モンベルおじさん
モンベルおじさん…とは、私と母とだけ通用する、父の裏ニックネームです。
彼は、何故『モンベルおじさん』なのか…それはそれは、モンベルが大好きだからです。
モンベルを愛し、モンベルを着ていたら間違いない…そういう思想の民だからです。
キャップからウィンドーブレイカー、ワイシャツやポロシャツ、パンツ、リュック…コーディネートの大半をモンベルで埋め尽します。
モンベル以外も着ますが、モンベルの割合が高くなるほど、彼のボルテージは上ります。
アウトドアしない方は、ピントこないかもしれませんが、ここにおいてアウトドアへの関心…全く必要ありません。
普段の生活で、周りをよーく見渡してみてほしです。『モンベルおじさん』は、あなたの街にも数多く生息しています。
私は、街に出かけると、多くの『モンベルおじさん』に遭遇し、「なぜ父がココに?」と見間違いをし、ドキッとする事が度々あります。
一度に10人程の『モンベルおじさん』の群れを見た時は、驚きを超え、圧巻でした。
モンベルには、あらゆる気候に適したウェアーがあるので、ウィンドーブレイカー1つにしても多種多様なラインアップが揃っています。
彼にもこだわりがあり、何気ない普通の日ではありますが、その日の気候を考え、こちらは別に大差ないと思える各種ウィンドーブレイカーの中から、今日はコレ!と選び抜くのです…これこそ、モンベルおじさんの極意です。
勿論、モンベルの各種ウィンドーブレイカーを、ウキウキで買い揃えたのではありません。
違いが分からぬ私が選び贈ると、「欲しいのは、コレと違う…」と顔をしかめるのです。
その場面を、何度も泣く泣く繰り返しただけなんです。
暫くは、ウィンドーブレイカーを見たくない…そう私に言わしめるのは、繰り返し味わった、あの無念さと敗北感からだと思われます。
私が芸大でお世話になった師匠達は、皆イケオジ揃いです。
皆シュッとしていて、粋でお洒落なんです。
勿論、彼らの独自の雰囲気勝ちの要素もあり、彼ら等の高度なお洒落を父に要求しませんが、もしかしたら父も「イケオジ見習い」くらいになるのではないか…と、師匠達とお話した帰り道など、特に強く期待してしまうのです。
幾度と贈ったワンポイント刺繍のポロシャツ…ハードルも低く、簡単にシュッとなれるアイテムなので、私は、着て欲しい…
だけど、父は、シマリスがヒマワリの種を巣穴に隠し込む様に、それらを、タンスにそのまま仕舞い込んで、何年も寝かせ続け、挙げ句の果てには忘れてしまうんです。
寝かせて深味をだそうというのか…梅酒的な発想をするのです。
父曰く、いざという時に着る…とのこと。
それは一体いつやねん…と呟いてしまいます。
かたや一方、モンベルを渡すと顔がほころんで喜び、すぐその場で試着してくれます。
そしてすぐさま、色やデザイン、生地、サイズ感、着心地のチェックが入ります…第2ステージの幕開けです。
第2ステージは、彼のこだわりが厳しい審査で、そこを通過すると、やっと晴れて『普段着る服』になるのです。
数々のモンベルのウィンドーブレイカー達は、この第2ステージで惜しくも不合格になったというわけです。
『普段着る服』へ到達した喜びを得た私が、もうイケオジへの道の誘導を半ば諦め、山へ行くわけではないけど、父が喜ぶ『モンベル』でいいじゃないか…と思うようになるのも、当然の成り行きだと思うのです。
世の中のお父さん…ええもんっぽいモノを貰った時は、一旦は、喜んでおくべきですょ。
何度もケチをつけ文句言われ続けたら、いつか、こちら側の色んな複雑な気持ちを色々含めた、裏ニックネームつけられますょ。
だけど…時には気の迷いでしょうか、こちらも気張ったもんをあげたくなるのです。
今度こそ!喜んでもらえるはず!!分かり合えるはず!!…と思って贈ってしまうんです。
そして、やはり文句をいわれ or ケチをつけられ、仕舞い込まれる…そして私の無念さ積もる…
悲しいかな、その繰り返しをしてしまうのです。
まぁ、俯瞰視したら、それはそれで楽しい出来事だなぁと思うのですが、人間修行が足らぬ私は、その都度、彼の可愛くない態度に、「キーー!!」となってしまうんです。
どうだったでしょうか…我が家のモンベルおじさん。。
困ったところも、捻れたところも、時には愛おしいく感じる事もある。
そんな謎めいた生命体…モンベルおじさん観測記録です。
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