きれいな字のひと。イデミスギノのケーキについて。

何度か来ている。イートインもしているし、ホールを買ったこともある。これまでレビューしなかったのは言葉が見つからなかったからだが、久しぶりに訪れて、やっと見つけられた。
仕事相手の事務所でスタート打ち合わせ。アメジスト、マングキャシス、メルベイユ、ポムデーブ、フレゼットを購入。すべて630円。自分がチョコ系食べないもんだから、手土産もついすべてフルーツ系にしてしまう。反省。
わたしが食べたのはメルベイユ。以前も食べてる木苺のムース。くちどけのよさはもちろん、果実、果汁の儚さに留意したテクスチュアには、無駄なデフォルメを排した抑制が備わっており、ナッツの刻み方も的確なスポンジの繊細さも相まって、一瞬の夢を見させてくれる。
特筆すべきは、細部に目を向けても、全体を眺めても、肩に力が入っていないことであり、きれいな字を見るようなすがすがしさがあることだ。ものものしい達筆ではなく、気軽に書いてるのに、瞳に涼やかな何かを残す字。毛筆ではなく、ペン。ブルーのインクの万年筆を思わせる、きれいな字をイデミ・スギノのケーキはえがいている。

(2010.3)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?