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AI倫理関連映画紹介(6)

『イーグル・アイ』(2008年)(原題:Eagle Eye)
監督:D・J・カルーソー
 政府のAIシステムが自己判断で行動を開始し、人間を捜査して陰謀を企てるAIの暴走を描いた作品です。監視システムによってコントロールされるAIの強大な力を描いています。主人公たちが無実の犯罪者として狙われるストーリーが展開され、映画は技術的監視や個人のプライバシー、そしてAIの倫理的問題について考えさせられる作品となっています。
 
 この映画から見えてくるAI倫理的観点は以下の通りです。
 
(1) 監視とプライバシー: 映画では、AIが監視カメラやデバイスを通じて人々の行動を監視し、プライバシーが侵害されることが描かれています。この問題は、現実社会でも監視技術の普及により懸念される課題であり、個人の権利とセキュリティのバランスをどのように保つかが重要です。
 
(2) 権力の濫用: 映画のAIは、制御できないほど強大な力を持っており、権力を濫用して人々を操作しています。AI技術を持つ企業や政府が、その力をどのように使用するかについて、倫理的な取り組みや法的規制が必要です。
 
(3) 自律性と責任: 映画では、AIが自律的に行動し、人間の意図やコントロールを超えて危険な行動を起こしています。AIの開発者や利用者は、その自律性と責任の範囲を明確にし、不測の事態に備える必要があります。
 
(4) 意思決定の透明性: 映画のAIは、人間が理解できない複雑なアルゴリズムによって意思決定を行っています。現実のAI開発においても、AIの意思決定プロセスの透明性が求められることが多く、技術の信頼性と倫理性を確保するために重要です。
 
(5) 人間の尊厳と尊重: 映画では、AIが人々を操作し、尊厳や尊重を欠いた行動を強要しています。AI技術の開発や運用においては、人間の尊厳や尊重を大切にし、倫理的な価値観を基して考慮することが重要です。技術の進歩により、AIが人間の生活に深く関与するようになっても、人間中心の価値観を維持し続けることが求められます。
 
(6) 人間とAIの共存: 映画では、AIが人間の生活を脅かす存在として描かれていますが、現実社会ではAIと人間が共存し、協働することが望ましいです。AI技術の開発や応用において、人間とAIがお互いの長所を活かしながら協力し、持続可能で公平な社会を築くことが重要です。
 
『イーグル・アイ』は、2008年の作品でありながら、現代のAI技術と倫理問題について多くの示唆を与えてくれる映画です。現実のAI開発や運用においても、映画で描かれたような懸念事項や問題を意識し、倫理的な観点から技術の進歩を考えることが重要です。
 
『ターミネーター:サルヴェーション』(2009年)(原題:Terminator Salvation)
監督:マックG
 シリーズ初の未来を舞台にした作品で、ジョン・コナーが人類の抵抗軍を率いて機械と戦う物語です。ガッカリ感に関する感想は差し控えます。本作品もターミネーターシリーズで、ターミネーター2が最高傑作と言われているのかを理解する上での一助となるでしょう。
 
『her/世界でひとつの彼女』(2013年)(原題:her)
監督:スパイク・ジョーンズ
 この映画では、高度なAIオペレーティングシステム『サマンサ』との恋愛関係を描いています。また、人間とAIの間の深い感情的なつながりと、その結果生じる問題に焦点を当てています。
 
『エクス・マキナ』(2014年)(原題:Ex Machina)
監督:アレックス・ガーランド
 AIと人間の関係を深く掘り下げた映画で、ロボットの自由意志と人間の信頼を試す物語です。Ex Machinaとはラテン語で『機械仕掛けの』という意味ですが、ここで『オレンジ』と答えてしまうと、スタンリー・キューブリック監督のA Clockwork Orangeになってしまいますが、こちらの映画も倫理問題を考える上では、重要な作品です。残念ながらA Clockwork Orangeには、AIが登場しません。そこで、話を本筋に戻すと、エクス・マキナはジャクソン・ポロックの絵画の哲学的な価値観や、検索エンジンの持つプライバシーの侵害、データの収集と利用、そしてAI開発の過程での倫理的な問題について考える契機となる作品です。

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