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星の王子さま 9章

 バラは「そうなのよ、わたしはあなたを愛しているわ。」
と王子に言ったのに、別れるしかなかった。向き合って一緒に生きてゆくことが難しいのでした。愛し合った果実、たしかめた思いの深さだけでは超えられない深みの前で呼び合うふたり。そこには、人の内側を知る事の悩みがあった。
            ★ ★ ★
 きっと、野鳥の渡りのおかげで星から移動したのではと、わたしは思いました。旅立ちの朝に、王子は自分の星をいつもより丁寧にきれいにしました。活火山は丁寧に煤払いをしました。王子は活火山を二つ持っていました。火山は暖めたり朝の食事作りに便利でした。
王子は死火山も1個、持っていました。でも、王子はこんな風に言っていたのでした。「誰も知らないんだよ。」死火山も同じように煤払いしていたことを。もしもちゃんと煤払いをしていれば、爆発しないで、火山はゆっくりと規則的に燃えるのです。

 これははっきりしてる事なのだけれど、地球にはすごい数の煤払いしなければならない小さな火山がある。それが私たちの悩みの種なんです。 王子は、ちょっと心配しながら、バオバブの新芽を抜いていたのでした。王子はもう二度とこの星に戻らないと思いました。でも、手慣れたこういう仕事が王子の身支度となり、この朝の支度はとてもこころよいものでした。そして、花に最後の水をやり、避難の覆いをかけたら、王子は泣き出したい自分に気づいたのでした。
              
-さようなら 王子は花に言いました。
でも、花は何も言いませんでした。
-さようなら 
もう一度言うと 花は、咳払いをしたのでした。風邪を引いたわけではありません。
-わたしがバカでした。花は言いました。
-ごめんなさいね…お幸せに。

 王子は、花がとがめないので驚いたのでした。王子は風除けの覆いをかけることもそのままで、唖然とした。このやさしい静けさの意味も分からなかった。


-そうなのよ、わたしはあなたを愛しているわ。 
花は王子に言った。
-あなたはちっとも分からなかったでしょ。わたしのせいよ。でも、そんなこと、大したことじゃないわ。あなたも、わたしと同じくらいバカだったのよ。幸せになってね。風除けはそのままにしてね。もういらないから。
-でも、風が吹いたら...
-それほど風邪はひどくないですし... 新鮮な夜風で元気になるでしょう。わたしは花ですから。
-でも、獣だって...
-もしも、わたしがチョウチョとお友達になりたかったら、2-3匹の青虫くらいは耐えなくてはね。見事な美しさなんでしょ。そうしないと、わたしを誰が訪ねてくれるのかしら?あなたは遠くに行くし。大きな獣が来ても恐くはないわ。だって、わたしには刺があるから。
それから、無邪気に花は4つの刺をみせて、こう言いました。
-いらいらするから、長く引っ張らないで。行くってお決めになったのでしょ。行きなさいよ。
そう言ったのは、自分が泣きそうになっていたからでした。とてもプライドが高い花だったのでした。

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