イノベーションを促進する特許権とオープンソースの発想の比較
『孫氏の白い犬の思考実験』では『生成AI開発(小学生でもできる無償の生成AIのオープンソースソフトウェアのインストール)に成功』までは想定していましたが、『オープンソースの定義が理解できない』ところまでは想定外でした。
特許権とオープンソースの発想の比較
特許権のような知的財産権と、オープンアーキテクチャやオープンソースは、どちらも『技術を普及させることを目的としている』という共通点がありますが、両者の考え方には大きな相違点があります。
特許権は発明者に独占的な権利を与えることでイノベーションを促進し、発明者が投資を回収し、さらなる研究開発を行う動機付けをするためのものです。この独占権は一時的で、特許が切れると誰もがその技術を使用することができます。そのため、社会全体の利益として、一定期間の技術の独占を許容することで、長期的には多くの技術が人類の社会に貢献することを目的とした国際的な知的財産権の概念です。
一方、オープンアーキテクチャやオープンソースは、技術や知識を自由に共有し、共同で改善していくことを前提とした理念の下で運営されています。これにより、多くの人々がその技術を学び、応用し、発展させることが可能となります。この考え方は、情報の自由な流通がイノベーションを促進し、共同の利益を最大化するという概念に基づいています。
特許権には世界知的所有権機関(WIPO)による特許権の定義があるように、オープンソースにもオープン・ソース・イニシアティブ(OSI)による定義があります。
オープンソースの世界では、多くの高品質なソフトウェアが無料で提供されており、その多くは商用ソフトウェアと同等またはそれ以上の機能を持っています。以下は、オープンソースの代表的な例の一部です。
OS(オペレーティング・システム)
Linux:小学生でもパソコンにインストールできるUbuntuは、Linuxの一種であり、パソコンOSの他にも、サーバ、クラウド、IoTなど、さまざまな用途に使用されています。商用OS(例:WindowsやmacOS)と同等もしくは、それ以上の機能を提供していますが、無償で利用できます。Linuxはリーナス・トーバルズによって1991年に公開されたOSのカーネル(中核部分のこと)です。
Linuxは、そのオープンな性質から、多くの派生版が生まれてきました。これらの派生版は『ディストリビューション』として知られ、速度重視型、セキュリティ重視型、実験的要素重視型、特定目的特化型OSなど、さまざまな特徴や目的に応じて設計されています。また、スマホのOSであるAndroidも、そのカーネル部分にLinuxを使用しており、AndroidはLinuxベースのシステムとして捉えることができます。
Ubuntuはマーク・シャトルワースによって2004年に設立されたCanonical Ltd.によって開発され、そのビジョンは、一般のユーザーも簡単に使用できるLinuxディストリビューションを提供することでした。
多くのオープンソースプロジェクトが世界的に普及する要因の一つに、リーナスやシャトルワースのようなプロジェクトの代表的な人物の利他的な人格と、リーダーシップと人徳による信頼の構築が挙げられます。これにより、コミュニティ内での協力と動機付けが高まり、プロジェクトが成功に導かれる重要な要素になります。
プログラミング言語
C言語:C言語は1970年代初頭にAT&Tベル研究所で開発されたプログラミング言語で、オープンソースコンパイラも多数存在します。
Python:Pythonはオープンソースのプログラミング言語で、ウェブ開発、データ解析、AI、機械学習などの分野で広く利用されています。多くのライブラリやフレームワークが無料で提供されています。
アプリケーション
LibreOffice:LibreOfficeはオープンソースのオフィス・スイートで、MS Officeと類似した機能を持っていますが、無料で利用できます。
大規模言語モデル(LLM):LLMにもオープンソースは、多数存在しています。