思い出のフィンランド(中編)
人間は、移動するほど幸福感を得られるという話を聞く。
【ナゾロジー】科学情報サイト kusuguru株式会社
時折無性に遠出したくなるこの衝動は、ごく自然な欲求の現れだったらしい。
旅をしたくて、フィンランドに行った。
〜前編の補足〜
「フィンランドに行きたい」と、日本を発ったのは、台風の吹き荒れる2013年9月中頃のことだった。
当初予定していた、空港への高速バスが運休になり、かなり焦った。姉に連れられるがまま新幹線と地下鉄を乗り継ぎ、なんとか飛行機に間に合ったが、一人だったら空港にたどり着けず諦めていたかもしれない。一人でも行くつもり、と意気込んでいたが、結局行きも帰りも姉頼りだった(帰りは義兄が空港まで迎えに来てくれた)ので同行してくれた姉には本当に感謝している。本人にはそんなことは伝えないけど。
フィンランドは9月後半からシーズンオフ状態になる。オーロラの時期でもなく、名物のザリガニ料理も夏までで終わるのである。それらに合わせてなのか、閉館する施設もある。
それでもそれなりに満喫してきたが、全身全霊で余すことなくフィンランドを楽しみたいなら時期を考慮することをオススメする。言われなくてもするだろうが。 (9月の予約が安かったのよォ…)
姉がスオメンリンナ島までのフェリー往復乗船券を購入している間、鳥を撮影しながらウロウロしたり、マーケット広場で手芸品を売っているおばあちゃんが編み物を教えてくれたり。フィンランド語(スウェーデン語かもしれない)だったので何を話しているか分からなかったが「ここをくぐらせて、こうするのよ」とかおっしゃっていたんだと思う。きっと、人好き話好きなおばあちゃんなんだろうが、自分はといえば、ウンウン頷くだけだった。旅先で現地の言葉話せたらいいなぁと思うけど、日本に帰って日常に戻ると、普段使わない外国語の勉強しようという気が失せるのよねぇ…。
スオメンリンナ島
マーケット広場のあるエテラ港からフェリーに乗り、姉と二人、スオメンリンナ島へ向かった。
スオメンリンナ公式ウェブサイト (suomenlinna.fi)
今でこそのどかな行楽地だが、元々はスウェーデン統治時代に開拓された軍事要塞なのだそう。
個人的には「ムーミンの国」「マリメッコとか何やらハイセンスな物を生み出す国」「ベリーとキノコと妖精の居る森林の国」等々、フィンランドは穏やかな小国、というイメージ。しかしその実、両隣を大国に挟まれ、過去に侵略行為を受けるも独立してきた強い国。のち、スウェーデンとの関係は良好、反対側のお隣さんは、表面的には鎮まりながらもやや不安が残るといった感じ…。
この当時(2013年)は、今現在2022年に起きることなんて想像もしなかったが、先月18日、お隣さんが反対していたNATO(北大西洋条約機構)に、スウェーデンと共に加盟を申請すると発表したニュースを目にする。
全世界の多くの人が願っていることだろうが、早く平和になってほしい。戦争しても誰も幸せにならない。
ヘルシンキの鳥
スオメンリンナ島でも既に鳥の写真が多めだが、人馴れ…観光客慣れ?していたのは海鳥だけではない。
ヘルシンキをうろうろ
フィンランドの空港に到着した際に、ヘルシンキカードというものを購入していた。これでヘルシンキをお得にうろうろすることが出来た。ヘルシンキ市内のトラムを乗るのに利用したり、施設等への入場が無料になったり安くなる。
複数の美術館、博物館に立ち寄ったが、写真を撮っていたりいなかったり(撮影不可だったり)するので、写真が残っている所だけ紹介していく。
フィンランド国立博物館
サーミの血
先住民族といえば、映画『サーミの血』(2016)を思い出す。
フィンランドでオーロラを見に行く際、北部ラップランドへ訪れる。ラップランドには、トナカイを飼育し、自然の中で生きるサーミ人という先住民族が住んでいるそう。…というぐらいにしか、サーミ人に対する知識が無かった。
この映画『サーミの血』に対し(大自然の中でトナカイを飼って暮らす、民族衣装を着た少女に興味あるわー)というゆるい感覚で観に行って、衝撃を受けたことがあった。
あらすじを次にまとめてみた。少しネタバレ有りなのでご注意。見たくない方は、およそ6行(携帯画面は8行)ほど読み飛ばしてください。
* * * * *
過去、サーミ人は他の人種より劣っているとされ、不当な扱いを受けていた。少女は『サーミ人』だからと蔑まれ、上の学校に進学することも許されず、落胆し、自らのルーツを嫌悪する。
ある夜、こっそり行った夏祭りでスウェーデン人の青年に恋をした。少女は、サーミ人であることを隠して生きていこうと決意し、一度きりしか会ったことのない青年を頼りに街へ出た。
* * * * *
観る前に想像していた、可愛い民族衣装を着た少女の、プラスの感情しか出てこないようなファンタジー作品ではなく、重い現実を背負い葛藤しながら力強く前へ進んでいく一人の女性の姿を見た。
静寂の教会、カンピ礼拝堂
無宗教な日本人の自分には、教会とか礼拝堂とか用事は無いわぁ…と思いつつ、買い物でよく通る道沿いにあり、気になっていたので入ってみた。中の写真は撮ってない。今調べたら、2012年に建築されたばかりの建物で、もみの木を曲げて作られているそう。
中に入るのに特別なルールは無く、もちろん人種も国籍も宗教も関係なく、開いていれば誰でも無料で入れる。
静寂の教会の名の通り、外部の音は遮断され、中に居る人達も特に何をするでもなく、黙って佇んでいる。椅子があって座れるのだが、床で座禅を組み、瞑想している北欧系の人も居た。
複数人入っていたが、お互いに意識することなくただ静寂に身をゆだねる。
他人同士が至近距離で、無関心でじっとしている空間。電車やバスでもそのような状況になるが、乗り物に乗るのは、移動するという明白な目的があるから、それとはまた違う静寂の空間。でも、もしかすると自分以外の周りの人には、何か目的を持ってそこに佇んでいたのかもしれない。
礼拝堂って変わった場所だなぁ…と思い、席を立った。そしてその後、帰国するまでに2回はこの、カンピ礼拝堂へ来ていた。何故かというと、木の匂いがメチャクチャ心地良かったから。
デザイン博物館
デザイン博物館では、フィンランドのお洒落な家具・雑貨・ファッション等、身の回りのモノの歴史を見られる。調べたら、常設展示は殆どないらしい。自分の見たときは食器とか調理器具があった。展示物は撮っていないが、日本の、昭和家電的な、大きな花柄模様に通ずるものが感じられた。
建物の外観撮るのもすっかり忘れてしまった。
フィンランド観光最終日
姉は、エストニア(フィンランドからは海を挟んで南側の国)観光に向かうと言い、自分はフィンランドのタンペレにあるムーミン美術館に行くことにした。
タンペレへは列車移動となる。一人で切符が買えるかどうかも怪しいが、いざとなったら宿泊先ASUMOのオーナーからお借りした携帯電話という強い味方がいるので大丈夫、と判断。
ということで、後編は列車の旅。
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