星の王子さま 21章
一言づつが美しい21章です。
”仲良くなる”ことでしか分からないことがある。そして、仲良くなったものに責任がある。そうキツネは言いました。
第1章で分からなかった、ウワバミが象を飲み込んだ絵を見るカギは、ここにありました。
★ ★ ★
キツネが現れたのはその時でした。
-こんにちは、キツネが言いました。
-こんにちは、王子がていねいに答えたのですが、周りを見ても何も見えませんでした。
-ここだよ、リンゴの木の下だよ。と声がしました。
-きみはだれ?きれいだね。とても。と王子が言うと、
-おれはキツネ。
-こっちに来て、ぼくと遊んでよ。ぼくはほんとに悲しいんだ。と王子が申し出ました。
-おれは君と遊べないんだ。まだ、馴れてないからね。とキツネがいいました。
-あっ、ごめんなさい。と王子は言ったけれど、
-仲良くなるってどういうこと?と尋ねました。-君はここらのものじゃないね。何を探しているんだい?とキツネが言いました。
-ぼくは人間を捜しているんだ。その、仲良くなるってどういうこと?
-人間ってやつは、鉄砲を持っていてそいつをぶっ放すんだ。ほんとに厄介なことだよ!でも、ニワトリを飼ったりもするんだ。そこが、ただ一つ人間の面白いところだ。君は、ニワトリをさがしているのか?
-いいえ、友達を探しているのです。で、仲良しになるってどういう意味? 王子が言いました。
-それは、忘れられがちな事なんだけど、「絆を作る」ということなんだよ。
-「絆を作る?...」
-その通り。君はおれにとって、他の10万人の男の子と何の変わりもないんだよ。と、キツネが言いました。だから、おれにとって君は必要がない。君もまた、おれが必要じゃないんだ。おれは君にとって他の10万のキツネと変わりがない。でも、もしも君がおれと仲良くなったら、互いに必要になる。君はおれにとって世界でただ一人の人になる。おれは君にとって世界でただ一人のものになる。
-ぼくは分かってきたよ。と王子が言いました。一本の花があって...ぼくは、花がぼくと絆を結んだのに違いないと思いました。それは、ありうることだな。地球ではなんでもあるからな… とキツネが言いました。
-あ!それは地球での話じゃないんだ。キツネはとても妙なことだと怪しがりました。
別の星であったことなのか?
-そうだよ。
-その星には鉄砲はあるのか?
-そんなものはない。
-そいつはすごい!で、ニワトリはどうかな?
-いや、残念ながら。
-完全なものはないものだな、そう言ってキツネはため息をつきました。でも、キツネは思いつきました。
-でも、ぼくの生活はとっても単調でね。おれはにわとりを追いかけ、人間はおれを追いかける。にわとりはどれもおんなじだし、人間もどれも似たようなもんだ。そう言うわけで、ちょっとばかりおれは退屈してたんだ。でも、もしもだけど、君がおれと仲良くしてくれたら、おれの人生も晴れやかなものになるんだけどな。足音だって他のひとのとは違ってくるだろうよ。他の人の足音を聞くと穴の中に逃げ込む。君の音楽みたいな足音だったら穴の外に出る。それから、見てよ!あそこの麦畑がみえる?おれはパンは食べないから、麦なんて何の役にも立たない。麦畑は何も連想なんかさせたりしない。それって、淋しいことだよ。でも、君の髪の色は金色。そこで、君がおれと仲良しになってくれたら、金色がすばらしいものになるんだ。金色の麦が、君を思い出させる。それから、麦にそよぐ風の音もおれは好きになるだろう...
キツネは黙って王子をじっと見つめていました。
-お願いだから...ぼくと友達になって。とキツネが言いました。
-ぼくもそう思うよ。でもね、時間があまりないんだ。友達も沢山見つけたいし、いろんな経験をしなくては。と王子は言いました。
-どうしたらいいの? 王子が言いました。
-とても我慢がいることなんだけれどね。初めに、おれからちょっとばかり離れて座るんだ。こんな風に、草の中にね。おれは視野の端っこで君を見ているけれど、君は何もしゃべらない。言葉ってものは誤解の元だからね。でも、日を追ってチョットずつ近くに座るんだよ...
翌日王子がやってきました。
すると、キツネがこう言いました。「いつも、同じくらいの時間に来てくれるともっと良いんだよ。例えば、君が午後4時にくるとすると、3時には早速幸せになることが始まるんだよ。そして、時間が経って4時になると、心は動かされそして気がもめて、ついには幸せをしることになる。でも、君が勝手な時間に来たら、何時に心の準備をしていいかわからない。習慣にしないとね。」
-その習慣って何?と王子が尋ねると、キツネはこう言いました。
-それが、よく忘れられていることなんだけどね。それは、とある1日が他の日々と、とある時間を別の時間とを違ったものにするものなんだ。例えばおれんところの猟師たちみたいなものなんだ。やつらは、木曜日には村の娘達とダンスをする。だから、木曜日って素晴らしいんだよ。ぶどうの木のところまで散歩するんだ。もしも、やつらが何時とはしれずにダンスをしたら、どの日も同じようになってしまう。そして、休みなんか無くなるんだよ。
こうやって、王子はキツネと仲良しになった。けれど、王子が旅立つ時は近づいていました。
-ああ!おれ、泣いちゃうよ。とキツネは言いました。
-こうなったのも、君が仲良くなることを望んだせいだよね。と、王子は言った。-もちろんその通りですよ。とキツネが答えた。
-もちろん、そうです。-それじゃ、君は何も得られないでしょ!
-おれは、ちゃんと得るものがあったよ。麦の色のおかげだね。そうキツネは言った。
-バラの垣根をもう一度見に行けばいい。君のバラは世界で一つしかない事が分かるでしょう。おれに別れを言いに戻ってきてね。おれは君に秘密の贈り物をするから。
-君たちはぼくのバラに全く似てないよ。ちっともね。だれも君たちと仲良しになっていないし、君らもだれとも仲良しじゃない。と王子が言った。君らは以前のキツネみたいだ。他の10万匹のキツネと同じでしかない。でも、ぼくの友達になったから、今ではかけがえのないキツネなのさ。
バラ達は大変、戸惑いました。
-君らはとっても綺麗だけど、内容がない。なおも王子は言い放った。だれも、君らのために身を捧げたりしない。もちろん、ぼくのバラはぼくのものだよ。普通の通行人はぼくのバラも、君たちも同じに見えるに違いない。でも、彼女に対して、彼女だけが、君たち全部よりも大事なんだ。だって、ぼくが水をやったのだから。風除けで守ったのだから。(2~3匹はチョウチョに残したけど)毛虫をのけてやったのだからね。
それに、誉めちぎったりけなしたりするのを聞いてやったり、ある時は黙り込んだりするのだった。それこそが、ぼくのバラなんです。
それから、王子はキツネのところへ戻ってきた。-さようなら... さようなら...とキツネが言いました。これは、おれの秘密なんだけど。とっても簡単なことなんだよ。心を込めてでないと、よく見えないんだよ。大事なことは目では見えない。-王子は心に刻もうと、繰り返して言いました。大事なことは目では見えない。
-君のバラのために費やした時間、それが君のバラを大事なものにしたんだ。-ぼくがバラのために費やした時間... 王子は、心に刻もうとして言いました。
人間達はこの真実を忘れがちだ。でも、君は決して忘れてはいけないよ。君は永遠に仲良くなったものに責任があるんだ。君のバラに責任があるんだよ... -ぼくは、ぼくのバラに責任がある...王子は繰り返して言いました。忘れないようにと。