ツンデレ童話 (2) ツンデレとサドデレ
古代ローマ時代のエトルリアに、ジュリアという可憐なツンデレ美少女が住んでいました。
ある時、ジュリアの潜在意識のツンデレとサドデレが『あなたと私、どちらが魅力的かしら⁉』と魅力を比べ始めました。
ジュリアの潜在意識のツンデレは『何を言ってるのよ! 萌えの王道はツンデレに決まってるじゃない! メガネ属性や包帯属性みたいに、アイテムを使うのは反則よ! でも猫耳属性ならいいかも♡』とサドデレに主張しました。
するとジュリアの潜在意識のサドデレが、『あら、そんなにムキにならないで。意外と可愛いじゃない。でも、姉萌え属性のサドデレには勝てる魅力があるのかしら?』とツンデレを挑発しました。
そこに白馬に乗った王子様が通りかかったので、ジュリアは王子の前で『キャ!』と叫びながら可愛く転んでドジっ子アピールをしました。
ドジっ子萌えで有名なダンデレ王子は、思わず馬から降りてジュリアのもとに駆け寄り、『大丈夫かい? 怪我はない? 僕はこんなドジっ子を見ると、助けずにはいられないんだ。でも臣民を助けるのは王子の義務だから、別に好意からじゃないんだよ』と、かわされてしまい、単なるドジっ子アピールだけでは、ダンデレ王子の心を射止められませんでした。ダンデレ王子はいつも優しく、これまで特に心惹かれたことはなかったのです。
ジュリアの中のツンデレは、『これだからドジっ子萌えはダメなのよ!』と思いつつ、王子に向かって、『ふん、あなたに助けられたくて転んだわけじゃないわ。ただ、石につまずいただけよ。道路整備は王子の仕事じゃないわ。でも、王子様は素敵だから許してあげる。だ、だからって、好きなわけじゃないからね!』とツンデレしましたが、ダンデレ王子は『そうだね。君の言う通りだ。道路の不備について家臣に伝えておくよ』と答え、ツンデレでは王子の心を動かすことはできませんでした。
ジュリアの中のサドデレは、『これだからツンデレはダメなのよ。そんな陳腐なツンデレで王子様が好きになるわけないでしょう!』とツンデレに言い放った後、王子に対して『あら、王子様って意外と優しいのね? でもそんなに家臣任せで、いつまでたってもこの道は石ころだらけ。少しは反省したら?』と上から目線でダメ出ししました。
ピンポイントで痛いところを突かれたダンデレ王子は、『そうだね、自分のカリスマ性に問題があるのは分かっているよ。家臣のせいにしてはいけないね。王子失格だ』と落ち込みました。
ツンデレもダンデレも通用しないことが分かったジュリアは、ふといつもの癒し系ツンデレに戻り、『王子様も大変なのね。でも王子様って本当は、臣民だけでなく家臣にも優しい素敵な人なのよ。だ、だからって、私が王子様を好きなわけじゃないから勘違いしないでね。ただ、王子様を見ていると、好きになってもいいかもと思うこともあるわ♡』と、癒し系ツンデレ対応をしました。
癒し系ツンデレにはまったく免疫がなかったダンデレ王子は、一瞬でジュリアに心を奪われ、『僕は癒し系ツンデレに夢中だ。こんなに心が動いたのは初めてだ。どうか僕でよければ妃になってください』と、癒し系ツンデレに夢中になりました。
ジュリアは王子の提案に少し戸惑いながらも、内心では満月の下で運命的な出会いを果たしたことに感動していました。彼女の中のツンデレとサドデレは、それぞれの魅力を競い合っていましたが、最終的にはジュリアの心の中で、自然体の癒し系ツンデレが真の勝者となりました。
王子の素直な告白に、ジュリアは『えっ、本当に? でも、私なんかで本当にいいの…? あ、でも、王子様がそう言うなら、考えてもいいかもしれないわ…』と照れ隠しをしながら応えました。この瞬間、ジュリアのサドデレは彼女の内面の戦いに敗れ、ツンデレの素直な愛情表現が彼女の心を支配することを認めました。
その夜、エトルリアの星空のもと、ジュリアと王子は長い時間をかけてお互いのことをもっと深く知り、心を通わせることができました。ジュリアのツンデレとサドデレは、最終的に和解し、彼女の幸せを心から願うようになりました。
数ヶ月後、二人は盛大な結婚式を挙げ、ジュリアは王子の妃として新しい生活を始めました。彼女のツンデレとサドデレの性格は、この新たな章で彼女の魅力的な側面として受け入れられ、ジュリアと王子はエトルリアをより良い国にするために協力しました。
しかし、彼らの幸せな結婚生活は次第に暗転していきます。王子の不在が増えるにつれ、ジュリアの中のサドデレが支配的になり、彼女自身もその影響を強く感じ始めました。さらに、ジュリアの心の奥底に潜むサドデレは、王子への疑念を煽り、彼が秘密を隠しているという妄想に駆られるようになります。その妄想は次第にジュリアの中で新たな、より危険な人格のヤンデレを呼び覚ましました。
ある晩、王子がまたしても遅く帰宅したとき、ジュリアは『あなたはどこにいたの? 本当にただの政務なの?』と彼を問い詰めました。王子が答えに窮する中、ジュリアの中のヤンデレが完全に表面に出て、『嘘をつくなら、その代償を払うべきね』と冷たく言い放ちました。
その夜、エトルリアの城には異様な雰囲気が漂います。王子が眠りについた後、ジュリアは静かに彼の部屋を訪れ、寝ている彼をじっと見つめます。彼女の手には薄暗い月明かりの下で光る小さな短剣が握られていました。ヤンデレの影響下で、彼女は『真実を隠し続ける者は罰を受けるべきだわ』と囁きながら、短剣を王子の心臓に向けてゆっくりと突き進めます。
翌朝、王子の死体が発見され、ジュリアは何も覚えていないと主張しますが、城中の人々は彼女が何をしたのかを知っていました。ジュリアは王室から追放され、エトルリアの森の奥深くにある隠れ家で孤独に生活することになります。彼女の中のツンデレ、サドデレ、そしてヤンデレが戦い続ける中、ジュリアの精神は完全に崩壊し、真実の愛の力ではなく、人格の暗黒面の恐ろしさをエトルリアの民に教えることとなりました。
この物語は、エトルリアの民に語り継がれ、暗闇の中に潜む恐怖と人間の心の脆さを警告するものとして、永遠に残るのでした。
彼らの物語は愛の伝説から警告の寓話へと変わり、誰もがその悲劇を忘れないようになりました。
つづく…
武智倫太郎