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あなたは何のために働いているの?  -ウィッティーのはなし-

はじめに


ご無沙汰しておりました。DCLお仕事体験記を続けてみます。(10年前の話です)
みなさんは、「夢」「仕事」「お金」についてそれぞれがみなさんにとってどのような意味をもつかを深く考えたことはありますか?
ウィッティーとの話は私がディズニークルーズで1年目の時に体験した話ですが、それまで私はそれぞれの、「夢」「仕事」「お金」の言葉の意味について深く深く自分自身に追求したことがありませんでした。あるようで、考えたことは当時なかったのです。
そんな話を今日はしようと思います!めちゃくちゃ長いです! 
あと、クルーのチップや仕事の中身の話とか読みたくない方もいると思います。
そんな方はこのブログはぜひスキップしてお気持ち健やかなままでいていただけたらなと思います。 とはいえ、考えて文章を作りました♪お楽しみいただけたら嬉しいです。


ユニークなダイニングシステム

まずレストランのお仕事を語るには、クルーズのレストランのシステムについて少しお話したいと思います。

ディズニークルーズは、クルーズ代金に食事代が含まれています。
オールインクルーシブなので、朝食も昼食も夕食もミッドナイトスナックだってプールサイドのアイスクリームやピザだってすべてクルーズ代金に含まれているので満腹になるまでお食事が召し上がれるのが魅力の一つでもあります。
(このうち、パロやレミーは大人だけが入れるファインダイニングとして設けられていてこちらは追加代金があります)

ディズニークルーズには、レストランのメインダイニングルーム(テーブルサービスレストラン)が3つあります。
ゲストは、3つのレストランが全て体験できるようにあらかじめテーブルの番号と時間が指定してあり、毎日同じテーブル番号の違うレストランでディナーが楽しめるように工夫されています。

たとえば、4人家族のスミスさんファミリーと4人家族のブラウンさんファミリーがいれば、8人がけのテーブルに相席4x4でテーブルをシェアすることになります。

3泊クルーズの一例ですが、
クルーズの1日目、
テーブルナンバー51番、17:45pm  at animator's palate
といった情報がスミスさん、ブラウンさん両方のファミリーに渡されます。
この2つのファミリーは決められた時間にアニメーターズパレットというレストランに行きテーブル51番で食事をとります。
そして、
クルーズの2日目、
ゲストは違うレストランに入ります。
同じテーブルナンバー51番、17:45pm at tritonsという情報のもと、決められた時間にトライトンズというレストランで食事をします。
スミスさん、ブラウンさんはまた一緒のテーブルなので、「今日はどんなことしたのー?」なんてその日の思い出を語ったりします。
3日目、
この2つのファミリーはまたテーブル51番、17:45pmにparrotcayレストランに食事にいきます。

といったようにゲストは毎日異なるレストランで異なるメニューを同じテーブル番号で楽しめるようになっています。

そしてユニークなのが、私たちダイニングチームのサーバーもゲストと一緒にレストランを3日共に移動します。
なので、1日目にアニメーターズパレットで食事を終えたゲストに、
「じゃあまた明日、同じ時間に同じテーブル番号51で、今度はトライトンズのレストランで会おうね!」
といった感じに説明です。
毎晩ディナータイムにテーブル51番に行けば馴染みのサービスチームが待っているのです。

オーダーを取る時も、
「スミスさん、昨日はこちらのドリンクをオーダーされたので、今日はこのドリンクを試してみたらいかがでしょう?」
といった風に、サーバーはもうゲストの名前も知っているし、ゲストの好みも知っています。
なのでクルーズ期間中は、同じサーバーがつくのでゲストも安心して食事ができるようなシステムになっています。

ゲストの朝食と昼食は好きな場所でとっていいことになっているので、
「私は明日の朝は、トライトンズで朝食働いてるので、もしよかったらきてねーーー」
って招待して、
朝食で会った時も、
「おはよう!!!今から島にいくねーたのしみだねーーー」
ってまるでお友達にあったように話をしたり。
ゲストも毎日同じクルーやテーブルメイトと話ができるので楽しいと思います。

ダイニングで働いているけど、ゲストのバケーションプランナーだったりもします。

たとえば、
「今日お昼を食べたら何をしようか決めてないんだよー」
とゲストから提案をもとめられたら、
「13時から映画がありますよ!
この映画はピクサーの新しい映画でしかも3Dでみるしとても大きなスクリーンだから迫力があるんですよー!
私もこの映画みて、すっごくよかったからぜひみてほしいです!」
と、レストランサービスだけに留まらず、ゲストのクルーズファンを一緒に考えるお手伝いをします。

そうして、ゲストとたくさん思い出を一緒に作って、
クルーズの最終日に、ゲストが私たちのサービスの評価をするんです。

ゲストからチップ(サービスへの対価)をいただきます。

チップ

私がディズニークルーズに乗船した当初はアシスタントレストランサーバーという職種でした。
ディズニークルーズでは必ず「レストランチーム」「ハウスキーピング」にはチップをサービス係に渡すことになっています。

日本では馴染みがない「チップ」という制度ですが、アメリカではレストランでは給料や時給制度はサービスするウェイターにはないのです。
ゲスト側からサービスの対価をもらいそれが給料になります。
例えば日本ですとレストランで食事をすると、固定給の社員、または時給制のアルバイトのサービス担当者がオーダーをとって食事を提供してくれるかと思います。
アメリカではそのようなシステムではないのです。ここ是非ご留意ください。

一応、ディズニークルーズには、
サービス係へお支払いするための「ミニマムの提案チップ」というものが存在していました。

レストランの場合(10年前の情報)は、
アシスタントサーバー3ドル
メインサーバー4ドル
ヘッドサーバー2ドル
が提案されているチップです。
(1泊1人につき。
例えば、3泊4人ファミリーだとアシスタントサーバーへは36ドルです)

上記は提案チップなのでこちらがミニマムお支払いするべき金額ではありますが、もちろんサービスの対価はゲストが決めるのでそれ以上にいただける機会はたくさんありました!
私は英語が苦手なので、なるべくノンバーバルのコミュニケーションでチップをいただく方法を考えて、折り紙を折ったりしました。
初めてみる折り紙に興奮した子供たちを見てご家族は本当に嬉しく思っていただきその対価を多くいただけて心温まることがいつもありました。


担当するテーブルは大体、4人+6人+8人がけの3つのテーブルで18人分のサービスを1st シーティング、2nd シーティングにサービスをするので、36人のゲストをディナーで担当することになるんですね♪ 
18人の食事やドリンクを一気に対応するってとっても大変。
例えば…. 10人分のシャーリーテンプルとチェリーを用意しつつ、他のテーブルのワインを開けてサービスをすること、お皿やカトラリーをセットアップすること、遠いキッチンに食事を取りにいき、かつ無事に大きなトレイを担いで自分のテーブルまで運んでくること、それは実はとっても大変なのです♪笑

→このあたりはまた別の機会にゆっくり書こうと思います♪
今は何となくクルーズの「チップ」って何だろう、なるほどーこんな感じなんだなーくらいに思っていただければと♪


ブレックファストとランチ時間

先ほどディナー時間は担当のサービスチームがサービスをし、ゲストはその担当のサービス係にチップを渡すと説明しました。

では、朝食と昼食はどうなんでしょうか?
ふふふ。実はチップはいただいてません。
少し現実的なお話をします。クルーズのチップポジションのキャスト、クルーは時給はありません。
EPCOTの三越時代は時給3ドル(300円程度)くらいあったけど、船は本当に時給は0ドルです。おどろきですよね...ふふふ。
ディナーで接するゲストの方々からいただくチップが彼らの全ての給料なのです。
(厳密にいうと2週間ごとに20ドルが会社から支払われます。2週間分で(180時間分)2000円…)

私のダイニングルーム時代の1週間のシフトはこんな感じでした。


日曜…4泊クルーズ初日(昼食、夕食)
月曜…4泊クルーズday2(朝食、昼食、夕食)
火曜…4泊クルーズday3(朝食、BBQ、夕食、ミッドナイトブッフェ)
水曜…4泊クルーズday4(朝食オフ、昼食、夕食)
木曜…3泊クルーズday1(4泊のゲストの朝食、3泊のゲストの昼食、夕食)
金曜…3泊クルーズday2(朝食、昼食、夕食)
土曜…3泊クルーズday3(朝食、ランチオフ、夕食)
日曜…4泊クルーズ初日(3泊のゲストの朝食、ランチオフ、夕食、ミッドナイトスナック)

2009 当時のシフト

朝7時から夜22時までのシフト。
これが半年間、つまり180日間ずっと連勤で1日も休みがないです。
オフと呼ぶ時間はランチオフや朝食オフなど、タイムオフの2〜3時間のみです。
これだけの時間を働いても給料としていただくものはなんとなんと、まさかのチップのみだったりするのです。

カウントダウンパーティーの様子

これには流石に日本でぬくぬく育った私は、かなりカルチャーショックがありましたが、その分サービスに対する考え方が変わります。
私の担当しているゲストに朝も昼も楽しめるクルーズの楽しみ方をディナーの時にたくさん教えよう!
朝も昼も私の働いているレストランに来てもらえればよりたくさんの時間を一緒に過ごして楽しんでもらえる、クルーズを終えても自分のリピーターのお客様にもなってくださるかもしれない!
そんなふうにディナーだけに止まらない総合的なサービスを考えて細かな工夫をサービスに盛り込むということが自然に発生する環境ではありました。
そう、辛いシフトではあるのですが、クルーズというバケーション時間をゲストともに作るということはとっても楽しい仕事でもあるのです。
それがゲストからの評価にもなり、直接チップでサービスの対価をお渡しくださる。クルーズの最終日に封筒でチップをいただけるのは本当に本当に喜びでしかなかったです。封筒にお手紙や子供たちの絵も添えられていると本当に嬉しかったです。日本人のゲストの方々からはカップラーメンも一緒にもらったりして♪ みんなクルーズ最終日はウキウキでした!
また、朝と昼に出会ったゲストが私の担当テーブルゲストでなくとも、わざわざ素敵なモーメントを私たちの家族に提供してくれてあの時はありがとうとお礼と共にチップをいただくこともありました。報われた気持ちが増えてモチベーションにつながりました!
(逆にこれだけ働いてチップがもらえなかった時は悲しみでしかないのです….笑)

アメリカでのゲスト自らが与えられたサービスに値段をつけて支払うこの「チップ」という制度、
それは目に見える「感謝の気持ち」であり、クルーズ最終日のディナータイムは毎回じわじわと喜べる時間でもあります。
ああ、頑張ってよかったあ!

ゲストから頂いたお手紙は宝物です。

しかし、タイムオフが週に2〜3回しか回ってこないシフトはかなり堪えます。
そう、
それは雨の日にしばしば痛感することになります。


なぜ働くの?

雨の日のクルーズほど辛いものはないです。
雨の具合がひどいと、ゲストも船にずっと滞在されます。
そうなると何が起こるか…
ランチがオフであってもオフはカットされてしまい、仕事にでなくてはいけないのです。
そしてカットされたオフがどこかで振替えてもらえなくてびっくり!
それが船ライフです。
そして雨の日はレストランもめちゃくちゃ忙しく、クローズの時間も延びてしまう。
そうすると自分の夕食を食べる時間、睡眠時間、入浴時間すべてが狂い、疲労に悩まされる、、、それが雨季です。。。

これは私がもうあんまりにも疲れ果ててた時に、
タイ人のマネージャーのウィッティーが笑顔で話してくれたことです。

彼は疲れてる私を心配して、尋ねました。

ウィッティー: 「アイコ、大丈夫?」

私は疲労がマックスまできていて、どちらかというと不機嫌だったので、

アイコ:「はっきりいって、これはおかしいと思います。
私たちこんなにこんなに一生懸命働いていてもこの時間はお金もらえないし振替もない。。。どうして?」

と問い詰めました。

ウィッティーはまた笑顔で、

「うん。そうだね。この今ランチで働いてるお金ももらえたら本当にみんなのためにもいいよね!
でも、アイコ、みてよ!
ゲストは雨が降ってせっかくのクルーズなのに残念な顔してレストランに入ってきたのに、みんなアイコたちが一生懸命がんばっているからみんな満足してレストランを出ていってるでしょう。
だからそれをみて僕達もハッピーになれるじゃない!それでいいじゃない!」

というのです。
それでも納得いかない…
若かった私は、尋ねてみます。

「ねえ、あなたはなんでそんなに笑顔でいれるの?」

彼は本当にいつも笑顔でいるからそこは本当に関心していました。
ウィッティーは手品がとっても上手でゲストもそんな彼の笑顔が好きでいつも彼とゲストの間には穏やかな時間が流れていることが伝わっていました。

すると、彼は、驚くことを話したのです。

「アイコ、それはね、
家族の顔を思い浮かべてるから、いつも笑顔になるんだよ。」

っていったんです。


ウィッティー:
「もしこのゲストの中に自分の家族がいたら?っていつも思うんだ。
もし僕が悲しそうな顔していたら家族は悲しむでしょう?
それじゃあ僕の家族がみたい僕の顔ってどんな顔だろう。
やっぱりいつもニコニコしてる笑顔の僕をみたいだろうなぁ。
僕は家族のためにここで働いているんだから、いつも笑顔でいなくちゃなあって思うんだよ。
ここで得るお金は確かにディナーのチップだけだけど、
それは大切な私の離れて暮らしている家族にすべてささげるんだから。
僕が、笑顔でいることで稼いだお金を家族の元に届けたいでしょう
アイコはプンプンで今みたいに不機嫌な顔して稼いだお金を家族にどうぞってあげたいの? ねー違うでしょーう? ふふふ」

と、とってもナチュラルに話をされたのです。

私、
「あなたは家族のために働いているのね?」

と繰り返して聞いてみたんです。

すると彼は私にこう私に質問します…

ウィッティー:
「そうだよ。
ここで働いて得たお金はすべて私の妻のために、家族のためにだよ。
ところで、アイコは何のために働いているの?

え、私???

アイコ:「えっ何のためって? 私はここで働くことが夢だったから…
ここで働いたお金を、何のために使うかは考えたことがなかった。。。」


ウィッティー:「そうかぁ。じゃあそこから見つけれたらいいねぇ。
もっと見方が変わって仕事が楽しくなってくるよ。お金というものは目標がなければいけない。
アイコはやりたい仕事ができたことが夢で、それが叶ったことはとても良いことだよ。きっとアイコの国では仕事の選択肢が沢山あるんだね!
でもその夢の先の、そのお金はどうするの?
アイコはゲストに夢を与えて、お金をもらってるんだ。
そのお金はアイコの目標のある夢に使わないと!
それはまたしっかり考えておかなくちゃ。」

そうかぁ。
確かに私はここ、ディズニークルーズで働くことが大きな夢だったけど、そこで得たお金を具体的にどうしてみたい、何かを買いたいというゴールがなかった。

貯金しよう。って決めても、でもその貯金をどう使いたいか。が決まってない、そんな人は日本には沢山いる。
何となく社会に出て、何となくお金を稼いで何となく日々を過ごしてしまっているのではないか。
「もしものための貯金」「何かあったときのための貯金」というものほど、具体性がないものはない。
「どんな時、いつ、何のためにどのくらいのお金を使うから仕事をしている」というプランが私にはなかったのです。
ここで働くという魅力だけを日々追っているだけだったのです。

船という場所は特殊です。
みんなそれぞれの国に家族があり、家族のために船に乗り、半年お金を貯めてその稼ぎを家に送る。だからこそ、みんな必死に働きます。

お金に対するゴールがみんなしっかりある。
だから、
「家を建てたい」「子供に学校に行かせたい」という強い目標があって、その目標を叶えるためにお金が存在していて、
そのお金を得るための考え方は、
どんなことをすれば最高のサービスが提供でき、そのサービスの対価をゲストから評価されるだろうか。
どんな知識を身につければワインやドリンクのセールスを売り上げることができて、またそのサービスにも満足いただけるだろうか。
という軸で動いていて、サービスを考えているんだなと学びました。

ディズニークルーズで「チップ(サービスに対する価値、対価)」で真剣に考えながら稼ぐという体験がなければ、私はサービスというものが何なのかを理解できなかったと思っています。

のちに私は日本から家族をディズニークルーズ旅行に呼び、そしてWDWでは毎日DVCリゾートに連れて行きました。
家族を旅行に連れて行く!というお金の目標ができた時は、やはり自分の提供するサービスやドリンクの勉強への熱意が変わったと感じ、仕事自体が楽しく思えました。

とてもとても大事なこの雨の日の出来事は何年経っても蘇る瞬間がやってきます。

大好きな日本のゲストに

そんな私もディズニークルーズで2年目に入った頃、そろそろ日本に戻り日本で仕事をしたいと考えるようになりました。
ちょうどそろそろ帰国するといったタイミングで、東北の大震災がありました。
このことで日本中で仕事が見つからない就職難の時期と差し掛かり、またクルーズに戻り仕事を船で続けることを選ばざるを得ませんでした。
どこかで日本には仕事の選択肢が沢山ある豊かな国だから大丈夫!という生ぬるい甘い考えがあったようです。
この時初めて、自分の国ではなく他の国で仕事をしにきている同僚たちの気持ちを思い知りました。
船の中では日本の震災のことは大きく騒がれていて、ゲストもJAPANのネームタグのついた私を見つけては心配して声をかけるような状況でした。
そんな中、レストランがオープンする前のチームミーティング時に、マネージャーのマリオがこう話しました。

マリオ:「みんな知ってる?今日本が大きな震災があってテレビでもみたと思うけれど、家が流されてしまったり大きなことになっている。僕達はいつも日本から来るゲストと楽しい時間を過ごしているよね。それに日本はアイコの国だ。今クルーオフィスの前で日本の震災募金を集めてる。みんなもぜひアイコの国、大好きな日本人のゲストの国を助けてほしいと思う。」

とダイニングルームのみんなに語りました。

私はとっても嬉しかった。
みんなの稼ぐお金はこんなハードなスケジュールで一生懸命工夫をこらして笑顔でサービスしたチップで成り立っているのに。
そのお金は彼らの家族に届けられる大切な大切なお金のはずなのに、ダイニングルームのみんなが、日々私に
「アイコ、日本に募金したよ!」
と声をかけてくれて、よりお金というものの神聖さ、尊さを感じたりしたものです。

募金と共にDCLからオリエンタルランド社に送ったエール

それから私はクルーズの仕事の次の契約もサインすることになりました。
この震災がなければ私はこの時船を降りていて、ディズニードリーム号でのトレーニング係であったり、続けてディズニーファンタジー号のオープニングクルーとして乗船することも、クルーズ最高峰のレストランのレミーで仕事をすることもなかったんだと今になっては思います。

レミーへ


この出来事があり、日本で仕事が今後見つからないかもしれないと思った私は、船でスキルを身につけて船での仕事を終えたいと考えるようになりました。そうすればきっと日本で「仕事」が見つかりやすくなるかもしれない!自分の国に帰りたい!
(本当、アリエルの気分です。海ではなく陸に帰りたい!!笑)

そこから私は今まで「ファミリー向け」のサービスを研究してきたけれども、「大人向け」のサービスも身につけることができればきっと仕事の幅が広がると思い、また新しい船の立ち上げをするという経験もきっとそこに繋がっていくだろうと考えて、新しい「仕事」に目を向け始めました。
それが「Palo(パロ)」です。
パロのサービスチームの試験を受けよう!そう思い、毎日ワインの勉強、紅茶の勉強、調味料の勉強などをしていました。
ワインの勉強はパロのサービスチームのみんなにゲストが飲み干さなかったボトルワインの余りを試飲させてもらい、様々な品種を勉強することができ、またパロのチームがどのようにゲストにワインを紹介しているのかを共有してくれたので、私はそれをまたメインダイニングルームで生かすことができ、ビバレッジセールスでの功績で船で一番を取ることも出来ました。
顧客満足度もドリンクセールスも全てにおいてきっと一番をとれば、パロで働けるかもしれないと単純に勉強しまくっていた時期がありました。

そして、いざパロのサービスチームの試験(本当に紙のテストがあるよ)を受けるために試験日の話し合いをするために、パロのマネージャーに会いに行きました。
しかし、オフィスにはパロのマネージャーピエトロが不在で、同じ階にある別のレストラン、Remy(レミー)のマネージャーのジャックがそこにいました。
ジャックが、何しにきたのかを聞いてきたので、パロの試験を受けるための話をしにピエトロに会いにきたといいました。
すると、ジャックがこういいました。

「君の名前は知ってるよ。
ゲストがね、アイコのことをよく話に出していたんだ。
それに君は顧客満足度もいつも100%だし、ビバレッジセールスも好成績をとっている。
そして君は日本人だ。実は、レミーには日本からのゲストが多くいて、でも英語が通じなくて私たちの気持ちやシェフの思いがしっかり伝わっているかがいつも心配なんだ。
どうだい?レミーで働いてみないかい?でも誰にも言わないでね!僕は滅多にこんなオファーを出さないんだ。みんなには言わないでほしいんだ。」

というので、私は冗談だと思っていました。
失礼にも「うん!考えてみるね!」って軽い返事をしたことをよく覚えています。
その後、いつもワインのことを教えてくれているワインキーパーのジョージーに、誰にも言わないでねと言われたのにも関わらずすぐ相談をしました。

アイコ:「あのね、ジョージー、誰にも言わないでねって言われたんだけど、レミーのジャックが私をレミーのチームに招きたいっていってくれたんだ。どう思う?
私イタリア語は勉強したんだけど、フランス語は全然わからないけどどうなのかな?」
ジョージー:「アイコ、僕が君ならすぐYESだよ!
君はレミーのことを知らなすぎる!
レミーはこの大きな海の中で最も優れたレストランで、シェフも世界で名が知られた人たちにより手掛けられている。ワインだってここでしか手に入らないすごいヴィンテージのワインが揃っているんだよ!まさかの船にだよ!きっと日本に帰ってからもこの経験は役に立つよ!
何よりお金も稼げて、キャスタウェイでBBQをもう働かなくてもいいんだよ!」

とジョージーがいうので、
私は「キャスタウェイでBBQ働かなくてもいいよ」にかなり惹かれてレミーチームに行くことにしました。そんなことで決めてしまって大変失礼だったと今は思っています.…(BBQは暑くて炭まみれになるため苦手シフトでした笑)

しかし、
そこで、私はレミーのサービスチームと自分のスキルの大きな差にショックを受けることになります。
この人たちって本物なんだ!すごい!!!!

っという、レミーに昇格後の話はまた次回にお話ししましょう!


おわりに

「夢」「仕事」「お金」それぞれは繋がっているようで独立しています。
でも全てに繋がりがあってこそ、自分自身が充実した日々を過ごす道標になったりするということを体感しました。
私は日本帰国後は、某ライオンマークの外資ホテルで働いたり、旅行関係の仕事でアジア担当の新人教育部にいたり、はたまた某果物マークでサポートチームのマネージャーをしたりといろんな体験をしましたが、その後転職をしたフードデリバリーの会社でカスタマーサポートチームの立ち上げマネージャーとして入社するも頑張りすぎたため体調を崩し3ヶ月で辞めたという経験もあります。
その辞めたタイミングがコロナ禍でした。私は自分のフワッとした野望と新しいチャレンジにと転職をし、「仕事」や「夢」寄りのことばかりを頭に置いていたため続かず、コロナで突然「仕事」が見つからない事態に陥り、また「お金」と向き合うことになりました。
そもそもなぜ私は新しいチャレンジがしたかったのだろう。
あのまま安定した果物マークの会社にい続ければよかったのに、自分のチームの子たちも大好きだったのにどうして離れてしまったのだろうか。
何のために「お金」を稼ぎ、ゴールは何なんだろうか。
その問答を続けてきました。
静かなコロナ禍の無職時代に私は自分がどんな生活をしたいのかを考えるようになりました。
そこで新しいSNSのクラブハウスが出てきて、そのクラブハウスの Roomでディズニーのことを日々話すようになり、ああ私のやりたいことって何だろうって考えるきっかけにもなりました。

浮かんだのは、
・世界中のディズニーパークを正直に大好きでいたい
・このクルーズの仕事の経験(サービスってこういうことなんだよ!)をたくさんの人に共有したい
・自分の持ち家が欲しい、犬が飼いたい
といった「夢」でした。

そっか、この「夢」に見合う、「お金」があればいいからこのライフスタイルに合う「仕事」を探そう!
そして今、とても満足のいく環境で「仕事」をし、マンションをやっと購入することができました。お休みもいただけて、海外のパークにも何度も行くことができています。

これもあの時、ウィッティーが親身に私を思って話しかけてくださったからできていることなのだと今となっては感じています。 
こんな素敵な人たちに出会えたことは、「お金」よりも価値のある温かい私の財産なのです。
ディズニークルーズは本当に本当にハードな仕事ですが、人との出会いで人生が豊かになった素晴らしい体験だと感じています。

おしまい

サポートをお考えいただきありがとうございます。 これからも楽しい記事をかくためのモチベーションとして大切にお気持ちを受け取らせていただきます。