『DOGMAN』 第8話 夢
妙な夢を見た。
そこは、岩肌をあらわにした岩砂漠。
巨大な岩山に囲まれた小さな集落で、お祭り騒ぎが行われていた。
小さな集落は、白い布のテントが寄り添い、そのテントは黄色い砂吹雪きから中に住む人を必死に守っていた。
普段は静閑な集落だが、その日はわいわいと賑やかな一日で、活気に満ちていた。
バグパイプの音楽が、大衆をより活気づけ、人々の喧騒にかき消されていった。
大衆の喧噪の中には、笑い声が紛れ、紙吹雪を撒き散らす陽気な曲芸師も見える。
「始まるよ!始まるよぉ!」
赤いメガホンで、大衆に呼びかける新聞配達員。
カーン!
鋭い金属音が喧噪を裂くように鳴り響いた。
ここは、格闘技場。白いマットの敷かれた、4つの木でできたコーナーに、縦に四本並んだ太い麻糸で囲っただけのリングで、鍛え込まれた引き締まった体の女性と、マーヴェルコミックに出てくるハルクのような上半身裸の巨大な男がジリジリとお互いを睨み合っている。
よくよく見ると、その女性は10kgはありそうな、ゴツい義足のようなものを右足の根元から装着している。
巨大な男が、突然女に襲いかかる!
丸太のような両腕を、頭上から女の頭めがけて振り下ろしてきた!
女は、その10キロはありそうな重そうな義足を自分の足のように使いこなし、その攻撃をひらりとかわし、そのかわした反動と、義足の重みを使い、回し蹴りを繰り広げ、その鉛のような義足が男の後頭部を直撃した!
大男は無残に倒れ込み、意識が朦朧としている様子。
「ワン!ツー!スリー!!」
審判がカウントした。その直後、カン!カン!カーン!とゴングが鳴った!
どうやら、攻撃を受け、3秒以内に立ち上がれなかったら、残ったもう一人の方が勝者になる、というルールらしい。
「アキ・デストロイヤーの勝利!」
どうやら、この試合は準決勝のようだ。
ついに決勝。そのリングに上がった男は・・・
・・・ん?俺だ!
ボロボロのシャツに、戦闘服のようなズボンをはいた、顔がオオカミの男がリングに上がった。
しかし今は日中。空を見上げると、なるほど確かに日中の空に浮かぶ満月がうっすらと姿を見せていた。
リング場にいるのは、俺と、義足の女格闘家。
「お互い見合って!」
カーン!!
「始め!!」
バシャーッ!
顔に何か冷たいものが降りかかってきた!
「リャン、ごめーん。」
そこには、花に水をあげているホースを持ったまぁちゃん。
俺は今、立派な家の庭の小さな犬小屋で、花に水をあげているまぁちゃんから誤って水をかけられているところだった。
そう。夢はここまで。
すぐにまぁちゃんによって現実に引き戻された。