【気象予測 × 生成AI】気候変動の検知・気象予測をリアルタイムに行う大規模物理モデル:Jua
気象予測は従来、気象観測・スーパーコンピュータによる数値シミュレーション・予報官による解析の3ステップを踏むことで行われてきました。
まず、静止気象衛星や気象レーダー、(日本であれば)全国1,300箇所に配置された地域気象観測システムなどから、大気の状態や雲の分布・降水量・気温・湿度・日照時間などのデータを観測します。次に、スーパーコンピュータを用いて今後の大気や海洋の変化を数値シミュレーションします。予報官はそれらのシミュレーション結果を解析し、最終的な天気予報を行う、という流れです。
このような従来の数値天気予報は、緯度経度が0.1度単位の高解像度で予報ができる一方で、10日間の予報を行う中期気象予測の場合には、数値天気予報の計算量が膨大であることから計算に数時間を要します。
GoogleのDeepMindは、大規模な気象予報AIモデルを使用することで、中期気象予測の計算時間をわずか1分で完了できるように短縮し、計算に使うエネルギー消費量も従来の数値天気予報の1000分の1にすることに成功しています。
(引用:気象予報AIはスパコンの天気予報より優秀? Google関連会社の10日間予報が精度とスピードで圧倒)
今回は、こうしたGoogleの気象予測モデルとの違いも踏まえながら、気候変動の検知や気象予測をはじめとした、自然界の大規模物理モデルを開発する Jua というスタートアップを紹介します。
Google DeepMindのAI気象予測モデル「GraphCast」
AIを用いた気象予測モデルとして最も代表的なものは、Googleの人工知能部門であるDeepMindの研究者らにより開発されたAI気象予測モデル、「GraphCast」です。
GraphCastは2023年9月、大西洋対岸地域にハリケーン「リー」が上陸することを予報し、1週間後の9月16日に予報を的中させました。
当時の天気予報では、ハリケーンの上陸が少なくとも10日後に見込まれており、上陸ポイントに関しても北東部の主要都市もしくは完全に外れたポイントに上陸するだろう、という曖昧な予測しかできていませんでした。一方でGraphCastは、当時の天気予報の予想上陸ポイントよりもずっと北方の地点を予測していましたが、結果としてはハリケーンの上陸地点をピンポイントで指定することに成功しました。(引用:https://wired.jp/article/google-deepmind-ai-weather-forecast/ )
大規模物理モデルを開発するJuaの概要
Juaはスイスに拠点を置く、高精度の気象予測を実現する「大規模物理モデル(Large Physics Model)」を開発するスタートアップです。2024年2月5日に1,600万ドル(約24億円)の資金調達を発表していることもあり、勢いのあるスタートアップと言えるでしょう。
大規模「物理」モデルと名付けているのは、Juaが気象予測に留まらないユースケースを見据えているためであり、ここにGoogle DeepMindが提供するGraphCastとの違いがあります。
Juaが学習しているデータセットには、過去の気象予報と結果のデータセットだけではなく、自然界の物理法則も含まれており、どちらかというと後者の方に重きが置かれています。これにより気象予報以外にも、エネルギーや化学物質などの物質を扱う分野への応用が期待されます。
そのため、「Juaが最初に取り組んでいる課題は気候変動の検知や気象予測であるものの、後々には農業や保険・運輸・政府などの企業・公的機関が主要顧客になるだろう」とCEOのAndreas Brenner氏は言います。
米国国立環境情報センターによると、2023年は気候災害の数が最高水準の年であり、その結果数百億ドルの損害が発生しました。こうした現状から、業界問わず物理世界に存在するものを扱う企業(再生可能エネルギーを扱う電力会社、気候の影響を受ける農業関連会社、災害計画団体、航空会社など)のニーズが高まっているようです。
またJuaの大規模物理モデルは、GraphCastと比較して
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