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星の王子さま 11章

 2番目の星には、うぬぼれやが住んでいました。
「人間の最大の卑しさは名誉の追求にある。
だが、それがまさに人間の優秀さの最大のしるしである。」
(パンセ 404)
La plus grande bassess de l'homme est la recherche de la gloire.
bassess 下品さ 卑劣さ

人間の本質の一つに、拭うことのできない下品さと卑劣さがある。
どーだ。認めてくれ、わたしのすごさを。
この世の誰もが、多かれ少なかれバカなのだ。
だが、それが同時に優秀さだとパスカルは言う。

            ★ ★ ★

 2番目の星はうぬぼれやさんが住んでいました。
-あ あ! ほら、ほめてくれる人がやってきたぞ!王子が遠くから見えると、うぬぼれやは大声で言いました。

というのも、うぬぼれやさんにとっては、みんな崇拝者なのです。
-こんにちは、王子が言いました。あなたは、おもしろい帽子をしていますね。
-これは、挨拶をするためなんだよ。うぬぼれやが言いました。誰かが歓声の声を上げてくれると、これを使うんだよね。運の悪いことには、まだ、誰もここを通ったことがないのだよ。
-あ そうなの? 良く分からないけど王子は言いました。
-手をたたいてみて。と、うぬぼれやさんが、勧めました。
王子は手を叩きました。うぬぼれやさんは自分の帽子をていねいに持ち上げて挨拶したのでした。
-王様の所より面白い。
と王子はうぬぼれやさんに言いました。そして、手を叩くのを繰り返しました。うぬぼれやさんは、何度も帽子で挨拶を繰り返したのでした。

その仕草を5分したあとで、その遊びの単純さに疲れてしまいました。
-帽子を落とすためにはどうしたらいいの?と王子は尋ねました。
しかし、その、うぬぼれやさんはちっとも聞いていませんでした。うぬぼれやというものは、ほめ言葉以外は耳に入らないのでした。
-わたしのことを、ほんとに沢山ほめてもらえないか
と、彼は王子にお願いしました。
-ほめるってどういう意味ですか?
-ほめるという意味はね、このわたしが、この星で一番美しくて、一番着こなしがよくて、一番のお金持ちで、一番頭が良いってことなんだよ。
-でも、あなたの星にはあなたしかいない!
-わたしを幸せにして。それでも、私をほめて下さい。
-王子は、ほめましょうと、両肩をすぼめながら言いました。でも、どうしてそんなことがあなたの関心を引くのでしょうか?
こうして、星の王子さまは立ち去ったのでした。
大人って、どう考えてもおかしいな。王子は旅を続けながらひとり事を言いました。

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