売文稼業はじめました
昨日、朝刊の連載が最終回を迎えた。
2024年2月1日より、4週に1回、半年間の約束にてエッセイを書かせていただいた。わたしが担当したコーナーは4人の著者が半年間ずつ担当するエッセイ欄で、この度の著者陣は映画監督、大学教授、小説家、そしてバーオーナーという謎の肩書のわたしであった。
昨年、河北新報社の記者さんから「書いてみませんか」とご連絡を頂いたときは、本当に飛び上がって喜んだ。聞くところによると、noteの記事を読んでくださっての依頼だという。つくづく、noteには大感謝である。
1000文字弱、主題不問ということで、初めはなにを書いたらよいのか皆目見当がつかなかったが、わたしは書き始めると筆が異様に早く、1本目は締切の2か月前にプロフィールなどを送る際に一緒に送ってしまい、2本目と3本目も1本目の校正の段階で送ってしまい、4,5,6本目に至っては締切の数か月前に送ってしまうという、超速筆な執筆者となった。
本当は、輪転機を止めるような遅筆の小説家に憧れており、それでこそ作家っぽいじゃんと思っていたのだが、脳みそが暇なのか、書き始めるとお筆先な感じでちょらちょら文章が出てくるので、全くもって締切に追われることがなかった。
つまらぬ。だが、知らなかった自分の性分を知った気もする。
締切は掲載日の1週間前である。その頃になると、担当記者さんが校正の原稿を送ってくださる。
新聞にはたくさんの決まり事があるそうで、その体裁に沿って修正が加えられるのだが、それがなかなか、自分の文体の特性を削ぐパワーがあったりする。たとえば、敢えてひらがなにしたりしているところを、決まりに添って漢字にされたり、地名が入る際には 国分町(仙台市青葉区)のように説明の括弧が入る。これらによって地味にグルーヴ感が削がれてゆくのだが、そここそが新聞の特性なのだから仕方ない。新聞は老若男女あらゆる人に正確に情報を伝えるための媒体なのだ。
わたしの文章を読み慣れている人たちには「らしさが出きっていない」と言われたりしたが、都度前述の説明をした。自分らしさを表現する場などは他に”いくらでも” あるのだから、それよりも「公的な場で需要に応じた文章も書ける」ということの方がよほど大切なのである。原稿料をいただいているのだから、これは「請われた文章を書く」という仕事だ。同時に、文筆家を志す者にとっての修行であり、勉強なのだ。
初めての掲載日は緊張した。朝刊が配達される音で目を覚ましてすぐに玄関に走った。顔写真とプロフィール入り。これが今朝、およそ40万世帯に届いているのか。我ながら、作家の仲間入りをしたような心持になり、わくわくした。
全6回を通して、反響はたくさんあった。久しぶりに連絡をくれた方もいれば、アナウンスしていないのに「いつも読んでいるよ」と言ってくれる方もたくさんいて、とても嬉しかった。その反響を励みに執筆に勤しんだ、と言いたいが、前述のごとく掲載時にはほぼすべて書き終えていたので、そんな励みが反映されることがなかったというのが心残りである。つくづく速筆はつまらぬ性分だと思う。
また、嬉しさのあまり、いろいろなところで「いま新聞で連載してます!」などと話し、皆に驚かれて、にやにやして半年を過ごした。とにかく「いま新聞で連載してます」は、結構な破壊力を持つ言葉で、おかげで人生に泊がついた。
ともあれ、noteやFacebookやInstagramなどに駄文を載せては鼻息をフンフンさせていた「文章書くのが三度の飯より好きなあたい」としては、たくさんの人に自分の文章を読んでもらえること、そして、文章を書くことが「原稿料をいただける仕事」となったことが心から嬉しかった。大体にして、お金を頂いてまで、どれぐらいアルフィーが好きかを40万人に読んでもらえる日が来るとは思わなかった。喜びでしかない。
そしてやはり、今回の連載を一番見せたかったのは母・好子である。
物凄く喜んでくれただろうし、きっと毎回いい感想を言ってくれたと思う。
わたしが文章を書くのが大好きなのをよくよく知ってくれていた母さん。
本当に、母が元気だったらどんなに喜んでくれたことか。きっと小躍りして
「ぃやったねぃ!あいちゃんー!好子嬉しい!」って言ってくれたと思う。ね、母さん。
(ちなみに「きっと天国で喜んでくれてる」みたいなのはわたしのいちばん嫌いな考え方である)
全6回の連載をつぶさに読んでくださった方もいれば、遠方で読めなかった方もいらした。また、記事の写真を撮って送ることやそれをSNSに載せることは著作権や複製法に抵触するため出来かねた。
記事は、前述の通り新聞の決まり事に添った修正と決められた文字数があったため、noteには改めて「ディレクターズカット版」を掲載することにした。(これは幼なじみの提案である)
これから少しずつ、6回分の記事を掲載していこうと思っているので、新聞を読んだ方もまだの方も、今一度完全版を読んでいただけたらと思う。
(おわり)
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