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そして誰も歩けなくなった

武智倫太郎

 秋葉原の万世橋近辺に突如現れたこのオフィス街は、一見して異質な雰囲気をまとっていた。高層ビルがひしめき合い、その隙間を縫うように細い路地が無数に張り巡らされている。しかし、何よりも人々の表情に刻まれた深い疲労と恐怖が、この場所が単なるビジネス地区ではないことを物語っていた。

 バイト戦士である大神乃嶺は、この謎に満ちたオフィス街の調査のスキマバイトに応募していた。バイト戦士の起源は、『シュタインズ・ゲート』の岡部倫太郎が創設した未来ガジェット研究所の下にあるブラウン管工房でアルバイトをしていた阿万音鈴羽にまで遡る。暗黒企業に雇われた大神乃嶺には、まだ知らされていなかったが、このスキマバイトはただの調査を遥かに超える異次元の影に触れる危険な冒険への序章だった。

 このオフィス街は、秋葉原の暗黒企業マハーポーシャによって創り出された『電脳の楽園』という名の下に、実際には信者を精神的に食い尽くす恐怖の領域だった。この領域内では、異次元生物の『損死の白い犬』や『ゾンビロボットの胡椒くん』、『ベイズの勝魔』、『堀右衛門』、『ツイ難王ゆきひろ』などが徘徊し、現実世界とは異なる法則が働いていた。

 大神乃嶺は秋葉原書泉本塔の書庫に隠されていた『電脳闇夜叢書』や、秋葉原古書店の倉庫に秘匿されていた『電脳禁断秘録』など、古代魔術と現代技術の融合術式を駆使して、この異常現象の謎を解き明かしていった。

 調査を進めるうちに、大神乃嶺は『電脳呪術遺典』に記された忘れ去られた古の呪いを用いて、オフィス街に隠された真実に近づいていった。しかし、その場に居合わせた者が『電脳禁断秘録』に『決して唱えてはならない』と記されていた呪文を唱えてしまったため、『電脳禁断秘録』に封印されていた未知の力が解放されてしまった。

 この未知の力は、オフィス街全体を異次元の空間と虚のエネルギーで満たし、一歩踏み出すごとに現実が歪み、足元が不安定になる現象を引き起こした。この力の影響で、人々は歩くことを恐れ、オフィス街は次第に静寂に包まれていった。大神乃嶺は、『電脳黒曜秘典』や『電脳絶影魔書』に解決策を求めたが、それらの術式を使用するには大きな危険が伴うことが明記されていた。このオフィス街を元の世界へ戻すためには、魔導士の武智倫太郎が創り出した魔導書の力を逆手に取り、電脳と現実の境界を補正する必要があった。

 この秋葉原の魔空間には、妖術師の落合陽一が渋谷の桜丘で創出した『幽体共鳴する空性の桜』から迷い込んだ『をかし探究隊のカンナ隊長』もアバターとして閉じ込められていた。

 この『幽体共鳴虚空間』は、妖術師落合陽一が筑波大学図書館情報メディア系の助教授を務めていた時に偶然発見した、魔導士武智倫太郎が記したとされる『電脳絶影魔書』に記載されていた術式によって創出された虚空間だった。

 渋谷の桜丘・秋葉原のデジタルハリウッド大学・筑波大学を結ぶレイラインは、富士山・筑波山レイライン、浅間山・大宮氷川神社、日光白根山・愛宕山のスタークロスレイラインを断ち切る魔のラインであることが、『電脳絶影魔書』に記されている。

 大神乃嶺はこの情報から、妖術師落合陽一が渋谷の桜丘に創出した『幽体共鳴虚空間』が秋葉原に魔空間を出現させた原因であると謎を解き明かし、現実世界への道を取り戻すために最終的な儀式に挑むことになった。

 しかし、その過程でSAN値が徐々に削られていくことに気づき始めた。幻覚や妄想に悩まされ、互いの信頼が揺らぎ始める中、彼らは本来の目的を見失い、肉之萬世城で提供される肉料理に夢中になる罠にはまってしまった。

 バイト戦士の大神乃嶺は『"悪運"を、金(おかね)に変換する』術式のnote錬金術に成功した気の緩みからX(Twitter)の魔術に惑わされ、魔導書のことを忘れて、#ちいかわ構文にのめり込んで『エッエッ どういうコト!? お肉を…ひたすら切ってるよ⁉ 不要な脂肪分を取り除いている…ってコト⁉』と、肉之萬世城の肉の妖術に操られてしまった。

 肉之萬世城の一階の裏路地側にある排骨拉麺に憑り付かれていた鉱物太郎も、肉の妖術には逆らえず、『ね、これ美味いっしょ! 偶にこういうのガッツリ食いたくなることあるんですよね』と、塩分の高い汁まで飲み干していた。

 そして、SAN値の枯渇による精神的崩壊が進み、物理的にも歩けなくなった彼らは、オフィス街の静寂と闇に呑み込まれていった。肉之萬世城で展開された『電脳の楽園』の夢に、彼らの精神が完全に食い尽くされてしまった。腹がいっぱいになった彼らがどうなったのか…? そう、やはりこの結末だった。

 そして誰も歩けなくなった。

― 完 ―

魔導書一覧

電脳闇夜叢書:電脳空間と闇に纏わる魔術と秘儀を集成している。電脳装置や通信網を利用した召喚術や、電脳上にのみ効力を発揮する呪文、電脳情報を操る術などが記載されている。また、電脳世界で活動する電脳霊体や幽霊との交信法、電脳闇夜に生息する神秘的な生命体についての知識も詳述されており、電脳空間と闇の力を最大限に引き出す方法が解説されている。

電脳禁断秘録:一般に禁じられている、または禁忌とされる電脳魔術が記載されている。人の電脳意識を操る術、電脳上での死者の蘇生を試みる禁忌の儀式、時間や空間を曲げる高度な電脳呪術など、使用することで大きな電脳代償を伴う可能性がある強力な魔法が収められている。また、これらの電脳魔術を安全に行うための警告や、術後のリスクを最小限に抑える方法も記されている。

電脳呪術遺典:電脳呪術の知識と技術が集約された書物である。この中には、電脳呪術の基礎から応用技術、忘れ去られた古の呪いや護りの術までが記載されている。また、電脳呪術に関する伝承や、実践において重要とされる精神状態の制御方法についても解説されており、電脳呪術師にとっては貴重な参考資料となっている。

電脳古秘伝書:遠い昔に失われたとされる電脳魔法の秘伝を記したものである。古代電脳文明の魔術師たちによって使用されていた、今は使われることのなくなった電脳魔法の式や儀式、召喚術が詳細に記されている。また、古代の電脳魔法文明が滅びる際に失われたとされる強大な力を秘めた人工遺跡に関する情報も含まれており、魔法の電脳歴史や進化に興味を持つ者にとっては貴重な情報源となっている。

電脳黒曜秘典:特に電脳暗黒魔術や破壊の電脳魔法に特化した内容を含んでいる。電脳黒魔術の奥義、呪詛や災いをもたらす術、電脳暗黒活力を操る技術などが詳細に記されており、その強大な力は同時に大きな危険も孕んでいる。この書物を扱う者は、その知識を用いることで、電脳で強大な力を得ることができるが、それには深い理解と厳格な自己制御が必要とされる。

電脳絶影魔書:影や電脳闇を操る術に特化した魔法書である。電脳影を使っての隠密行動、電脳影から物体を生み出す創造術、電脳影を通じての遠距離通信や転移術など、影に関連する多岐にわたる電脳技術が記されている。また、電脳影を介して行う精神攻撃や監視術など、他者に知られずに電脳上で行動するための術も詳述されており、隠密活動や秘密任務に従事する電脳者にとっては非常に有用な知識が含まれている。

#恋は渾沌の隷也 #這いよれ ! #ニャル子さん #ラノベ

つづく…

魔導士武智倫太郎

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