『DOGMAN』 第7話 ドロボウ
「早速キミ、午後の部が始まるだろ?接客やってみてくれよ。今日は外で呼びかけする日なんだ。」
早速ピンチだ。
外に出たらオオカミに戻ってしまう。
どうしよう。
俺は、市民センターの出口まで来て、立ち止まってしまった。
「どうした?」
「いや、俺、太陽光に当たれないんです。」
「日の光に弱いのか?じゃあ俺のサングラス貸してやるよ。ほれ。これでサングラスをかけたオオカミ男の出来上がりだ。いいマスコットじゃねえか。」
俺はサングラスをかけて市民センターを出た。
えぇい、ままよー。
あれ?オオカミ男のままだ。
どうやら太陽光を裸眼で見なければ大丈夫らしい。
「あぁ!オオカミ男だ!ママー!」
「ちょっとゆうくん!お家に帰るのよ。」
「いやだ!あのプラネタリウム見に行きたいー!」
男の子が駆け寄ってきて、俺に抱きついてきた!
俺を本気でプラネタリウムのマスコットだと思い込んでいるらしい。
「えぇい!近づくんじゃねぇ!」
俺はまとわりついてくる男の子を振り払った。
「あ!このマスコット営業の手抜きしてる!」
なんというませた子供だ。
「今日はよくやってくれた。明日から頼むよ。」
係員のおじさんに、アルバイト採用として認められ、意気揚々とまぁちゃん家に帰ることにした。
「ただいまー。」
「誰だ!お前は!不法侵入だぞ!警察を呼ぶぞ!」
うわっ!まぁちゃん家の父親がすごい剣幕で俺を追い立ててくる!
とりあえず逃げろ!
なんだ?あぁ、そうか。俺は今人間の体だったな。
俺はサングラスを外すと、オオカミの姿で、犬小屋に戻った。
夜中。
ふと車の音で起きた。
黒い車がまぁちゃんの家の隣で止まった。
こんな夜中に何の用か・・・。
「おい、デビ、人がいないか確認してこい。」
「わかったよ、ちょっと待ってて。」
なにやら人の話し声が聞こえる。
背の低い小太りの黒いハットに黒いスーツのサングラスをかけた男が、ズカズカと玄関まで歩いている。
宅急便かな?しかし、こんな夜遅くに・・・。
「ビル、とりあえず玄関まではいないよ。」
「よし。」
今度は、背の低いのと一緒に、ひょろ長い背の高い、黒いハットに黒いスーツのサングラスをかけた男が出てきた。
なんだ?あのペアルックは。
なにやら、玄関の鍵穴をピンでほじくっている。
泥棒か。しょうがないな。
「ぎゃあっ!!」
ゆっくり近づいて、鍵穴をほじくっているひょろ長いやつのケツを思いっきりかじってやった。
「うわぁ!こんなでかい番犬がいる!おい、デビ!撤退だ!」
「へい!」
ザコめ。オオカミをなめるなよ。
「ちょっと!なんの音?悲鳴が聞こえたけど!」
まぁちゃんママが玄関の電気をつけてやってきた。
続けてまぁちゃんパパがやってきた。
「あ!黒い車が走っていくぞ。」
「見て!」
そこには、鍵穴に刺さったピンがそのままにされていた。
「リャン!泥棒からうちを守ってくれたのね!あなたはうちの守り神ね!ありがとう!」
まぁちゃんママに抱きつかれてしまった。
へへ。こんなの朝飯前だ。