ちょっと一口ちょうだい⁉︎
「ちょっと一口ちょうだい!?」
このセリフを言った事はあるだろうか。
私はある。
家族の中では、それぞれがいいたい放題だ。
しかも、一口とは言えないくらい大きくかぶり付き、一口を承諾した側は、「えーーー!!」と言うのがお決まりの我が家の型まである。
そして、
「ちょっと一口ちょうだい」の味は、全部そのモノを食べた時より勝る…
名言である。。
さすがに今、友人には遠慮している。
一口のやり取りが不快に感じる人もいる事を知っているからだ。
そこを気にせず飛び込んでいく程、私は無垢ではなくなったし、遠慮を覚えた。
高校生の頃、テレビで、「ちょっと一口ちょうだい」が、すごく嫌だという人達がいる事を知り、ものすごく驚いた。
その人達曰く、最初から最後まで1人で完食したいやら、衛生面から「ちょっと嫌だわ…」と思うらしい。
当時の私は、その人達は、「ちょっと一口ちょうだい」の味の蜜を知らないんだ…と同情したもんである。
とは言え、一口ちょうだい!!をし合うのは好きで、自らがアクションする事を躊躇してしまう分、向こうからガンガン来て欲しい派である。
コロナ禍でそう言ったやり取りはなくなり、やや寂しさを覚えている。
今、一口愛好家の私でさえ、街で楽しそうに食べ歩き&食べ比べしている姿を見ると、「そうやってウィルスは感染するんだぜ…」と思うようになってしまった。
私がそもそも「一口ちょうだい」を嫌がらないのは、「美味しそう〜」「ちょっと食べたいなぁ〜」という溢れ出る食欲を隠す事を忘れる中高女子校育ちという環境のせいかもしれない。
例えば、人気のパン屋さんの菓子パンなんか食べてたら、隣の席の子の「ちょっと一口ちょうだい〜」が始まり、「え?あのパン屋さんのん?」と次々他の手に渡る。
そして、「おーい、どこいくねーん??もどってこーいー!」と思う私とは裏腹に、パンは遠く彼方へ消え去ってしまうのである。
ほんの二口程の小ぶりな姿になって帰って来たパンをみて、「私のお昼…」と思うよりも、誰もが一口食べたいと思わせる、そんな美味しそうなパンを見つけた我が眼力を、誇らしく思ったものだ。
そして大概、はじめの言い出しっぺである一口ガールから、一口族それぞれから、持参したお弁当の中の玉子焼きやタコさんウインナーなどを、ちょこちょこくれるのだった。
勿論、私も「ちょっと一口ちょうだい」という側もあり、そこは、持ちつ持たれつなのだ。
反対に相手から「一口食べる?」と勧められる場合、必ず一口頂いた。
勧めてられたら、食べたいか食べたくないかという、こちらの選択はない。
相手の優しさをムゲにはできないという使命感と共に、有難く頂くのである。
頂く方も、美しく食べなければならなかったし、美しく食べ跡を残さなければならなかった。
この2つは、誰が教えてくれる訳でもなかった。美しさの判断基準もバラバラだったが、美しく食べる人・美しく食べ跡を残す人が必ずいて、それをどうしたらそうなるか…観察・実践するのみであった。
かぶりつくのではなく、軽く引きちぎるように食べとるな…と噛み跡から推測したりもした。
しかし、個々個人の主観的な美的感覚とキャラクターが掛け合わされるので、正解などなく、差異があった。
私なんかは、歯型を丸く残すなんて事をすると、ダメダメ認定を受けるが、中には、「歯型を付けずにどないするねん!寧ろ付けてよ…」と思わす人徳のあるキャラクターもチラホラいる。
まず己を知る事はとても重要で、センスが必要だ
った。
ただ、一口を勧めてくれた相手に後悔の念を抱かせるのは、マナー違反であるという事だけが、共通する事であった。
しかし、大学に入ってから友人に、「一口食べる?」という私の誘いを、幾度か断られてきた。
(かじりさしでもないのにだ!)
あれは、中高校生までのノリだったのか…女子校のノリだったのか…カルチャーショックに近いくらいのショックだった。
そうやって中高と、親睦を深めてきた私にとって、大学って寂しい所であり難しい所だなと思った。
と同時に、誰に気づかう事なく、いるorいらない、したいorしたくない、を個々で自由に選択できる人間関係に、気軽さを覚え、すぐ馴染じみ、過ごしやすさを満喫していった。
さらに、今、大人になって、大人らしい振る舞いをしなきゃいけない時は、大人スイッチをオンにしている。
つまり、一口親睦法が、相手の負担になりゃしないか、相手の真意を、様子を、恐る恐る伺いながら行動している。
それもこれも、ややこしいさが否めないが、そうゆう気の回しも、他にない日本ぽさがあり、愛すべき“らしさ”だったりするので、私は、疎ましく思わない。
ちょっと一口ちょうだい…
大人になればなる程言わなくなる言葉の一つだが、この言葉の周りには、必ず親しい人がいて、色んな思い出と共に、色んな味があって、色んな事を思う言葉だと思う…好きな言葉だ。
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