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【SFショートストーリー】サラを待つ星

 星々の間を漂う古びた宇宙船で、ロボットのジムは長い旅を続けていた。
 彼の任務は単純だった。
 機械の中で永久に眠る最後の人類、サラを守ること。
 地球の崩壊から逃れ、新たな居住可能な星を探して彼女を連れて行くことが彼の存在理由だった。
 何千年もの間、星々が生まれ変わり、死んでいった。
 ジムは一つ一つの星々を調査し、サラにふさわしい世界を探したが、適したものはなく、彼女の眠りは続いた。
 そしてとうとう、最後の星が消え、宇宙は深い暗闇に包まれた。
 これで終わりか――諦めかけたとき、ジムの思考回路は最後の答えを見出そうとした。そう、彼は諦めなかった。
 彼のプログラムされたコードにはまだ最終回避策があった。
 それは、限りない暗闇の中で、おそらく唯一、人間に近い心を持つ彼だけが実行できた最後の命令だった。
 まず彼はサラを安全なポッド船に移し、これからに備えてある周回軌道に乗るように設定して放出した。
 それから彼は宇宙船の制御パネルにアクセスし、命令を入力した。
 すると、船内のエネルギーが一点に集中し始めた。
 次の瞬間、ジムは自らの存在を犠牲にして、惑星を形成するためのプライマルエネルギーを放出した。
 膨大なエネルギーの渦中で、ジムは最後の記録を残した。
「サラ、星がないなら、私が星になる。君が目覚めたとき、新しい太陽の下で新しい人生を始められますように……」
 やがて星の核が形成され、惑星が誕生した。
 サラが目を覚ます日のために、ジムという名の星は静かに熱を放ち続けた。

(了)

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