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初期案

もともと考案していた作品は、とある疫病の後遺症により人類の寿命が60歳前後になった未来の世界を舞台にしたものでした。短命になったことによりテクノロジーは大きく進歩し、この手のSFモノでよくありそうなロボットが人間の代わりに働く社会です。
しかし、ウイルスやハッキング等により暴走してしまう個体も時折現れ、これを阻止したり事件性があれば解決する特殊部隊に所属する人間たちの物語を描きたいと考えていました。ロボットたちのシンギュラリティ、疫病を蔓延させた首謀者の意図、生きたいと願うこと、いかなる不条理を突きつけられても前に進むしかない若者たち、この辺りをテーマにした比較的スケールの大きいアクションモノです。

と、まぁこんな規模の作品はアニメか、実写ならCGゴリゴリでないと描けないわけで(笑)。そこで「寿命が今より短かったら社会はどうなるのか?」というエッセンスを抜き取り、巷でよく耳にするようになった【人生100年時代】というワードからタイトルに結びつけました。
大きくシフトした点としては元の作品は未来を舞台としていましたが、今作は近年のムーブメントも相まって異なる並行世界(パラレルワールド)、もう少し解釈を拡げてマルチバースとしたこと。
これは未来と設定してしまうと文明の進み具合を映像に落とし込むのが難しい点や、そもそも「そういった未来(高齢者がいない社会)を製作陣が望んでいるのでは?」というヘイトに繋がる懸念があったからです。
また、元の作品は戦闘シーンの多さも相まって葛藤や憤りといった激情的な描写がメインとなるものでしたが、今作は登場人物を女性2人に絞ったことにより、どちらかと言えば柔らかい心理描写に出来たらと心掛けました。これは結果論ではありますが尺の都合もあって執筆の過程で説明的なセリフを大きく削った部分にも由来しています。

そして命をテーマとし、そこに人間の寿命や社会の在り方を絡めた話という点については倍賞千恵子さん主演の映画【PLAN75】の存在が常に頭の片隅にあったかと思います。「75歳以上の人間に尊厳死の権利があったら?」という設定でifの日本を舞台に、プランの当事者である高齢女性や手続きの対応をする役所の若手職員の視点で物語が進行していくある種の群像劇です。
脚本も務めた早川千絵監督の意図としては経済至上主義の果てに命を軽んじるような社会であってはならないというメッセージを込めたとのことですが「では、この超少子高齢化社会においてクリティカルな打開策はあるのか?」という見方をすることも出来る社会派な作品です。
生々しい描写も多く、単なるifの世界という設定を用いると二番煎じ感が否めないので、その路線は無しという意味で意識していました。

他にも今作の題材をマルチバースにした理由はいくつかあるのですが、この辺りの話はまたいつか・・・。

スタジオ放課後の作品はこちらから↓
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