第37話「ヒマリの決意」
「それで…。報告、というのは?」
ブレイズ隊長が、冷静な声で、二ジィール隊長に問いかけた。
「あぁ。そうだったな。
報告では…
ミタ山周辺に…ヨウ・オリーヴァーの姿は、すでに、無いそうだ。」
(もう…ミタ山には、いない。)
…確かに、あれからもう…2日も、経っている。
ミタ山に行きたいと、ブレイズ隊長に交渉していたけど。
…頭では、いつまでもあそこにいるわけ無いって…分かってた。
でも…
「じゃあ…、ヨウは、どこに…?」
私は、誰に言うでもなく。
そう、思ったことを、つぶやいていた。
私のつぶやきが、聞こえたのかは分からないけど。
二ジィール隊長が、そのまま話を続ける。
「ヨウ・オリーヴァーの行方は…そのまま、捜索中だそうだ。
だが、手がかりが…無いわけではない。
ジャアナの住人の目撃情報をまとめると…
『意識を失った…ヨウらしき少年を、複数の人間が、連れ去っていった。』
『連れ去ったのは…。闇に溶け込むような、真っ黒な軍服を着た、2人組だった。』
だ、そうだ。」
「真っ黒の、軍服…。」
ブレイズ隊長が、顎に手を当てて、考え込む。
「つまり…”黒の悪魔”は、生きている可能性が高い…って、ことですわね。」
チェリーナ隊長も、神妙な顔つきで、つぶやいた。
「そういうことに…なるな。
”黒の悪魔”を連れ去って…一体、どうするつもりなのか。
ま…良からぬことなのは、確かだな。」
二ジィール隊長も、真剣な様子で答える。
私は…
「ヨウをっ!”黒の悪魔”を、探しましょう!
このままには…しておけませんっ!!」
ホワイトノーブルをまとめる、最強の3人に…
…懇願するように、そう、主張した。
「私も…私にできること、何でもやりますっ!だから…っ。」
お父さんとお母さんの顔を思い出して…溢れそうになる涙を、必死にこらえる。
「私…っ!戦いますっ!
絶対に…ヨウ…”黒の悪魔が、死ぬまで”…!」
…私の、必死の訴え。
3人の隊長は、黙って最後まで、聞いてくれていた。
そして…
「…そうね。”黒の悪魔”は、私達、人類にとって脅威…。
平和を守る、ホワイトノーブルのチカラで、必ず…この世から、抹消しましょう。」
「お前も…【黒の再来】で…大変だった、そうだな。
”黒の悪魔”、俺たちで絶対…倒そう。世界の、平和のために。」
チェリーナ隊長と、二ジィール隊長が、
それぞれ、私の決意に、同意してくれた。
そして、いまだ…1人だけ。
口を開かずに…考え込んだままの、ブレイズ隊長に。
「ブレイズ…隊長…?」
私は恐る恐る…声をかけた。
すると、
私の呼ぶ声に、ハッとして…
「あぁ…。もちろん、ですよ。
ホワイトノーブルの手で、必ず…。世界を、平和にしてみせます。」
いつもの…私の安心する優しい笑顔と声色で。
ブレイズ隊長は、そう答えてくれた。
「考えていたのですが…。
真っ黒の隊服に、少し…心当たりがあります。」
ブレイズ隊長は、先程の微笑みから…
また、真剣な表情に戻って、私達に言った。
「なにっ!?ほんとか!」
「本当ですか!さすが、ブレイズ隊長っ!」
二ジィール隊長とレンが、嬉しそうに反応する。
「わたくしが、調べましょうか?」
チェリーナ隊長が、そう提案する。
「いえ…。今回は、私が調べましょう。
ユンナさんには…、2人の、”チカラ”を、見てもらいたい。」
そう言って、ブレイズ隊長は、私達に向き直る。
「ユンナさんは、”暖色系”の隊長です。
君達2人のカラーズは…”禁色”の赤みがかった黄色…黄丹。それに、赤みがかったオレンジ色…赤橙。
配属は、間違いなく”暖色系”になります。」
ブレイズ隊長は、優しく、諭すように。私達に、そう言った。
「ユンナ・チェリーナ隊長は、暖色系の”チカラ”を、極めています。
きっと、色々なことを、教えてくれるでしょう。」
最後には…ニコッと笑いながら
「”黒の悪魔”の居場所が分かったら…必ず、2人に伝えます。
その時には…君達2人が、今よりもっと強くなって…
…私と、一緒に。共に戦ってくれると、信じています。
世界を平和に。
私達ホワイトノーブルの手で、必ず…。」
私とレンの頭を、
片手ずつ、ポンポンと。優しく、撫でるように叩く。
「「はいっ!!!」」
私とレンの決意は、ピッタリと重なった。
(部隊は”暖色隊”だけど…。
私は、これから…ブレイズ隊長に、ついていく。
敵(かたき)をうつため、世界の平和のため…
……”黒の悪魔が死ぬまで”…!)
私は、声に出さずに。
静かに、だけど…強い気持ちで。改めて、そう、決意した。
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