プロレスの夢から考える日本政府の夢の実現可能性:造船業編
プロレスの夢を実現する仕組み
プロレスの世界では『夢のタッグチーム』や『夢のカード』と称されるファン待望の試合が数多く実現してきました。一見不可能に思える状況でも、それが形になるのは、団体間の交渉や選手同士の協力、さらには市場価値を最大化するための戦略的な取り組みが背景にあるからです。夢を語るだけで終わらせず、『どうすれば形にできるか』を考える――これこそがプロレス界の最大の強みと言えるでしょう。
以下に、歴史に残る実現したドリームマッチや、語り継がれる夢の対戦例を挙げてみます。
夢のタッグチーム
ジャイアント馬場&アントニオ猪木
長年ライバルとして戦ってきた二人が手を組むことで生まれた奇跡のタッグ。『プロレス界の奇跡』として歴史に残り、観客を熱狂させました。
スタン・ハンセン&ブルーザー・ブロディ
新日本プロレス時代に圧倒的な存在感を示した最強タッグ。『暴走列車』とも称されるこの二人の組み合わせは、日本のリングで圧倒的なパワーを見せつけました。
夢の対戦カード
ハルク・ホーガン vs. アントニオ猪木
日米プロレス界の象徴的存在が対戦した歴史的なカード。異なるプロレススタイルの融合が、新しいプロレス観を生み出しました。
アンダーテイカー vs. ショーン・マイケルズ
WWEのレッスルマニア25で実現した伝説の試合。『死神』と『HBK』が繰り広げたこの試合は、技術とドラマが融合した最高峰のプロレスとしてファンの記憶に刻まれています。
三沢光晴 vs. 小橋建太
全日本プロレスの黄金時代を象徴する対戦。肉体の限界を超えた試合内容は、『プロレスの本質』を問う名勝負として語り継がれています。
ビッグ・ショー vs. 曙
巨体同士の衝突として異種格闘技戦の趣を持つ試合。曙の相撲のバックグラウンドとビッグ・ショーのプロレススタイルが融合し、観客を沸かせました。
褌はアメリカでも通用するんです!
相撲褌(廻し)を着けないと、曙は『マケボノ』にしかなれないのです。
AJスタイルズ vs. 中邑真輔
海外で評価を高めた二人がWWEの舞台で再会。新日本プロレス時代からの因縁を引き継ぎ、グローバルなプロレスファンの夢を実現しました。
団体の垣根を超えた夢
新日本プロレス vs. 全日本プロレス vs. UWF
異なるスタイルを持つ団体が一堂に会し、数々の夢のカードが実現した時代。『垣根を越えること』がファンの夢を形にする鍵となった象徴的な瞬間です。
AEW vs. WWEの潜在的対決
現在もファンの間で議論が盛り上がるドリームカード。団体間の競争が激化する中で、これが実現すればプロレス界の新たな歴史を作るでしょう。
プロレス界が教える教訓
プロレスの歴史が示しているのは、夢を実現するには次の3つが不可欠だということです。
現実的な戦略:各団体が市場価値を見極め、夢を形にするための具体的な計画を持っていること。
協力と連携:対立する立場であっても、ファンのために協力して夢を実現する姿勢。
ファンの声を聞く柔軟性:ファンの期待に応えるための継続的な対話と革新。
これらの教訓はプロレス界に限らず、他の分野にも適用可能です。日本政府が掲げる『夢』にも、プロレスのような具体的な実行力と協力の姿勢が求められているのではないでしょうか。夢を語るだけではなく、それをどう形にするか――その答えは、プロレス界が示しています。
これを日本政府の政策に当てはめてみるとどうでしょうか。現代の日本政府が掲げる『夢』は、プロレス界が築き上げてきた成功の公式を理解していないように見えます。夢を語ること自体は悪いことではありませんが、それが机上の空論に終われば、国民の信頼を損なうだけです。
日本政府の夢が実現しない理由
1.計画の実現性を無視した『寝言政策』
経済産業省や国土交通省、環境省が掲げる『カーボンリサイクルの夢』『夢のエネルギー(核融合やメタンハイドレート)』『造船ニッポン復権の夢』などは、一見魅力的なビジョンを提示しています。しかし、その中身を掘り下げてみると、以下の問題が浮き彫りになります。
現実的なタイムラインの欠如
たとえば核融合エネルギーは、実用化まで数十年かかるとされています。しかし、その間に必要な基盤技術や資金調達計画が具体的に示されていません。壮大な夢を語るだけでは、進展どころか停滞を招きます。
市場ニーズとの乖離
メタンハイドレートは国内で大きな期待を集めていますが、採掘コストや技術課題から、国際競争力を持つ可能性が極めて低いとされています。にもかかわらず、予算が投下され続ける背景には、選挙対策や官僚組織のポスト確保といった自己目的化が疑われます。
海洋エネルギー・鉱物資源開発計画
令和6年3月22日
経済産業省
第七次エネルギー基本計画(原案)
令和6年12月
資源エネルギー庁
2.部門間連携の欠如
プロレス界では、新日本プロレスと全日本プロレスが競い合いながらも、ファンの期待に応えるため必要に応じて協力し、数々の夢のカードを実現してきました。一方、日本政府では、省庁間の縦割り構造が政策実現の妨げとなっています。
事例:再生可能エネルギーの推進
経済産業省が火力発電の延命策を進める一方で、環境省が脱炭素化を掲げるといった矛盾が存在しています。これでは、プロレスで新日本プロレスと全日本プロレスが互いを潰し合うようなもので、国民の利益に資するとは言えません。
3.国民の声に耳を傾けない姿勢
プロレスであれば、ファンの声を拾い上げ、待望の試合やタッグを柔軟に実現してきました。しかし、日本政府はどうでしょうか? 再生可能エネルギー普及や地域活性化において、国民の要望や現場の声が十分に反映されているとは言い難い状況です。
第一話:日本の『造船ニッポン復権の夢』はなぜ的外れなのか?
日本政府はかつて世界を席巻した造船業を復権させようとしていますが、現状の世界的な潮流を見れば、この方針は過去の栄光にすがった『懐古政策』と言わざるを得ません。
造船そのものに固執すべきでない理由
現代の海運業界は、燃料電池やバイオ燃料、ゼロエミッション技術といった分野が中心的なテーマになっています。これらの分野で日本が主導権を握るためには、造船そのものではなく周辺技術へのシフトが必要です。
グローバルな取り組みから学ぶべきこと
欧州のFLAGSHIPSプロジェクトや、韓国のSamsung Heavy Industriesによる燃料電池技術の実用化に向けた研究は、単なる夢ではなく実証段階に進んでいます。一方で、日本の造船業界の取り組みは試験段階にとどまり、世界から遅れを取っています。
1.欧州を中心とした実証プロジェクトやコンソーシアム
FLAGSHIPSプロジェクト(EUのHorizon 2020プログラム)
ヨーロッパで行われている旗艦的な水素船プロジェクトで、内水面や近海向け商用船舶への水素燃料電池駆動システムの実装・検証が行われています。現時点では小型から中型級の貨物船や客船が中心ですが、将来的にはより大型の船舶への適用も視野に入れています。
ShipFCプロジェクト
アンモニアベースの燃料電池をオフショア支援船(OSV)に搭載する試みで、海上デカーボナイズに向けた燃料電池技術のスケールアップおよび長距離航行への応用が期待されています。
2.海事向け燃料電池技術開発企業と造船所・機器メーカーの連携
ABBとBallard Power Systems
電力・自動化技術大手ABBと燃料電池メーカーBallardは船舶向けPEM型燃料電池システムを共同開発し、フェリーや客船、補助電源用などからスタートしつつ、大型商船への拡大を目指しています。
Bloom EnergyとSamsung Heavy Industries (SHI)
韓国の大手造船企業SHIは、米国のBloom Energyが提供する固体酸化物形燃料電池(SOFC)の船舶搭載に向けた研究開発を行っています。大型LNG船やコンテナ船へのSOFC採用により、低排出・高効率な船舶動力システムの実現が期待されています。
3.北欧諸国(ノルウェー・デンマークなど)の先行事例
北欧は海事脱炭素化の先進地域として、内航船やフェリーを燃料電池で運航するプロジェクトが進んでいます。たとえば、ノルウェー企業のTECO 2030は、大型商船向けの燃料電池スタック開発を推し進めており、将来的にコンテナ船やばら積み船、タンカーへの適用も模索しています。
4.日本企業や研究機関の取り組み
日本でも川崎重工、ヤンマー、トヨタなどが共同で海事用燃料電池システムの研究・開発を進めています。現時点では主に沿岸船舶や実証船での試験段階ですが、将来的には世界的な商船隊への展開が期待されており、特に港湾での水素供給インフラ整備や、アンモニア・メタノールなどの代替燃料と燃料電池の組み合わせを検討する動きがあります。しかしながら、私は開発以前の問題として、水素やアンモニアが安定的に確保できるとは考えていません。
5.クラス認証機関や規制動向
DNV、Lloyd’s Register、ABSなどの船級協会が、燃料電池搭載船向けの安全基準や設計ガイドラインを策定中です。またIMO(国際海事機関)はGHG削減戦略の中で水素・アンモニアなどゼロエミッション燃料使用促進を目指しており、これらの規制・標準化が燃料電池大型船の普及を後押しします。
『夢』を現実にするために必要なこと
日本政府がプロレス界から学ぶべき教訓は以下の通りです。
現実的かつ具体的なロードマップを作成すること
プロレスの夢のタッグや試合は、長期的な計画と入念な準備の積み重ねによって実現されました。同様に、核融合やカーボンリサイクルといった大型プロジェクトにも、具体的なタイムラインと中間目標が必要です。
部門間の連携を強化すること
縦割り構造を解消し、共通の目標に向けて統合的に取り組む姿勢が求められます。
国民の声を反映すること
政策の策定において国民の声を反映し、透明性を確保することが信頼回復の鍵です。
結論
プロレス界が着実に『夢』を実現してきた一方で、日本政府はお花畑政策を量産し、無責任体制に陥っている印象を与えています。国民に語る『夢』を現実にするためには、現実的な戦略や実行力、そして国民の信頼を得る真摯な努力が必要です。そうでなければ、日本政府の掲げる『夢』は単なる寝言に終わり、国民の失望を買う結果となるでしょう。
武智倫太郎