AI開発とエネルギー供給問題:OpenAIの5GWデータセンターの実現性?
皆さんは、発電所の出力で100MWや1GWと言われて、どれくらいの規模かイメージできるでしょうか? 私は発電事業も手掛けているので、100MWなら石炭火力発電所で言えば神栖火力より若干小さい規模や、川崎重工の30MW級の高効率ガスタービンエンジンL30Aガスタービン2基、排熱回収ボイラー2基、蒸気タービン1基のCCPP(コンバインドサイクル発電)で100MW級といったイメージが湧きます。
また、原発で言えば、1GW級の発電所がどれか、といった具合に理解できます。ただし、日本のややこしい点は、MWやGWで表現せずに、1GWの出力を100万kWと表現することです。
日本の単位表現が混乱し易いのは、SI単位ではキロ、メガ、ギガ、テラが3桁刻みであるのに対し、日本の単位は千が3桁で、万や億、兆が4桁刻みで混在しているためです。
日本の新聞では、大手紙でさえ、kWとkWhの違いすら分からずに記事を書いていることが多いため、私は電気に関する情報を日本の新聞で読むことはほとんどありません。以下、世界的に通じるGW単位で説明します。
福島第一原発事故が発生してから既に13年以上が経ち、未成年の方々には記憶にないかも知れませんが、水素爆発やメルトダウンが発生して日本中がパニックになった原子炉は、0.8GW級のものでした。原子炉には0.5GWから1.5GW級のものもありますが、0.8GWは原子炉としては中型程度の規模です。
福島第一原発は、事故前に6つの原子炉を運用していました。その中で1号機の出力は460MW(0.46GW)、2号機から5号機は784MW、6号機は1,100MW(1.1GW)の出力を持っていました。
事故前の福島第一原発全体が約4.7GWの電力を供給していたことを考えると、5GWのデータセンターは、その全体に匹敵するか、それを超える電力を消費する規模となります。
このように、GW級の出力規模は、1つのデータセンターが都市や地域全体を支えるための膨大なエネルギーを必要とすることを示しています。この原子力発電の規模を理解した上で、以下の記事を読んでください。日本の新聞では電気の単位が間違っていることが多いため、英語の記事を適切に翻訳しました。
OpenAIがデータセンターに必要だと主張している規模
OpenAIのサム・アルトマンCEOがバイデン政権に提案したデータセンター建設計画は、その規模とエネルギー消費量が注目を集めています。この計画によると、各データセンターは5GWの電力を必要とし、これは通常の原子力発電所数基分に匹敵します。
アルトマンは、アメリカ国内に5~7基の同規模のデータセンターを建設したい意向を示しており、これによりAI開発に必要なインフラを強化し、アメリカがAI分野でのリーダーシップを維持できるとしています。また、このプロジェクトが進めば、数万人の新規雇用が生まれ、アメリカのGDPを押し上げる効果が期待されています。
5GWが7基なら合計で35GWとなり、これは多くの国の総設備容量を超える出力です。
しかし、この計画には多くの実現上の課題があります。例えば、膨大な電力供給を確保するためには、エネルギー供給システムの拡充や送電網の強化が必要であり、さらに建設や運用に必要な労働力不足が懸念されています。Constellation EnergyのCEOであるジョー・ドミンゲス氏も、この計画の実現可能性について『前例のない規模であり、実現可能とは思えない』と述べています。
また、Microsoftも同様の問題に直面しており、AIの計算資源を支えるために、エネルギー供給を確保する必要があります。このように、AIの進展に伴う電力需要の増加は、各国や企業にとって大きな課題となっています。
OpenAI倒産予測
日本では、OpenAIに対して夢物語ばかりが報道されています。しかし、OpenAIはこれまで一度も黒字を達成したことがない企業です。これまでに公開された報道によると、同社は大規模な損失を継続しており、2023年には約5億4,000万ドルの損失を計上していました。2024年にはさらに50億ドルに達する損失が予測されています。一年間で損失が10倍近く膨らみ、2024年10月2日には66億ドルの資金調達を行いましたが、2024年の年間50億ドルの損失が2025年にはさらに拡大する可能性が高く、その額は想像を超えるものです。66億ドルという資金も、数か月の運転資金に過ぎず、早急に消費される見込みです。通常の企業であれば、この状況は『自転車操業』と呼ばれるのではないでしょうか?
OpenAIが計画通りに成長できるかどうかは、技術力やマーケティング能力の問題以前に、必要なハードウェアや、前述の30~35GWに相当する膨大な電力を安価に調達できるという前提条件が必要です。つまり、電力を確保できなければ、利益を保証できない状況であることに、多くの人が気づいていないのは驚きです。
さらに、主要な研究者の多くがOpenAIを退社している現状も見逃せません。これも会社の未来に不安を抱かせる要因の一つです。
いくつかの報道では、OpenAIが2024年内に倒産する可能性が指摘されています。特に、同社は2024年に約50億ドルの損失を計上する見込みであり、運営コストの大幅な増加が大きな懸念材料となっています。AIモデルのトレーニングや運用には非常に高いコストがかかり、ChatGPTの運営だけでも1日あたり約70万ドルのコストが必要とされています。このような支出が続く中、収益が追いつかず、財務状況は非常に厳しいものとなっています。
さらに、競合の増加やGPU(グラフィック処理装置)の供給不足も、OpenAIの運営を圧迫しています。イーロン・マスクのxAIやMetaのLLaMA 2の台頭により、市場での競争が激化し、ユーザー数の変動も見られています。
主要人材の動向
武智倫太郎