そして誰も~なった(AI倫理編)
この作品集は、短編小説(ショートショート)の『本文』よりも『自己解説』が長く、その『自己解説』を超えるほど充実したコメント欄が特徴です。
タイトルの『そして誰も~なった』には、物語の結末がタイトルと同じになるという顕著な特徴があります。この執筆スタイルは、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が長編推理小説として極めて高度な作品であることと似ています。
意外な結末が重要な推理小説やショートショート作品において、タイトルで結末を宣言し、尚且つ読者の興味を引き付ける高度な執筆スタイルです。このように自らの作品を自画自賛するところが、『謙遜』という言葉を知らない武智倫太郎ならではの独特の世界観を反映しています。
『~なった』の部分には、『泣けなくなった』、『笑えなくなった』、『怒れなくなった』、『遊べなくなった』、『愛せなくなった』、『食べられなくなった』、『泳げなくなった』、『祈れなくなった』、『考えられなくなった』、『書けなくなった』、『盗めなくなった』、『差別できなくなった』、『サボれなくなった』など、AIの普及により失われる可能性のある様々な人間の能力や感情をAI倫理の観点から考察しています。
パワハラ問題に代表される『部下を叱れなくなった』状況は、既に顕在化している社会問題です。企業がコンプライアンス問題や、退職した元従業員からのブラック企業としての非難を避けるため、業務命令のメールを文書生成AIでスクリーニングすることが一般的になっています。また、オフィス内の監視カメラやマイクシステム、ビデオ会議システムを利用して、従業員や取引先の感情をリアルタイムで分析する感情認識AIの使用も進んでいます。
このシリーズでは、技術進化により生じ得るAI倫理上の問題を明らかにし、AIと倫理について初学者でも理解できるように解説しています。
さまざまなAIの導入により発生する問題をナンセンスなショートショートで描写した後、ストーリーが完結すると、『自己解説』や『特別付録』として、読者の理解レベルに応じた実際のAI倫理上の問題に関する『記事』、『AI倫理用語辞典』、『技術解説』、『哲学解説』などを参照できるゲームブックのような構造を通じて、各エピソードで描かれる技術的背景や、AI倫理上の問題点を解説する独特の形式を採用しています。これにより、既存の小説のカテゴリーに捉われず、『オールカテゴリ部門』にエントリーし、新ジャンルを確立することを目指しています。
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
第7話
第8話
第9話
第10話
第11話
第12話
武智倫太郎