タイマンはろうぜ:2009年11月の中目黒「聖林館」
メニューのかくかくしたカタカナ表記からして普通じゃない。これは一種の果たし状に近いノリである。
正午すぎなのにすんなり入店。二階へ、と誘導するピザ焼き職人と女性の態度はクールだが、失礼はない。身構えたり緊張したりするよりも、よし行くぞ、とわたしは軽やかに螺旋階段をのぼった。
THE80年代バーのような雰囲気は、奇をてらってはいないし、無駄なノスタルジアを演出してもいない。
カッコつけてねぇで、かかってこいや。
店全体がドスのきいた声で語りかけてくる。
わかった、いくぜ。
もちろんマルゲリータ。
水につづいて間髪おかずにサラダがやってくる。単なるハムのせ野菜じゃねえか。このドレッシング、小学校の家庭科の授業で作ったのにクリソツだぜ。なめんなよ。
ワンクッションあり、息を整えていると、さほど待たせることなくピザが到着。
ちいせぇな。メニューにジュニアと書いてあった通りだぜ。ルックスにも迫力がねぇ。まるでスナックだぜ、これじゃあ。
たが、イキがっていられたのもそこまでだった。
四等分して、口にほうり込む。
や、やるな。温度が完璧じゃねぇか。生地の強さを引き出す必然性のある熱さだ。しかも、生地の塩加減が絶妙ときてる。耳の焼きはあえて抑えて、部分部分を特化させず、生地全体を丸ごと食わせる地続き感がすげえ。
トマトだってハンパねぇ。フレッシュだが、水っぽかったり、ゆるかったりすることがなく、生地にぴったり張り付いてやがる。この粘着性が確実に旨味と一体化してる。しっかり酸味はきいてるが、しぶというねりがあり、真正面から生地と一騎討ちしてるみたいだ。しかもこの勝負、互角じゃねぇか。
生地とトマトの対決に我を忘れながら、気がつくと食い終わっていたぜ。モッツァレラやバジルの印象は皆無だが、悔しいけど、こんなピザがあってもいい。
レモンシャーベット。極小じゃねぇか。食べようとしたら、ミントが落っこちたぜ。めっちゃ食べにくいけど、いいな、これ。実は量が的確だ。わかってるな。質量というものを。見極めてるな。モノを。
エスプレッソ。甘み、苦み、酸味の口内での流れ、推移が素晴らしい…と思ったら、おいおい、最初から砂糖入りかよ!きいてねぇよ!
だけど…うまいな、これ。下のほうでどろどろになってんのも、なんだかすげえうめぇ。砂糖なんて滅多に入れねぇけど、プロの砂糖入れ、しっかり見せてもらったぜ。
完敗だ。そして乾杯だ!
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