第40話「新人は、4人」
「みんな!!こんなとこで、何やってんだ!?」
(まさか…こんな…!!)
俺は、こんな…ブラックアビス本部で、
まさか会えるとは思っていなかった
アザミ・モモナ・ミチカの、”孤児院3人組”を、目の前にして。
興奮が抑えきれないまま、大声で話しかけ続ける。
「また、みんなに…会えるなんて!!!」
そうして、
みんなの座っているテーブルに、一目散に駆け寄った。
「ヨウ…!その…元気?体調とか…大丈夫、なのか?」
アザミは、ひどく心配した様子で。
俺の全身に視線を這わせながら、言葉を選ぶように、質問する。
「うん!俺は、見ての通り、元気だぜっ!」
俺は、自分の身体をパンパンっと叩いて。
元気なことを、最大限にアピールする。
「な〜んだ!それなら良かった!!
も〜、モモも、みんなも、本当に心配してたんだからねっ?」
プンプンと、頬を膨らませながらも、
モモナは、心底嬉しそうに、そう言って笑ってくれた。
「全く…。心配ばかりかけて!
あの日の夜…、地面に倒れたアナタを見た時は…。心臓が、止まるかと…思いましたわ。
あの、激しい爆発や、光の中に…ヨウと、アオバ君が…いた、なんて…。」
怒ったように立ち上がったミチカだったが、
話しているうちに…、悲しそうな顔で。ゆっくりと、椅子に座り直した。
「うん…ごめん。」
俺は、申し訳ない気持ちで、伏し目がちに謝った。
と、その時…
立ち上がったミチカを見て…気付いた。
「…っ!みんな、その服っ…!」
そう、
ミチカや…みんなの、服…。
「真っ黒の、軍服…!?」
(てことは、まさか…?)
「おう、お前が丸2日寝てる間に、こいつらも、色々あったんだ。」
大先生が、
いつの間にか、お盆に美味しそうなパンとスープを乗せて。
俺たちのいるテーブルにドカッと座り、
みんなの代わりに、俺の疑問に答えてくれた。
「んじゃ、眠り姫だったヨウのために、
昼飯でも食べながら、代表して俺が、ざっと説明してやるか!
こいつら3人の見てきたことと…
ブラックアビスに入ることになった、いきさつを。」
そうして、ひとまず俺も、
大先生にならって昼食を取りに行き。
みんなのテーブルに戻り、
パンやスープを黙々と食べながら…
【黒の再来】の時、
3人が、どこで何をしていたのか?
俺が寝ている間に、何があったのか?
主にこの2つについて、
ざっくりと説明する、大先生の声に…耳を、傾けた。
「…とまあ、説明は、こんな感じだな。
要するに、お前も知らないうちに、【黒の再来】の現場近くにいた、こいつらは…
自分たちで見たことと、俺たちブラックアビスからの説明で、
お前のこと、そして…ヒマリや、ブレイズのこと、すべてを理解した。
理解した上で、
俺たちに…いや、ヨウ、”お前に”。
協力したいって、言ってくれてるんだ。」
大先生は、そう言って、
嬉しそうに、俺たち4人に視線を合わせる。
そして
「ほんっと、お前ら、良い仲間じゃん!」
ニヤッと笑い。1番近くにいた、俺の肩を、バシバシと叩いた。
「みんな…本当に、いいのか?
こんなことに…巻き込んじゃって…。」
俺は…もちろん、話を聞いていて、嬉しかった。
すっごい、嬉しかったんだ。でも…
…大切なみんなを、危険な目にも…合わせたく、なかったから。
「巻き込んだ、なんて…
そんな、冷たいこと…言うもんじゃないぞ。」
アザミは、優しく微笑んで。
俺の目をみて、きっぱりと言う。
「僕が、最初に…倒れているヨウを、見つけたんだ。
本当に…ヨウは、声をかけても、ピクリともしなくて…死んじゃってるんじゃないかって、思った。
そんな時、ノヴァン隊長とサクヤ隊長が来て、ヨウを、助けてくれて…
今、こうやって。ヨウは、生きててくれてる。
身体は失ったけど、アオバも…ヨウの中で、生きてるんだって、さっき聞いた。
あの夜は、誰も…助けられなかったけど。
これからは…僕も、助けられる人を、助けたい。
ホワイトノーブルの企みや…世界の危機。
すべてを知った今…
アオバとヨウの2人だけに、本物の”黒の悪魔”を…背負わせることなんて、僕にはできない。」
アザミの…真剣な、決意。
その、真っ直ぐな優しさ、強さを受け取った俺は…
「…ありがとうっ!」
気を抜いたら、泣いてしまいそうで。
だから…感謝の言葉、たった一言しか、言えなかった。
「モモも!
本物の”黒の悪魔”が、生きてるって聞いて…。
…改めて、思ったの。
お父さんと、お母さんの…【黒の誕生】のこと、絶っ対許さないんだから!!
モモが、悪いやつ全〜部、成敗してくれるっ!!」
「まあ、私は…発現者では、ない…けれど。
みんなと同じように、本物の”黒の悪魔”のこと、ずっと…恨んでるわ。
そして、ずっと…倒したいって。
この世から…消えてほしいって、願ってた。
でも…これからは、願うだけじゃなくて。
私にも、できることがあるなら。
ここで、みんなと一緒に、頑張りたいって、思うわ。」
モモナも、ミチカも。
はっきりと…自分の意志で。
(俺への、同情とか…優しさとかじゃ、ない…!)
俺たち、みんな…
「同じ気持ちを持つ…仲間だ…!」
俺は、テーブルを挟んだ向こう側にいる3人に向け…
テーブルを飛び越えて、思いっきり飛びついた。
「うわっ!」「ぎゃあ!」「きゃっ!」
3人は、俺に突撃されて、
それぞれジタバタしていたけど。
「みんなで…絶対、ヒマリも世界も、み〜んな、救ってやろうな!
そしてまた…あの、平和な日常を…!
ヒマリも一緒に…みんなで、レンの待つ…ジャアナの街に、帰ろう!」
俺の言葉に、
「だね!」「もちっ!」「えぇ!」
それぞれが、俺の腕の中で…笑顔で、頷いてくれた。
そんな、
俺たちが笑顔で抱き合っている時…
そばで黙って見ていた大先生が、久しぶりに口を開き。
…信じられないことを。
なんともあっさり、何でもないことのようにつぶやいた。
「あ〜、いま出てきた”レン”だけど。
”レン・キールマン”なら、今…
ヒマリと一緒に、ホワイトノーブルにいるぞ。」
(え…?)
「そんでたぶん、そいつ…
元々あの街にいた、ホワイトノーブルへの…内通者、だぞ。」
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