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偶発性と統合性の奇蹟的な融合。コーネリアス「MIND TRAIN」

コーネリアス
「MIND TRAIN」




 コーネリアスが9分もの大曲「MIND TRAIN」をシングル配信した。全3楽章とも言うべき音楽構成には、クラシックのごとき端正なうねりがある。しかも音楽史を遡るような、進化=退化が渾然一体化した揺るぎない疾走。全盛期のボアダムズやジェフ・ミルズらの威風堂々ぶりを想起させつつ、全く新しい音楽を生み落としている。
 デジタルで強靭なビートの反復。そこにシャープなサウンドコラージュが施される。一分の隙もないほど漲るインストゥルメンタルが2分半ほど続き、音楽として完成しようとしている矢先、唐突に小山田圭吾の声がのる。人間のヴォイスもまたパッチワークされるものとして存在する。
 麗しいコーラスワークが演奏とマリアージュし、極上の愉悦を運ぶ。さらに、呻るギターソロがロック的なダイナミズムを喚起するが、この二度目の完遂も未遂に終わる。圧巻の手捌き。
 フェイドアウトしながら折り返し地点を迎える。ギミックをかまし一瞬、終わったかと錯覚させる。僅かな沈黙の直後、宇宙空間に降り立ったか、タイムスリップを思わせる音響効果が最終章のイントロダクションとなる。
 まるでプログレのような唐突な再開。演奏の身体感覚が瞬く間に増強され、これまでの音像全てをリミックスしたかのような猛進のまま幕。
 偶発性と統合性の奇蹟的な融合。ミュージシャンなら誰もが一度は夢見た「終わらない音楽」に、三度目の脱臼で辿り着く様が爽快な眩暈をもたらす。脳と肉体の狭間を通過・越境する快感と高揚はまさに「MIND TRAIN」。
 

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