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「職人芸」の世界でAIにできることはあるのか、「千原ジュニアの座王」をみて考えてみた
AIとデータを活用したSaaS開発を行うベンチャー企業、AI-DataScience株式会社の事業開発担当Kです。今回は、「千原ジュニアの座王」から、番組制作の現場におけるAIの活用について考えてみたいと思います。
千原ジュニアの座王とは
「千原ジュニアの座王」は、関西テレビで放送されているバラエティ番組です。千原ジュニアが企画を考案しMCも務める番組で、芸人たちがお笑いの即興力で競い合う内容です。具体的には、出演する芸人が、「大喜利」「ギャグ」などのジャンルが書かれたイスをイス取りゲームで争い、イスに座れなかった芸人は、座っている芸人とお題を吟味し、対戦相手を指名します。この段階で指名された芸人のイスに書かれたジャンルのお題が発表され、両者は発表されたお題に対して即興ネタを披露して対決となります。審査委員長(各回のゲスト芸人)が勝敗を判定し、最後の最後まで勝ち残った芸人がその回の優勝者「座王」となります。
私が思う「千原ジュニアの座王」の魅力
「千原ジュニアの座王」は、お笑いの総合力が試される内容から「お笑い十種競技」、あるいは「笑いの総合格闘技」とも称されています。私が思うこの番組の魅力は、出演芸人たちの真の技術や個性がみえることです。毎週継続的に視聴していると、この人はこのお題に強い(弱い)とか、この人とこの人は相性が良い(悪い)とか、それまで滑ってばかりだった芸人がある回をきっかけに「覚醒」し、以降ツワモノに進化したりと、脚本や台本がないからこその様々なドラマがみられるスルメのような番組だと思っています。ちなみに、私がお気に入りの芸人は、「ベジータ」ことR藤本さんと、「武将様」こと岩部彰さんです。
データでみる「千原ジュニアの座王」
この面白番組を真面目に「データ分析」しているサイトがあります。「千原ジュニアの座王データベース(非公式)」というサイトで、運営者様は「お笑いデータ変態」と名乗っているようです。このサイトでは過去の放送データを第1回から蓄積し、全試合の取り組み結果や、「個人別」「ジャンル別」「ラウンド別」などあらゆる切り口の勝利数と勝率がデータ化、ランキング化され、一覧できる状態になっています。これは極端な例ですが、大喜利や賞レースに強い頭脳派の芸人さんたちは傾向と対策を考えたこういったデータ分析の考え方で、勝ち筋のストックを持っているのではないでしょうか。お笑いのプロフェッショナルやファンの方々の中には、「そんなことばっかり考えててもおもんないねん」とお怒りの方もいるでしょう。しかし、子供のころバトル漫画の登場人物の強さランキングなどをデータベース化したウェブサイトに夢中になった方も多いはず。データって、単純にエンタメとしても面白いですよね。
データを番組制作に活用できるとしたらどんな方法があるか
ここまでは視聴者側のデータ分析についてみてきましたが、ここからは、番組制作側でのデータ活用の余地について、2つのアイデアを考えてみました。1つ目は、編集作業のAI化です。「千原ジュニアの座王」では、過去の名勝負をまとめた「傑作選」を放送されることがあります。「鬼!西田傑作選」や「歌ネタ特集」などテーマごとに過去の放送回からピックアップされた勝負が抜粋されるのですが、おそらく編集スタッフの方で企画会議をして、人力でピックアップする作業に、かなりの手間と時間がかかると想像します。このような番組フォーマットの場合、過去の勝負にデータラベルをつけて保存しておくことで、AIにテーマに沿ったVTRをピックアップさせる作業を委託することができるのではないでしょうか。2つ目は、キャスティングの最適化です。前述の「座王データベース」よろしく、出演者の組み合わせと視聴率データに法則性をみつけることができたら、提供されるスポンサーのターゲットの合わせたキャスティングを、データの裏付けをもって判断できるようになるのでは、と夢想します。
「職人芸」の世界で、AIって必要なの?
ここまで考えてみましたが、このような提案では番組制作会社にはあまり響かないだろうという指摘が入るかもしれません。今まで通り人間が作業した方が「面白い」し、「安上がりである」という指摘です。確かに、現状このような分野の職人芸をAIが超えることはできないと思われますし、ニッチな領域ではスケールメリットが取りづらいため、システム開発費用をかけるより現状を維持した方が良いという反応が予想されます。しかし、今後ますます人手不足の深刻化が予想される中、人間が独特の感性で仕上げを行う前段階の作業をAIに任せることで業務効率化を図らなければ現場が回らない、という時代がやってくるかもしれません。やがては、「独特の感性」の部分もAIが学んでいって、本当にAIが面白いことを考える未来がやってくるかも?
「アート思考」で先入観を捨てて課題に挑戦しましょう
弊社代表の倉橋は、「アート思考」を掲げ、新しい切り口でのAI活用の道を模索しています。AI活用は難しいと考えられている業界だからこそ、新しいことに挑戦したい、とお考えのメディア関係の方がいらっしゃれば、ぜひ弊社までお気軽にコンタクトをお待ちしています。