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<アイセック×レアジョブ対談企画> D&Iを企業から推進するため、できることとは

こんにちは!アイセック・ジャパンです。

アイセックは、世界100以上の国と地域​に​支部を持ち​、​約30,000人の学生が所属する非営利組織です。

海外インターンシップやオンラインの国際交流イベントなどの運営と参加を通じて、平和で人々の可能性が最大限発揮された社会の実現を目指しています。

今回は、海外インターンシップ 受け入れ事業担当の山口・鈴木が、株式会社レアジョブ(以下:レアジョブ)経営戦略本部長の坪内様とレアジョブ本社にて対談を実施しました。

過去には、アイセックを通じてオンラインでのインターンシップ生受け入れを実施されたこともあるレアジョブ。

レアジョブにて企業のグローバル化推進に取り組まれている坪内様と、日本の企業や団体を対象とした海外インターンシップ事業を運営する山口・鈴木による対談を通じ、企業におけるダイバーシティ&インクルージョン(以下:D&I)について考えていきたいと思います!


坪内様のプロフィール

株式会社レアジョブ 経営戦略本部長
坪内 俊一様

東京大学・大学院の、工学部/工学系研究科を卒業。2007年より、Boston Consulting Groupにて国内・海外企業への経営戦略立案・実行を支援。London Business SchoolでMBAを取得。その後、エムスリーのシニアディレクターを経て、2019年、当社に入社。執行役員CSOに就任。経営戦略本部を管掌。中期事業戦略の立案、M&A実行を担当。グローバルリーダー育成事業の事業開発も担当。


日本企業にD&Iが必要なワケ

*D&Iとは
Dはダイバーシティ(Diversity)、Iはインクルージョン(Inclusion)を表し、それぞれ英語で「多様性」「包括」という意味を持ちます。 このことからD&Iとは性別、国籍、年齢等にかかわらず尊重され、個人の能力が発揮された状態を指します。最近では、「公平性」を意味するエクイティー(Equity)を加えて「DEI」「DE&I」、さらに帰属を意味するビロンギング(Belonging)を加えて「DEIB」と呼ばれることも増えています。

ー なぜ企業でD&Iが求められているのでしょうか


山口
:以前からD&Iの必要性については言及されているかと思いますが、現在も多くの企業でD&Iが進んでいる状況ではないと認識しています。例えば、海外事業に必要な人材不足を抱えている企業が多いものの、日本国籍でバイリンガルの学生は採用できても、外国籍の学生の採用が難しいということは実情としてあるのではないかと考えております。

今一度、企業でD&Iや社内グローバル化を進めることによる利点は何か、なぜ行う必要があるのかについて、レアジョブにてグローバルリーダー育成事業の事業開発を担当する坪内様にお伺いしたいです。

坪内様:D&Iはナショナリティやジェンダーなどの観点から、社会的に少数派の人も含めて、組織にインクルードされ、能力を発揮している状態ということだと捉えています。近年、多様性を受け入れ、誰しもにとって生きやすい社会を作ること、また社会の一員である企業が、社会的責任として多様な人々が働ける環境を作ることが求められるようになってきました。
 
日本の未来に目を移すと、今後10年単位で考えた時に、日本の労働人口や消費人口、経済活動は小さくならざるを得ないでしょう。企業からすると、日本という限られたパイを奪い合う市場だけで戦いながら成長を実現するのはより一層難しくなっていきます。そうなると、成長を目指し、より大きなパイを求めるために海外に進出するのは自然な考えなのではないでしょうか。実際に日本企業の海外売上高比率は上がっていると思います。
 
一方、日本企業で働く人を見たときに、グローバルに働くために必要な素養を持っている人は限られています。グローバルに働くために必要な素養として、真っ先に思い浮かぶのは言語能力ですが、それと同等かもしくはそれ以上に、多様性を受容しリードする力が必要になると思います。

また、日本企業そのものが多様な人材を受け入れるためには、多様性を尊重しインクルーシブな環境を用意する必要があります。企業における人事制度などの仕組みやコミュニケーションを、多様性を前提にしたインクルーシブなものにしていかなければ、多様な人材を社内に取り入れたり、継続的に雇用し続けたりするのは当然難しいと思います。

つまりD&Iが達成できていない限りは、企業がグローバルに事業を展開していくことは困難になってしまいますし、社内のグローバル化を通して成長を目指さなければ、日本企業が成長するのは難しいという現実があります。

山口:確かに、ビジネスパートナーとして海外の企業と日本の企業でやり取りをするのと、実際に企業内に多様なバックグラウンドを持つ方々を受け入れて一緒に働くのとでは全く違う話ですよね。

日本企業は社内でのインクルーシブを実現しないと多様な人材を採用できない上に、採用できたとしても、彼らは辞めてしまうということを聞きます。日本企業で働くと、彼らにとってムズムズするような習慣であったり、彼らにとって標準となるところから遠い制度などもあると思います。企業は、海外からのインターンシップ生受け入れを通じて多様な人材を実際に受け入れてみることで、初めてそういう部分に気づくこともできるため、私たちは海外インターンシップ事業に価値を感じています。
 
坪内様:加えて現在、ソフトウェアエンジニアの世界でも大きな変化が生まれています。アジアには世界的に有名で理工系の教育が非常に充実した大学があり、そこに通う学生はアジアからだけでなく、世界中から引く手あまたなわけです。その中には、英語が母国語ではない人もいますが、当然英語はできます。グローバルに働ける優秀な人材を採用したいと思うのであれば、世界の先進的な企業と人材獲得競争をしなくてはなりません。グローバルタレントにどうやって来てもらうのか、という発想が必要です。
 

社内D&Iのきっかけはつくれる 

ー 社内D&Iを達成する上で鍵となるポイントは何でしょうか 


山口
:ここまでのお話の通り、社内D&Iを目指すためには、インクルーシブな環境や組織文化の再構築が必要なのではないかと考えております。
 
以前、坪内様は対外的なセミナー*の中で「外国人が働ける環境ぐらいには従業員が英語を話せる状態、英語で実務を回していけるような状態を作ることが、ここからの1つの解決策」とおっしゃっていたと思います。この状態を目指すにあたって、まず何が必要なのか、若者と企業という視点から、キーポイントを伺いたいです。
 
坪内様:若い世代という視点でいけば、やはり現場側で実際に海外にバックグラウンドを持つ人材と接するのは、若い世代の方が多くなると見込まれます。その意味では、若い世代の方こそが、多様性を受容する柔軟性や、自分が知らない文化的背景を持つ方たちへの好奇心を発揮して、最前線でD&Iを実現していただく必要があるだろうと思います。

具体的に何をするのかといえば、まずは英語でのコミュニケーション機会を持つことが必要です。海外から日本へ人材を受け入れる時に、最も課題になるのが言語的な障壁であるので、そこを乗り越える必要があります。日本では義務教育の過程で、少なくとも日常会話に必要な英語力は養われていますので、本来なら英語で日常的なコミュニケーションを取ることは可能なはずです。しかし実践の機会が足りていないので、コミュニケーションに支障をきたしているというケースが多いと考えています。弊社のオンライン英会話サービスなども活用しながら、実践的に話す練習をしていただきたいですね。

加えて、英語が話せるだけでは、ビジネスを前に進めるという意味では不十分です。日本の文化を世界の文化と比較してみると、色々な観点で大きく異なることが知られています。ハイコンテクスト、ローコンテクストのようなものは有名ですが、そういったコミュニケーション上の当たり前が違うということを理解しないと、スムーズなコミュニケーションは望めません。海外から日本を訪れる方が日本語や日本文化に合わせるべきだ、という意見もあると思いますし、来る側にも一定の努力は求められるとは思います。ただ、最初に述べたように、これからは〈どうやったら日本に来てもらえるのか〉を考える必要があります。

日本の特徴を起点にしつつ、グローバルにはどのようなコミュニケーションスタイルがあるのか、それぞれの当たり前はどういうものなのか理解することは、先ほどお伝えしたグローバルに働ける人材に必要な素養そのものですので、ぜひ、日本企業の多くの方がそこを身につけていただけるといいなと思います。
 
山口:英語力以外に組織文化としてコミュニケーションの幅を変えなければならない、ということは共感します。アイセックで海外インターンシップ事業を運営する中で、日本のエンジニアが海外の企業担当者と英語でコミュニケーションが取れないという問題や、多様なバックグラウンドを持つ社員同士がコミュニケーションを取る時には合意に至るまで配慮が必要であるといったお話を企業から伺うことがあります。
 
また、実際にインターンシップで海外の学生を受け入れていただくと、英語でのコミュニケーションの他にも行動や生活習慣などが日本と異なっており、生活の一分一秒ごとに何か発見が生まれてくるともお聞きします。多様な人材と相互理解を深めながら働くことは一筋縄ではいかないと私自身強く感じます。

ー 組織文化も含めて社内D&Iを進めていくため、レアジョブで取り組んでいることとは?


坪内様
:レアジョブ自体のD&Iという意味では、レアジョブは創業のかなり早い段階から、日本とフィリピンの二極体制でビジネスをしてきました。日本側で事業の方向性を決めると共に、フィリピン側では講師の採用やプログラム開発の一部などを担当してもらっています。日本とフィリピンでは当然、社員が会社に求めることの当たり前や、実際の仕事における当たり前が大きく異なることを経験的にも学んできました。そこを解決するために日本からフィリピンに行ったり、逆にフィリピンから日本に来てもらったり、とにかくコミュニケーションをとることでその違いを理解し、尊重し、時に譲歩しながらどうすればうまくいくかを皆で考えてきました

こういった我々の経験をもとに法人事業を展開する中で、大きな視点で見れば企業のD&Iをお手伝いさせていただいています。先ほどもお話したように、このままだと市場は小さくなっていくので海外展開や企業としてのグローバル化を進めなくていいと思うような経営者は1人もいないでしょう。しかしながら、実際にどう社内のグローバル化を進めていけばいいか、企業側に知見があることは稀です。

我々としてご提案しているのは、先ほどのお話と重複しますが、まずは言語の障壁を取り払うこと。弊社はオンライン英会話サービスを提供しておりますので、そちらをご利用いただいています。

また、先ほどの「英語が話せるだけでは不十分だ」という認識は企業側にも当然あって、我々もグローバルに働けるようになるコミュニケーションスキルを学ぶサービスを開始しました。このサービスでは、たとえば、カンファレンスなどの場で、ビジネスに繋がる相手を見つけ、つながりを作り、ビジネスのきっかけを創出するということが求められますが、日本人で海外の方が大半のカンファレンスでこれができる方は、そう多くありません。そういうシチュエーションでどういう話をするのか、ということを実践できるサービスになっています。これを議論の場、プレゼンの場、というビジネスのシチュエーションごとに、コミュニケーション上の当たり前の違いを学ぶことができるサービスを提供しています。
 
山口:英語を使用したビジネスコミュニケーションの難しさ、その重要性はとてもよくわかります。アイセックは100以上の国と地域に支部があるため、各地域からメンバーが集う国際会議が定期的に開かれています。そこでのネットワーキングはその後活動をする上で非常に重要なものですが、文化的背景が違うため海外の担当者とのコミュニケーションには困惑することもあります。コミュニケーションには練習が必要だと思います。 

一つの会社をこえ、日本社会全体でのD&Iへ

ー 多様なバックグラウンドを持つ方々に選ばれる社会をつくるにはどうすればよいでしょうか


山口
:今までは企業にフォーカスしてお話を進めて参りましたが、ここからは社会全体に範囲を広げてお話を進めていければと思います。経済産業省の「未来人材ビジョン」には、日本は高度外国人材から選ばれていない現状がある一方、少子化が進み、将来にわたって労働力が不足すると記されています。国としても、やはりそこに課題を抱えているのではないかと思っています。
 
なかなか楽観視できない状況であると思いますが、英語力だけではなく異文化理解力の獲得も視野に入れ、多文化共生の実現を目指して社会全体として歩みを進めることが、多様なバックグラウンドを持つ方々から日本が選ばれるために必要になると私は考えています。

ここでは官民協働をキーワードにしつつ、どうしたら海外の方々に日本が選ばれるようになるのかという点についてお話をお伺いできたらと思います。 

坪内様:あくまで私個人の考えですが、日本は観光国としてすごく人気が高いという事実があります。コロナ禍で観光客数は落ち込んでしまいましたが、だいぶ戻りつつあります。街は綺麗だし、治安はいいし、物価も高くないし、人は優しいし、物を落としても返ってくるし、いいことしかないと思うんですね。

しかし働くとなると途端に嫌がられてしまう。その理由は給料の安さや、職場で英語が使えないなどの理由があると思いますが、国全体という視点でいくと、生活していくためのインフラが一つのネックになっているのではないかと思います。たとえば、スーパーマーケットは全て日本語表記でわかりにくく、日本語話者以外にとっては買い物がしにくいと感じます。学校について考えた時、公立の学校が英語以外の授業を英語で行うことはありません。また、公立高校において外国籍の方の受け入れ枠の導入が十分に進んでいません。医療に関していえば、英語が話せる医師がいる病院は、まだまだ限られるでしょう。私自身、海外に住んでいたことがあるのですが、病気になったときに言葉が通じないというのは、不安でしかありません。また、親の立場になったときに、質の高い教育があるかということは一番気になることでしょう。

そこで、海外から日本に来た方との共生を主眼に置いた特区を作るのはどうでしょうか。多国籍の家庭を受け入れることを前提に学校を複数設置し、区役所、病院といったインフラを日英対応にし、その特区内では日英対応の企業や町のお店に税制上の優遇を与える。このような特区がきっかけとなり、より多くの海外の方に、日本の食や文化の良さを理解してもらうことができたら、人が集まり、雇用が生まれ、そして経済が回り、海外の方々との共生の輪がどんどん広がっていきます。それが企業の国際競争力にも寄与し、巡り巡って、投資コストを十分に回収できるのではないかと思います。
 
このような特区を実現していくには、地域社会におけるD&Iが当然に必要になるので、地域住民に対する啓発も必要です。そのため、政府など公的機関がインフラという側面から整備すること、そしてそこに民間企業も積極的に乗っかっていき、地域住民全体に波及するほどに加速化させることが大切ではないかと思います。
 
山口:海外から日本にやってくるということは、家族とともにあり、衣食住も生まれるものだと思います。特区は多文化共生のきっかけを作る上での一つのやり方かもしれません。また、公的機関の動きがあったとしても、学校法人や企業が、どこまで取り組みを具現化させられるかが、地域社会におけるD&Iの実現にとっては最重要だと感じました。

ー 最後に

鈴木:お話を聞き、D&Iの実現に向けては、まずは海外の方の日本での生活に対する私たちの想像力が必要だと思いました。
 
また、D&Iの捉え方に関して、英語を話すという点のみで捉えると、その難しさから否定的な意見も出てきてしまうかもしれません。しかし、より多くの人が英語を手段としてコミュニケーションをとり、お互いの背景を知って価値観を広げていくという捉え方ができれば、ポジティブに捉えられる人が増えるのではないでしょうか。改めて、私たちも海外の若者を受け入れていただく海外インターンシップをより多くの企業に届け、企業からD&Iを推進していくきっかけを生み出したいと強く思いました。


*日本の「ビジネスの効率性」は過去最低を更新 世界競争力ランキングから読み解く元凶 (https://logmi.jp/business/articles/322599)

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株式会社レアジョブについて

レアジョブグループは、AIアセスメントカンパニーとして、グループビジョン“Chances for everyone, everywhere.”に基づき「世界中の人々が、それぞれの能力を発揮し、活躍できる世の中の実現」を目指しています。オンライン英会話をはじめ、AI ビジネス英語スピーキングテスト「PROGOS®」などアセスメントを軸とし、個人・法人・教育機関を対象に事業を展開。また、英語だけでなくグローバルリーダーに必要な評価・育成・採用など人材関連サービスや、資格取得を支援するサービスも提供。今後も、国内のみならずグローバルな事業展開を推進してまいります。
HP:http://www.rarejob.co.jp/
法人企業向けサービスHP:https://www.progos.co.jp/


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