報われない父親2(母、魂の反撃?)
母が緊急入院して2週間が経った。
入院のきっかけとなった誤嚥性肺炎は改善したけれど、もともとの肺疾患は改善することはないため、結果としては次の療養病院へいったん転院という運びになる予定である。
ただ、そんななか、認知面の低下している母は、連日のように父に電話をかけてきている。
「早く迎えにきてほしい」
「自分を入院させてほったらかしにしている」
「(施設に入れた)おじいさん(母にとっては義父)や、おばあさん(同じく義母)と同じやんか」
「(私は)お父さん(夫)に、だまされてここに入れられた」
穏やかな母でもこういう風になっていくのねと娘は距離を置いて見れるが、この電話を毎日のように受ける父は「そんなことないで」という反論もむなしく、「辛いわ・・・」と頭を抱えている。
確かに、父は母を見捨てているわけではない。できる限り頑張って、自宅で介護をしていたし、母の呼吸状態が悪化して家で対応できなくなったので救急搬送をお願いしただけだ。
だが・・・
今日も父と一緒に母の面会に行った際、「お父さんは身内に冷たいところがあるからな」と母の、私を見る目と、父に向ける目は全く違っている。
祖父母の施設入所(当時自宅で最期まで介護するという風習が多かった田舎で、両親は祖父母を施設に入れていた。決して悪いことでない)については、私は両親話し合ってのことと思っていたけど、どうも父親が一人で決めたようで、母としては忍びなく感じていたのかも知れない。
それはそれとして、これまでの私自身の仕事の経験上でも、認知面が低下した妻は、ほとんどの場合、夫に一点集中的に非難の目を向ける。それも、本当に憎々し気な表情をするので、本当に憎んでいるんだな(こわいね)、と思わざるを得ない。
その点では、これまでの社会のなかで、女性が虐げられてきた歴史は否めない。私たち50代の親世代だとそういった風潮はもっと昔に比べると和らいできているとしても、やはり男尊女卑の価値観のなかで育っているため、母の世代はまだまだ我慢していることが多かったのだと思う。
ちなみに、この状況を我が夫はちょっとビビってみている。私は夫を信頼していると今は思っているけれど、歳をとったら本心が現れるかもしれないから、今のうちに私に親切にしておくように言っている。これは余談。
ただ、今日の面会で、今後療養病院に転院になること、および、私は仕事があるため転院には付き添えないので、父と二人で転院先に行ってほしいことを伝えると、
「そうなん、ほなしゃあないな、お父さんとケンカしながら行くわ」と母。
あなた、お父さんにふっかけてますね。実は確信犯ですね。
と、なんかちょっと母の心の層を感じたのである。
帰り際、「お母さんも愚痴言いたいんかな・・・」と父。「そうだよ、きっとお父さんにしか言えないんだよ」と、父を励ました私であった。
ただ、この夫への攻撃のパターンは、やはり対父という個人の問題だけでない、これまで虐げられていた女性というDNA(魂の記憶)が男性というDNAへ反撃を起こしているのかも知れないとも感じられる。
しかし今の状況において父はそんなことまで考える由もないだろうし、考えなくてもいいように思う。
とにかく、どんな状況(どんなに母にふっかけられても)、良い方に受けとる努力をし、二人の関係を頑張ってほしい。
そう、私は、父も母も応援している。