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神様

初めて神様だと思った人は、紫色をしていた。
生きる意味も理由もなくて僕が空っぽだった時、
僕を満たしてくれたのはその人だった。
当時、学校と家だけが世界だった僕に、
世界を見せてくれたし、世界を創ってくれた。
その世界は暗くて、ドロドロの何かで満ちていた。
明るく眩しすぎる世界だけだった僕にとって
その世界は革命だった。酷く居心地が良かった。
自分の居場所はここなんだと一瞬で悟った。
教祖と呼ぶに相応しい人だったと思う。
初めての崇拝は、信仰は自分のライフワークになった。
その人の言葉で涙し、笑って、苦しんで救われた。
あの人の思想が僕の全てだったし、
今でも僕の一部を象っている。
しかし、段々とあの人は崩れていった。
あの人の鋭利な言葉に恋していたのに、
その言葉が生温く、優しくなってしまった。
あの人への信仰は、いつしか薄まっていた。
そして、1人目の神様は死んだ。

2番目の神様は透き通る程に白かった。
一番近くにいた神様だったと思う。
僕の創作の師で、敬愛する姉様。
その人に向けて何度も言葉を紡いだし、
何度も彼女の言葉で夜を明かした。
彼女の創作っ子、星の名を冠する子の歌が
ずっと頭から離れなくて、
今でも侵食され続けている。
飽和なんて知らないような顔をして、
頭の中を占領されている。
初めて声を交わしたあの日の記憶は、
だんだん朧げになっていくけれど、
彼女の存在は居座り続けるのだろう。
消えることはないだろう。
僕が創作を続ける限り、
一生離れる事はないのだろうと悟った。
彼女が死ぬことを告げられたのは、僕の誕生日だった。
最悪の誕生日プレゼントだったと思う。
目が腫れ上がるまで泣いた。
しかし、一通り泣いた後に、
彼女に対して言葉を紡ぐ以外に、
弔う方法がないと思った。
だから、書いた。
書いて消してを何度も繰り返して、
満足がいくまで書いた。
絶対に後悔しないように、
思い残すことがないように。
数日後、彼女は死ぬ日が来た。
結論から言えば、彼女は死ななかった。
けれど、その日を境に彼女が変わったのは明確だった。
そう、私の2人目の神様は死んだのだ。



3番目の神様、今の神様は眩しい位にピンク色だ。
その人との出会いはまだ最近のことで、
大事な友人のリツイートがきっかけだった。
神様を亡くして、何もなかった僕に
新しい世界を見せてくれた。
それは、目が眩む程ピカピカで輝いて、
飲み込まれそうな位ドロドロの不思議な世界だった。
可愛いは呪いで、お化粧は魔法だった。
世界で一番幸せな呪いだと思った。
可愛いに囚われている私が一番輝いている、そう思った。
たとえそれが側から見ればハリボテでも、
醜くても、汚くても、僕の中で可愛いければ、
全部それでいいと思えた。
僕の中の可愛いを他人に語られるのが
憎らしくて堪らない。
決して、誰にも理解できない、
僕だけの可愛いが欲しい。
それを糧に生きていたい。
ピンク色でキラキラの、好きなものだけの世界で、
大好きな人たちだけで生きていきたい。
僕だけの可愛いが神様だ。













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