第1話 赤いワンピース
私の心はいつも奏を追いかけている。
追いつきたい、隣に並びたい、振り向いて欲しい、私を見て欲しい。
あの子の瞳に私が映ったことなんて、もう久しく無いけれど。
奏と出会ったのは、もうだいぶ前のことだ。
小学校入学前の、五歳くらいのちいさい時。
親に連れられて、美術館で開かれた書道の展覧会に行った時だった。
文字もまだたいして読めない私は、何が書かれているのかも分からないまま、絵を観るような感覚で、壁一面に大小様々に書かれた文字達を眺めていた。
難しい漢字や言葉が読めなくても、