『DOGMAN』 第2話 犬扱い
・・・もう昼だ。ずっと寝ていたのか。
起き上がろうとすると、体がやけに軽い。二日酔いのはずなのに。
そうか。満月の夜が過ぎたから、体がオオカミに戻ったんだ。
「どうしたの?まぁちゃん。あら、立派な犬ね。」
「ねぇ、ママ。このワンちゃん、こんなところにいちゃ、かわいそうだよぉ。」
「どうしたのかしらね。」
「ねぇ、飼っちゃダメ?」
「パパに聞いてみないとわからないわ。」
・・・体が言うことを聞かない。
起き上がろうとしても、すぐにゴミ袋の山に倒れこんでしまう。
二日酔いとは噂に聞いていたが、なるほどこんなになってしまうものなのか。
仕方ない、しばらくここでもう少し休んで・・・ん?
次の瞬間、リャンの体がふっと宙に浮いたような気がした。いや、誰かに持ち上げられているのだ。
「こいつかー。結構でかいけど、弱ってるみたい。まぁちゃん、このワン公飼いたいのか?家で少し様子を見てみるか。」
「パパ、ありがとう!」
なんだ?知らぬ間に話が勝手に進められている。
俺は酔ってゴミ袋の上で寝ているだけだ。確かに弱っているが、人に介護されるほど落ちぶれちゃいない。勝手に人の体を触らないでほしい。
しかし、そんなリャンの思いも脆く崩れ去り、体を抱えられ車へと担ぎ込まれた。
俺はどこへいくんだろう・・・?
あまり深刻に考えずに、と言うより、深く考えられる余裕がないので、とりあえず寝ることにした。
しばらく寝ていると、
「リャン!ついたよ!」
俺の名前を呼ぶ奴がいる・・・。
まだ眠い。寝る。ほっといてくれ。頭も重いし。
・・・と言っているのに、こいつらは。
リャンは、男に、車から抱きかかえられて、家へと連れて行かれた。
「重いなー。しかし無抵抗だな。よっぽど元気がないみたいだ。」
・・・二日酔いなだけだ。
「リャン!家に着いたよ!」
「リャン?このワン公の名前を、まぁちゃんがつけたの?なんで、リャンなの?」
「中国のお友達に、リャンピンて男の子がいて、なんとなく雰囲気が似てたから。」
「ふーん。」
見事に俺の名前と一致している。何かの縁だろうか?
しかし、このオオカミのトップ、オオカミ男のリャンを介抱してくれるとは、まぁまぁ出来た人間どもだな。しかもこの家もなかなか広くて、涼しくて、悪くない。
・・・俺のことをワン公と呼ぶのが気になるが。
「しばらくここで休ませて、様子を見てみるか。」
なかなか快適なので、俺はまたすぐに眠りについてしまった。
気がつくと夕方。
二日酔いも抜け、俺は気分良く目を覚ました。まだちょっと足がふらつくが。
こんなところにいつまでも厄介になっているわけには行かない。お礼だけ言って、ここを出よう。
そう思って、玄関の方まで歩いていくと、まぁちゃんと呼ばれてた女の子に出くわした。
「リャン!あなたのお家よ!」
は?何をこの子は言っている?あなたのお家?なんのことやら。
俺は、この家を出る。厄介をかけて迷惑をかけた。恩に着る。
「ワウ、ワウ、・・・ワン。」
「あ!リャンが喋った!元気になったみたい!喜んでるの?今紐をつけてあげるからね。」
俺は家を出ると言っている。紐をつけている場合ではない。
「ワン。・・・ワン。」
「あら、そう。喜んでるのね!いまお家に連れてってあげるからね。」
そう言われると、庭に置いてある小さな家の形をした、小屋にくくりつけられた。
これは・・・本で見たことがあるぞ。
・・・犬小屋というやつだ!!
おい!ちょっと待て!
俺は犬じゃねぇ!
「ワン!ワン!ワン!」
「リャンが元気になった!嬉しい!」