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相田冬二賞2024最優秀アルバム賞受賞🏆King & Prince『Re: ERA』によせて
King & Prince
『Re:ERA』
たとえばマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オン』。あるいはカーティス・メイフィールドの『There's No Place Like America Today』。共に70年代を代表する名盤だが、これらの傍らに置いても何ら遜色のないコンセプトアルバムをKing & Princeがリリースした。
6人が5人になり5人が2人になった。アイドルグループとして苛烈な歴史を抱えるキンプリは、おそらく並々ならぬ覚悟で本作を制作。鮮やかに滑走し、大胆に飛び立った。
偉大なブラック・ミュージックを引き合いに出したのは音楽性ではなく、現実認識の切実さと、抑圧と癒しの関係をひたむきに踏襲する誠実な姿勢が胸に迫るからである。
争いもディスもこの音にのせて歌おう讃えあおう、と歌われる「WOW」に象徴的だが、どの曲にも、ストレスフルな現世とは別次元にある自由な場所(プロミストランドとしての惑星かもしれない)への希求が感じられる。
社会や世界の抑圧を等身大で受けとめ、できうる限りの柔らかさで打ち返すこと。癒しとは、かくも果敢な表現であることを痛感する。アプローチは、マーヴィンやカーティスのメロウな愛撫に限りなく近い。
ヒップホップは、アフリカ・バンバータの「プラネット・ロック」から始まった。黒人たちは宇宙に希望を託す理由があった。キンプリも冒頭曲「Odyssey」で宇宙を志向し、「Harajuku」という一粒の日常でアルバムを締めくくる。これが彼らの“時代への返信”(タイトルの意)である。