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ChatGPTの生産性に関する誤解:生産管理専門家の視点

 2023年に入ってから、大規模言語モデル(LLM)の流行に伴い、LLMでの生産性向上を過大に主張する人々が増えました。10倍、20倍、一週間後には100倍と、生産管理の実態を知らない人たちの主張が乱立しています。
 
 同じ人が生産性が10倍、20倍(界王拳ではこの辺りが限界です)、30倍と毎日、生産性を10倍ずつ上乗せして、多数のフォロワーを集めている人も少なくありません。
 
 しかし、生産管理の専門家はChatGPTによって生産性や生産効率が何倍になるといった無責任なことを言うことは絶対にありません。逆に生産性や生産効率の定義もせずに、生産性が何倍になるといった主張をしている人は、生産管理の専門家とは言えません。このような主張をするのは、生産管理をやったことが無い素人か、間違いだらけのセミナー商法や情報商材を販売しようとして悪質な情報商材屋です。

 生産管理の専門家がどういうものかは、以下のnoteを読むと分かり易いでしょう。彼は決してLLMで生産性が何倍になるといった浮いた話はしません。これがコンピュータと製造業が分かっている人の説明です。

 以下に非常に簡略化した生産管理に関する筆者の意見を述べます。 

生産管理の専門家がLLMによる生産性を語らない理由の一部

生産管理の多面性:生産管理は単純な数値やデータの分析だけでなく、物流、人材、設備の最適化など多くの要素を統合して考える必要があります。ChatGPTは言語モデルとしての能力は高いものの、これらの複雑な要素を統合して最適な判断を下すことはできません。

実践的な経験の必要性:生産管理は実務経験が非常に重要です。ChatGPTのようなモデルは、大量のデータを基に学習しますが、現場の独自の課題や微妙なニュアンスを完全に理解することはできません。

セキュリティ問題:生産データや企業戦略などの機密情報を外部のAIツールに頼ることは、セキュリティ上のリスクが伴います。生産管理の専門家は、部門や工程に応じた生産効率の向上だけでなく、情報セキュリティや安全性なども重要視します。
 
専用ツールの存在:既に多くの企業は、生産管理の効率化のために専用のソフトウェアやツールを使用しています。これらのツールは、特定の業界や生産過程に特化しており、ChatGPTよりも適切な解決策を提供するように開発されています。

人間の直感と経験の価値:AIはデータを基に判断しますが、生産管理では人間の直感や経験が非常に重要です。生産管理の専門家たちは、その経験や直感を大切にしており、AIだけに頼ることのリスクを理解しています。

生産部門と非生産部門の生産性の違い

 生産性の意味が理解できていない自称生成AI生産性向上コンサルタントに騙されないように、製造業の生産部門と非生産部門の生産性の定義について簡単に説明します。
 
1. 生産部門の生産性の定義
 生産部門とは、直接製品の製造に関わる部署やラインを指します。その生産性の定義は、以下のようになります。

出力と入力の比率:生産部門の生産性は、どれだけの入力(原材料、労働、エネルギーなど)でどれだけの出力(完成品)を生み出せるか、という比率で測定されることが多いです。

品質との関連:製造された製品の品質も生産性に影響します。たとえば、高い生産性を持ちながらも不良品が多い場合、その生産性は実際には低いと言えるでしょう。不良品率、良品率、歩留まり率などの用語は、生産管理の専門用語ではなく一般用語ですが、これくらいの常識は理解していないと、会話が成り立ちません。

リードタイムの短縮:製品の生産から完成までの時間を短縮することで、生産性は向上します。特にJIT(Just-In-Time)生産など、効率的な生産手法を取り入れることで、生産性の向上が期待できます。
 
2. 非生産部門の生産性の定義
 非生産部門とは、製造業において直接製品の製造に関わらない部門、例えば人事、経理、営業、マーケティングなどを指します。非生産部門の生産性の定義は以下のようになります。

業務効率化:非生産部門では、特定のタスクを短時間で正確に実施する能力が求められます。例えば、会計作業時間を短縮することや、営業レポートの自動化などが該当します。
 
貢献度の評価:非生産部門の活動が、結果として企業の利益やブランド価値などにどれだけ貢献しているかを測定することが、生産性の評価に繋がります。

コスト削減:予算内での業務遂行や、無駄の排除を通じたコスト削減も、非生産部門の生産性の向上として評価されることが多いです。
 
 生産部門と非生産部門の生産性は、その性質上異なる評価軸で考えられるべきです。しかし、両部門ともに、その業務効率や組織への貢献度を高めることで、全体としての企業の競争力を高める役割を果たしています。 

非製造業の生産効率について

 製造業と非製造業の間には明確な違いがありますが、生産性や効率性の向上を求めるという基本的な目的は変わりません。製造業では、生産ライン上のボトルネックや原材料の最適な利用、労働力の最適化などに重点を置いています。
 
 一方、非製造業では、サービスの提供速度や品質、顧客満足度の向上などが主な焦点となります。

 しかし、どちらの業界でも、適切なリソース管理、効果的な業務プロセス、持続的な改善の取り組みなど、生産管理の基本的な原則は応用されています。実際に多くの非製造業の企業や組織も、製造業で培われてきた生産管理の手法やツールを適用して、業務の効率化や品質向上を実現しています。
 
 特に情報化社会となり、データが事業の中心となる現代において、生産管理の考え方や手法の重要性は、製造業、非製造業を問わず増しています。業種や業界を超えて、生産管理の考え方を取り入れることで、組織の競争力を高め、持続的な成長を支えることが可能になります。

狭義の生成AIの生産性

 狭義と広義の生成AIの定義については以下の記事をご覧ください。

 狭義の生成AIに関して、文筆家やイラストレーターや音楽家の生産性を著しく向上すると信じている人が多いです。しかし、これが趣味としての活動ではなく、プロフェッショナルの仕事として行われる場合、成果物の信頼性(特に生成AIが作成した文章の間違い)や、成果物が著作権を侵害していないことの確認、更には作品の品質が維持されるかどうかや、セキュリティなど様々な角度から考慮する必要があります。これらの要因を考慮しないと、逆に生産性や信頼性、商品価値を損なうリスクが生じることも考えられます。 

AI(人工知能)研究の第一人者、東京大学の松尾豊氏だ。秘訣はむろんAI、ビッグデータの駆使――ではなく、「相手の立場で物を考える」ビジネスの発想だという。そして強調する。「発想を変えれば、国立大学は今の百倍、一千倍は稼げる」と。

株式会社ジアース教育新社

 東京都も発想を変えれば今の百倍、一千倍は稼げるはずなので、これでベーシックインカム制度が成立します。


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