aicca

ネガティブで脳天気な日常の記録です。

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最近の記事

大人になっても怖い

8月の中旬、白昼夢を見た。 たまっていた洗い物を済ませ、手を拭いている時だった。 部屋の奥、背後から天狗が駆け抜けていくのが見えて、 ああ、追いかけて来たんだな、と思った。 その晩、幻聴がした。 夫と娘が寝室に上がった後、 トイレでダラダラと携帯を見ていると、 突然、耳元で大勢のお坊さんが一斉にお経を読み始めたような音を聞いた。 無論、この二つの出来事は医学や科学で説明できると思ってる。 白昼夢は無意識の暴走で、 お経のような音はダクトを通って聞こえた外の音だろう。 し

    • 母は、料理上手だった。 食卓に並ぶのは和食を中心とした一般的な日本の家庭料理。 なぜ、わざわざ「一般的な日本の家庭料理」と書くのかというと、 私の母は結婚のため、22歳で日本にやってきた生粋のブラジル人だったからだ。 ジーパンにTシャツ、金髪に染め上げたカーリーヘアの母。 見た目からは想像できないが、「さしすせそ」を完璧に使いこなし、手早く料理をする。 夕食であれば大体30分で4~5品は作ってくれていた。 穴子も煮付けるし、蒸籠で茶わん蒸しも蒸す。 お願いすればなんだって作

      • 1万本の紫陽花に包まれる 矢田寺

        「矢田寺の紫陽花、人が来ないように全部切られてしまったんですって。」 お義母さんからそう聞いたのは、2020年の6月初め頃だった。 2020年といえば、新型コロナウィルスが突如としてあらわれ、瞬く間に世界中に広がった年。 誰もがその感染力の強さと症状の重さに恐れを抱き、やり場のない閉塞感に苛まれていた。 諸外国が続々とロックダウンを行う中、日本では、4月に初めての緊急事態宣言が出され、5月末に解除されたが、6月になっても外出自粛を続ける人は少なくなかった。 「以前お聞き

        • 私を置く

          春の日差しが安定しはじめた5月5日、天平祭りに行ってきた。 娘とよく行く平城宮跡では、季節ごとにお祭りが開催されていて、ほとんどの場合、天平行列が行われる。 華やかな天平衣裳を身に纏った人々が朱雀門までまっすぐのびる道を行列をし、遷都の再現などをするのだ。 毎回、見応えがあるイベントなのだが、私はとりわけ女性の衣装を眺めるのが好きだ。 普段見かける着物とは異なり、唐文化の影響を色濃く受けているそれは、春の喜びで満ち満ちて、あちらこちら、色とりどりに咲きみだれている花のようと言

          今更、死ぬのは怖くない

          「今更、死ぬのは怖くないからね」 10数年ぶりにお会いした友人のお母様から放たれた、思いがけない言葉に瞳孔が開くのを感じた。 ご家族の介護を経た後、ご自身の体調を崩されたとお聞きしている間の一言だった。 私は息をのんでしまい、その黒く澄んだ瞳から目を離すことが出来なかった。 さらに覗き込んでしまおうものなら引き摺り込まれそうなほど透きとおっていた。 30余年生きてきたが、虚勢でもハッタリでもない、これほどまでに真っ直ぐで、芯のある目を見たことはなかった。 本当のことはいつも私

          今更、死ぬのは怖くない

          無理するのはよくない

          長期間の頭痛とゴールデンウィークが重なってしまって、前回の投稿からほぼ2週間が経とうとしている。密かに掲げていた当初の目標は、2−3日に1つ、どんな形であれ書くというものだったので、この2週間、ずっと後ろめたい気持ちがあった。自分で掲げた目標を達成できないというのは、自分で自分に「ダメなやつ」の烙印を押すようで、なかなかに辛いものがある。だが、今回はその焼け付いた印を深く深く皮膚に食い込ませることはしなくてもいいのかもしれないとも思っている。というのも、ずっと頭の片隅に書きた

          無理するのはよくない

          与えられた身体、歩んできた身体

          体は使うと衰えるのか。 そんな当たり前のことに気づいたのは、一年前の春。 産院から自宅へ帰り、シャワーを浴びていた時であった。 体はすでに洗い終わっており、鏡は湯気で曇っていたのだが、ふと大仕事を終えた自分の体がどうなっているのか確かめたくて、好奇心でその表面を拭った。 子の成長に合わせて伸びた腹。 不安定に広がりきった骨盤に、乳腺の発達で不気味に四角く強張っている胸。 妊娠中はお腹にばかり目がいって気づかなかったが、腕や腿にもしっかりと肉がついていた。 つわりが開けた後、常

          与えられた身体、歩んできた身体

          日記

          今朝の目覚めは最悪であった。 鼻が詰まって耳の奥までどんより重く、 喉は呼吸をするたびに空気の冷たさを実感する。 昨日の晩まで もう治ると思っていた風邪だが、 寝起きの知覚を占領するほど悪くなっていてうんざりする。 そんな中、愛猫が大きな声で鳴いている。 昨晩、眠たすぎてゲージに入れることなく寝てしまったので、 きっと構ってくれと呼びにきたのだと思い、 まだ寝ていたい気持ちを圧し殺しつつ、 むくりと起き上がって、あたりを見渡した。 いつもならベットの左側か足元の辺りから呼んで

          母の無意識

          先日1歳になった私の娘。 今日はその娘の予防接種の日であった。 病院に行く日はいつも少し緊張する。 なぜかというと、優秀な方々に囲まれた病院では、 私の浅はかさが露呈してしまうからだ。 例えば服選び。 事前に脱ぎ着しやすい服で、と言われていたし、 自分でも脱ぎ着しやすいと思って選んだのだけど、 袖を通した後に脇でボタンを留めるタイプの服は不適切だった。 普段はTシャツのように、 空いた襟からスポンと顔を出すロンパースをよく着せているのだが、 頭が引っかかって手間取ることが多

          母の無意識