れました。すると、そこにはダンデレ博士が、珍しい葡萄の苗を植えている姿がありました。彼はジュリアの存在に気づくと、照れくさそうに笑って言いました。

『ジュリア、ボクはキミのために、この特別な甘い葡萄を育ててみようと思ってね。キミがもっと幸せな顔を見せてくれるといいなって…』

 ジュリアは一瞬、驚いた顔をしましたが、すぐにいつものツンデレな態度に戻り、『あ、あんたがそこまで言うなら、私も少しだけ期待してあげるわ。でも、勘違いしないでよね! これはただの…なんていうか…その…』と、言葉を濁しながらも、その瞳は嬉しそうに輝いていました。

 日が経つにつれて、ジュリアとダンデレ博士は頻繁に会うようになり、お互いの存在がますます大切なものになっていきました。ジュリアは、自分が本当に大切に思う人がいることを初めて実感し、ダンデレ博士もまた、ジュリアのツンデレな魅力に完全に虜になっていました。

 ある満月の夜、ジュリアは葡萄畑で星を見上げていました。そこにダンデレ博士が静かに近づき、彼女の隣に座りました。『ジュリア、僕は君と一緒にいると、とても幸せなんだ。これからも、ずっと君の側にいたい…』

 ジュリアは一瞬、驚いた顔をしましたが、すぐに微笑み、『ふ、ふん! あなたがそうしたいと言うなら、仕方ないわね。ただし、勘違いしないで! これは単なる同情からだから!』と言いましたが、その瞳には明らかな愛情が宿っていました。

 二人はその後も仲睦まじく過ごし、エトルリアの葡萄畑には、いつも二人の笑顔が咲き誇るようになりました。ジュリアとダンデレ博士の物語は、甘くて少し酸っぱい、でも確かな愛情に包まれた、幸せな言い伝えとして語り継がれることとなりました。

第2話

第3話

第4話

第5話

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第7話

第8話

第9話

第10話

第11話

第12話

武智倫太郎


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