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長男の話14【自閉症ママの監獄生活】


切迫早産の入院はほとんど監獄のようだった。
朝早くに起こされ、検査や注射をされる毎日。
お風呂も3日に1回入れればいい方で
入る時に子宮の収縮を抑えるためのマグセントのいう点滴の抜き差しがある。


傷口が腫れて痛いし、
副作用で呼吸が苦しい。

トイレに行く時もガラガラと点滴の薬を連れていかなければいけないし、
何をするにも監視されているような気分だ。


たまに行かせてもらえるコンビニで少しは気分転換ができたが、
どこへ行くのも車椅子。
看護師さんたちに何度も頼むのも申し訳ないので本当に少ししか行くことはなく、
朝昼晩の食事が唯一の楽しみだった。


私は元々ドラマも映画も現実主義。
宇宙人が出てくるとか魔法が使えるとか、あまりに非現実的すぎるものは好きじゃない。

入院生活を監獄と重ね
「監獄のお姫様」という刑務所のドラマとか、
囚人の食事をネットで調べたりとか、
当時の生活とどことなくリンクするものばかり好んで見るようにしていた

プレ幼稚園のママたちがたまに「体調どう?」と心配のLINEをくれた。
「こんなときしか休めないんだから
ゆっくり休んでね」



確かに
子育てに必死だった私に与えられた
久々の休息でもあるはずだった。 
ベッドの上に寝転がって
何もしなくていいのだから。


入院生活を満喫しよう。


Netflixでドラマを見たり、
友達とゆっくりLINEをしたり、
気まぐれにLINEスタンプとかまで作ってみたり、
いろんな時間つぶしで気を紛らわそうとしてみたものの、
頭の中は突如会えなくなっためーくんのことばかり。


ご飯食べたかな。


いきなりママがいなくなったこと、
どう思っているんだろう?



当時病院はコロナの流行がピークで、
面会すらも許されなかった。


息子が恋しすぎる私に対し、
めーくんの反応はある意味想像通りだった。

テレビ電話をしたところで
めーくんは全くの無反応。

1度だけ「ママ…」と言ったきり
何度電話をしても
画面越しの私には一切興味がなく、ママのことなどもうすっかり忘れてしまったようだった。


四六時中一緒にいても
このザマだ。


少しづつ積み上げてきたはずの信頼関係など
めーくんにとっては元々何も無かったと同じようなものなのだ。

寂しくて泣かれるのもツライのかもしれないが、
この時はなんともいえないむなしさに襲われた。


更にストレスだったのは
私の実母と義母が数週間交代でめーくんをみること。

夫は仕事があるためまずは1週間と少し
私の母が来ることになった。


「めーくんほんとにいい子でひとりでずーっと遊んでるの」


そんなふうに母は言った。


違う。

違うよ。



めーくんはひとりで遊びたいわけじゃないのだ。

本当はとっても寂しがり屋で
毎日何かしら遊びの刺激を求めてる。


私が毎日粘土をしたり、
ハサミを教えたり、
一緒にホットケーキをつくったり
めーくんに色々教えようとしたことが

全てリセットされてしまう。



母のやる事なす事
全てが気に食わなかった。


私の気持ちを全く分かってこなかった母に
めーくんの気持ちがわかるわけが無い。


私は母のやること全てに口出しをしていた。

「食べ物はこういうのは好きじゃない」
「もっと遊んであげて!」
「もっと話しかけて!!!!!」



そのうち母も怒り出し、LINEでも電話でも大喧嘩となった。


「結局何をしても気に入らないんでしょう?
私のことが嫌いな娘なんだから」



母とは昔から喧嘩ばかり。


めーくんの産後の里帰りの時も同じく
言い争いの絶えない日々になった。

子供が産まれるという大きな幸せを前にして
大の大人が傷つけ合う。

私も母も、実の子供とうまくやれない。


毎日泣いてばかりだったし
切迫早産の兆候は点滴でもよくならず、
NICUのあるもっと大きな病院に搬送されることになった。


帝王切開になった場合にサインなどが必要なため、夫が救急車に同乗した。



私「めーくんどう?」



夫「全然大丈夫だよ!いつもと何も変わらず元気に遊んでるよ」


私「そっか」



やっぱり
めーくんは私を忘れている。



あたらしい病院では
家族と通話ができる共有スペースがある。

画面越しにママに会いたくて
泣いていたり
早く帰ってきてと言っているのが聞こえてきた。


普通はこういうものだよね。



テレビ電話をすることも無くなり、
ぐにゃぐにゃと動き続ける2人目の命と
ベッドに寝転がる。
そしてまた朝を迎える。





妊娠35週目にさしかかろうとしたある日
夫から電話がかかってきた。



夫「めーくん昨日泣いてたよ。」


私「え?」



夫「声も出さずにしくしくしくしく。
見たことの無い泣き方だった。
やっぱりママがいなくてさみしいんだ」



このときめーくんが本当に私を思い出し
泣いていたのかは分からない。


それでも
素直に嬉しかった。









  









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