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スプラッター輝夜姫の逆襲 ~三流探偵の自嘲劇~

 己のアイデアを信じ立ち上がることすら怠惰な俺は、今度こそ、誰も見たことのない物語を生み出すべく、目の前の鍵盤を睨みつけた。だが、作品のアイデアなど、簡単にそこらへんにおちているもんじぇあねぇ。俺の心は荒んでいた。
 
 スランプに陥った俺は、三流の依頼人すら来ない、マンハッタンの場末の探偵事務所のソファーで暮らしながら、昔、ポールニューマンがハスラーという映画で呑んでいたJ.T.S. Brownという安バーボンを、ノーチェサーで呑み続けていた。
 
『こんなんじゃあ、どこへも行けねぇな。』と自嘲的な独り言をつぶやき、俺は淡々と安煙草に火をつけた。この安バーボンの喉を焼く刺激が、独り者の俺にとっては唯一の慰めだった。
 
 ボトルを二本空にした時だっただろうか、酒の勢いもあってか、突如、俺の脳裏に『輝夜姫xスプラッター』という画期的なコンビネーションが閃いた。俺の心が躍ったのは、久々だ。
 
 輝夜姫×スプラッター、この革新的なアイデアが俺の心に火をつけた。月の都から逃げた輝夜姫が、地上の荒廃した世界で生き抜く姿を描く。そこには血しぶきと暴力が渦巻く、けれども美しい物語があるはずだ。
 
 俺は新たな情熱を胸に、再び鍵盤を叩き始めた。輝夜姫が過酷な状況に立ち向かい、己の運命に抗う様子を想像しながら、陳腐な表現を避けつつ、自己陶酔的な三流探偵小説風に仕上げていく。しかし、その過程で俺は、これまでとは違う壁にぶつかった。
 
 スプラッターというジャンルは、読者の心を捉えるにはリスクが伴う。あまりにも過激で、時にはグロテスクな描写により、一部の読者を遠ざけてしまうかもしれない。だが、俺はそのリスクを受け入れ、新しい可能性に挑戦する決意を固めた。
 
 地道に作業を進めるうち、徐々に物語が形になっていく。血と涙、悲劇と希望が交差するサイバーパンク世界で蘇る輝夜姫の姿。それは、これまでの俺の作品とは一線を画す、新たな挑戦だった。
 
 果たして、このスプラッター風輝夜姫の物語は、世間に受け入れられるのだろうか。それは、俺にも分からない。しかし、一歩踏み出す勇気を持ち続けることで、未来への扉が開かれると信じている。そして、その日が来るまで、俺は新たな物語を紡ぎ続ける。
 
 探偵事務所のソファで寝転がりながら、また安煙草を口にした。煙を吐き出しながら、俺は自嘲的に笑った。
 
『こんな物語が受け入れられるわけがねぇ。』と呟いたものの、根拠もなく不安を抱える自分に苛立ちを覚える。
 
 しかし、今度こそ、俺は諦めない。この物語が、三流の探偵事務所を抜け出すきっかけになるかもしれないという僅かな希望を、俺は胸に抱いて、物語の執筆に没頭するのだった。そして、その日が来るまで、俺は新たな物語を紡ぎ続ける。自嘲的な独り言と、安煙草の煙が、場末の探偵事務所に漂い続けた。


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