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ラグビーW杯 9/21. 第2試合 ニュージーランド vs 南アフリカ レビュー

前のレビューをみんな読んでくれて、ラグビーの見所が伝わったというのが嬉しいので、注目の対戦カードが立て続けに3試合行われた21日の試合も続けてレビューすることにする。

義務感は感じてないけど、さすがにいい試合すぎて、これはちょっと書きたくなったので。

これでラグビーW杯をもっと楽しんでもらえるとれしい。
とはいえ、全部は厳しいので1試合を選ばせてほしい。

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21日は面白い試合が目白押しで、全く違う個性がぶつかったオーストラリア×フィジー、似た者どおしのシーソーゲームとなったフランス×アルゼンチンも良かったのだけど、この日最注目のカードということと、僕が普段から南半球のラグビーを追っており、選手の個性もとりたい戦術も理解してるということで、ニュージーランド・オールブラックスと南アフリカ・スプリングボクスの試合としたい。

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南アフリカというと4年前、日本がアップセットを演出したので、ライバルとみなす向きもあるけど、実力でいったら日本は話にならないくらい負けている。

で、絶対王者のオールブラックスはいうと、圧倒的に強い彼らが肝心なところで負ける時、相手はフランスか、この南アであり、因縁でいうとこちらの方が深い。

今日の試合はどう行ったものとなるだろうか。

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ゲームが始まる前に、オールブラックスは伝統のウォークライ、ハカのパフォーマンスをしたのだが、その演目は「カパオ・パンゴ」であったのにちょっと驚いた。

通常、予選では、もう一つのバージョンである「カマテ」が演じられることが多いのだが、大勝負の時しか出ない「カパオ・パンゴ」であったのはオールブラックスも相当な気合いが入っていたのだろう。

ちなみに、ハカは通常、リードとよばれる独唱からはじまり、これだけはマオリの血を引くメンバーでないといけない。

今回のリードはTJペレナラ。第二スクラムハーフ。最近は彼が多い。

世界最高とも言われる第一スクラムハーフのアーロン・スミスも資格があり、彼がリードだったこともあるが、国際試合の旅先で女性をトイレに連れ込み、セクシーな行為に及んだのがオールブラックスっぽくないと懲罰を受け、代表から外れていた時期があり、その時からペレナラがリードになった。

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さて南アのキックオフで始まった試合の方だが、伝統的にこのカードはロースコアになることが多く、その理由は南アのとる戦術にある。

一言で言うと「トライはいらない、マイボールもいらない」。

彼らはボールを持つと、非常に単調な攻めを繰り返し、パワーをテコに相手の苦し紛れのペナルティを狙ったり、キックを蹴って落下地点でど迫力のタックルをかまして、ポロリから → リスタートのスクラムでパワーで押しつぶして前進を狙う。

大事なのはディフェンスで、キックでボールを渡すので、絶対突破されてはならず、それさえ可能ならロースコアにコントロールできる。
こんな戦術が取れるのは世界でも南アくらいだ。

オールブラックスの華麗なパス回しと走力は世界一だが、それを止めうるのが「単純なガタイのデカさ」「常識はずれのパワー」「きれない集中力」「決してサボらない真面目さ」そして「異常なくらいの単純さ」というのが面白い。

実際この試合でもスタートは南アが狙い通りコントロールしていた。

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ただ、計算違いが生じたのは前半20分ほど。

予想外を演出したのはオールブラックス10番、SOリッチー・モウンガ。

彼は前W杯から3年ほど、本日15番に入ったボーデン・バレット、怪我で今大会出場できなかったが稲妻のようなランと、キックの前に本位曰く「ラグビーが、好きだ。」と心の中で唱えてニヤリと笑う独創的なプレパフォーマンス・ルーティンで名高いダミアン・マッケンジーの陰に隠れて、司令塔としては「第三の男」扱いされていた。
しかし今年になって地元NZのチームでの活躍で頭角を現し、オールブラックスの10番を射止めていた。

オールブラックスは、このどちらかと言うと手堅さと抜け目なさを信条とする地味なモウンガと天才的な閃きのある派手なバレットの2人を併用し、実質W司令塔を形成していた。

モウンガについては、栄光のオールブラックスの司令塔という、ラグビー界において文句ない立場にいるのだが、「天才」だの「イケメン」だの「最注目選手」だのともてはやされるバレットと比べて、彼自身のプレースタイルのせいかルックスのせいか、立場に見合った注目をされてると言い難く、なんかちょっと悲哀を感じさせるものがある。

とはいえ、この男がこの試合を大きく変えた。

彼が自陣で平行に蹴ったキックパスをきっかけに、オールブラックスは一気にトライを陥れる。

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その後も、モウンガかバレット、どちらかが密集に巻き込まれて機能停止しても、もう一方がゲームを組み立てるので止まらない、という攻めに南アは対応できない。

前半で計2トライを献上。

この時間帯はあまり長くなく、2トライを与えてしまった一瞬以外はディフェンスもよく機能し、前半のほとんどの時間がむしろ南アのロースコア狙い戦術の通りに進んでいた、でも結果として一瞬の破綻で点差は開いてしまった。

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後半はトライがないとプランが遂行できない南アだが、驚くべきことに彼らはあまり戦術を変えず、なんとオールブラックスの一瞬の油断から逆にトライをもぎ取ってしまった。

ここら辺は、自分たちのやることを信じて崩れなければ、幸運が一定確率でやってくると言うことかもしれない。

さらに後半20分、SOポラードが虚をついてドロップゴールを狙うと、これが入り、当初の予定通り、「トライはいらない、キックで刻むぜ」戦術を現実的に見える線まで引き戻した。

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しかし、その後、お互いがあまり大きなミスをしないまま時間は経過し、いくつかの幸運の中でオールブラックスが獲得したペナルティーキックを、地味な男モウンガが確実にきめ、南アの勝機はじわじわと離れていった。

南アとしては長時間ゲームをコントロールし、自分たち好みのゲームを演出したにも関わらず、前半に一瞬の隙で奪われた2トライで試合を失うという結果になってしまった。

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ゲームの概観としては、オールブラックスも南アも非常に出来が良く、プールに彼らを脅かす敵がいないことから、双方決勝トーナメントに進む可能性は高いと見る。
そうなると、1ヶ月後に彼らは再び相まみえるかもしれない。

そのとき、南アは意趣返しできるだろうか。
なかなか楽しみではある。

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SNSのコメントで質問があり、僕も非常に印象的だったので、フランス×アルゼンチン戦におけるドロップゴールについて解説を試みたいと思う。
ドロップゴールというのはラグビーの得点方法の一つで、「オンプレー中にボールを前にショートバウンドさせて、跳ね返った瞬間を狙いすましてゴールに蹴り込む」というものだ。
3点。

ディフェンスを押したりかいくぐったりして苦労してトライを決めるより、いきなり蹴って得点できるならそうすればいいじゃないか、と思うかも知れないが、ショートバウンドの球を正確に蹴るのはそれだけでも高い技術が必要とされ、正面ちかくの角度でポストの間隔が広く見えるポジションでないと通すのが難しい。
日本代表の田村選手によると、ボールを離すときの向きや手のかけ方も気を遣うのだという。
そのうえ、集中して蹴れるトライ後のコンバージョンキックやペナルティーゴールと違って、絶賛オンプレー中なので、大男どもがド迫力のプレッシャーをかけてくるのだ。
そうそう決まるものではない。

そんなドロップゴールがいいタイミングで決まったので、見てるこっちも驚かされたのだけど、多分あれはチームとしての戦術ではなく、個人のとっさの判断だと思う。

ドロップゴールは陣形やゲームスピードから、出そうなタイミングがわかるものだが、あの時「これは蹴るぞ」というタイミングでは全くなかった。

ゲーム全体の流れを思い出してほしいんだけど、あのゲームは前半、フランスが圧倒的に優位に進めていたものを、後半、アルゼンチンがゲームを辛抱強く戻して、ペナルティーキックで刻んで追い上げていた。

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特徴的なのはキックとモールで、前半、双方まったくキックを蹴らず、お互いムキになって走り合っていた。

アルゼンチンは強力FWに加え、クリエイティブなランナーを揃え、予測不能なランを繰り出すチームだが、それにこだわりすぎていたように思う。
対するフランスもランの予測不能さなら負けてはいない。
というか、フランスは個人がアドリブで繰り出すラン・パスを次から次へと組み合わせて、さながらジャズのシンコペーションのようなリズムで相手を翻弄するチームで、そういう土俵ならなれきっている。

結果、フランスがゲームを支配していたのが、後半アルゼンチンはキックを蹴ったり、モールで押すようになり、長時間の走りあいにこだわらなくなった。

そしてゲームは落ちついて、アルゼンチンは3点で刻みながら追い上げ、ついには逆転した。
この時点で、計画的にアルゼンチンがゲームのコントロールを自分たちのものにしていた。

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フランスにとっての後半は、前半とうって変わってコントロールできない上にじわじわ追い上げられてしまいに逆転されるという非常に嫌なムードに飲まれそうになっていた時間だった。

はっきり言って増田はアルゼンチンが勝つと思っていた。

そこにリザーブで入ってきた奴がまったく空気に合わせずにシレッとドロップゴールを決めて流れをブった切ってしまった。

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俯瞰で見てる奴がゲームをまるっきり変えてしまうのは、どことなく会社などで中途採用のよそ者がガラッと慣習をやぶって風穴をあけるのを連想させる。

あれはラグビーのフィジカルな面でなく、「我慢のスポーツ」「コントロールのスポーツ」としてのメンタルな面をよく表していたと思う。

ラグビーでは、戦術やフィジカルといった見えるものと、もっと上位にあって見えづらい「客観性」「空気」「メンタル」みたいなものが勝負を大きく左右するケースがあるので、そこにも注目してみると、味わい深くなると思う。

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あ、あとついでに、オールブラックスの選手、リーコ・イオアネのNZから日本に向かう様子を本人が投稿した動画のリンクを貼っとくわ。

彼は「恩人が日本人なので、彼の子供と同じように日本語の名前を息子につけたい」と希望した両親に危うく「リエコ」と名づけられそうになったが、「それ女の子の名前やで」と訂正され、「リーコ」になった経緯がある。でも綴りはRiekoやんけ。

そんな人たちもやってくるW杯、みなさん楽しんでほしい。

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あいーんシュタイン
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