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2つの展覧会と2人の女性ランドスケープ・アーキテクト:Mien RuysとJung Youngsun
アメリカで成立したLandscape Architectureがそれぞれの地域の造園・庭・ガーデンのコンテクストに受容されていくプロセスはそれぞれで、その地域の自然に対する姿勢、庭や宮廷の由来、土木や土地の成立、国家資格の有無など多く要因があり、Landscape Architectureがどう制度化されたかだけでもかなり興味深いトピックではある。
最近はなかなかにエコロジー・ブームといってもいいと思うが、今年は偶然にも行けた展覧会のうち2つがそれぞれの国における第1世代(と表現された)Garden Landscape Architectを取り上げたもので、かつ二人ともに女性アーキテクトだったので少し同じ記事で紹介できればと思った。
努力はするけど、それぞれ韓国語とオランダ語から訳したものをもとに書いているため内容に正確性を担保できないので気になった人は自分で調べてみてほしい。
1.Jung Youngsun: For All That Breathes On Earth
1つ目は、ソウルの国立現代美術館(National Museum of Modern and Contemporary Art)にて行われていた「Jung Youngsun: For All That Breathes On Earth」
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アムステルダムへ行くのに、LCCでインチョンへ行ってからスキポールへ飛ぶほうが安いことがわかり、韓国も行ったことがなかったので2泊ほどしていくつかの場所を回ってみた際に偶然立ち寄れた。
以下から、MMCAの発行しているカタログのようなものが読めるので興味があれば是非。
Jung Youngsun (b. 1941) is Korea's first-generation landscape architect and the first woman licensed as a land development engineer. Her career, which has spanned half a century, parallels the history of Korean landscape architecture, which was introduced amid the land development wave of the 1970s. With her work, she has long advocated for resilience and sustainability in constructed environments, presenting a pioneering vision that goes beyond the level of the local and raises global and contemporary issues.
彼女は1964年にSeoul National Universityを出て、75年に環境学で同大学の修士を取り、その後女性初の開発エンジニアの資格を取得したという経緯らしい。僕は当時のランドスケープ・アーキテクトの世代であれば、アメリカへの留学期間があるんだろうなと思っていたため意外だった。
展示の物量もなかなかのもので、まず最初に彼女のリノベーション?(もともとどういう状態だったのか分からない)が手掛けた中庭が迎えてくれる。
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いくつかのセクションに分かれるが基本的には彼女の設計プロジェクトのプロセスだったりの展示だけど、かなりのボリューム。僕としては嬉しいのだけど一人のランドスケープ・アーキテクトの特別展が国立現代美術館のメインとして据えられている事自体に驚く。
個人的には、延々とスタディや図面が並んでいて変に飾り立てず読み込める感じでうれしいが、覗き込んで写真を取りまわっている若者たちは同業者なんだろうな。
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彼女はIFLAから2023年にThe IFLA Sir Geoffrey Jellicoe Awardを送られている。(Peter Walkerとか、オランダだとH+N+SとWest8の設立者が受賞している)ソウル到着後すぐにこの展覧会に駆け込めたので、残りの時間でソウル市内の彼女の関わったプロジェクト巡りをすることにした。
YoungSun Jung emphasized the importance of landscape architecture through major projects such as the Asian Athlete’s Apartment Complex (1984), the Seoul Arts Center (1984),the Olympic Athlete’s Apartment Complex’(1985), Heewon Garden, Hoam Art Museum (1997-1998), Incheon International Airport (1999), Seoul Olympic Museum of Art and Sculpture Park (1999), Cheonggye Stream Restoration (Section 1, 2002-2005), Gwanghwamun Plaza (2007), Gyeongchun Line Regeneration Park (2014) or Seoul Botanic Park (2014).
仙遊島公園 Seonyudo Park
彼女の最も知られた仕事の一つ。もともと浄水場として用いられていた漢江の中洲のような場所を、”生態公園”にしたらしい。正直8月上旬の太陽に焼かれて意識がおぼろげではある。漢江の中洲はいくつかあり、それぞれ現在もリノベーションされたり現在進行系で進んでいてそれぞれ面白い。
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京春線森の道 Gyeongchun Line Regeneration Park
線路跡の公園化が特に有名ではあるけど、リニアなオープンスペースに手を加える手法はいたるところで見られるようになった。ここも廃線跡を公園として再生したプロジェクトである。
個人的にはかなり気に入って、全区間6kmをすべて歩いてみた。都市の中心部でこういう都市再生をやる場合どうしてもいろいろな観点から線状の新たな商業エリアが都市に貫入されたような状態になることがあるが、ここは手の入った緑道が粛々と続き、歩きながら周囲の街の変化が観察できるような感じだった。
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2.Mien Ruys:Garden Futures
2人目はオランダ人のGarden Landscape DesignerであるMien Ruys。彼女はJung Youngsunよりも活躍の時期は早く1920年代から活動している。彼女は育苗を営む家庭に生まれ、自身の育った街で実験的な庭園デザインが1924年に開始されたため、ちょうど100周年ということで今年多くの場所で取り上げられている。なので、戦前から戦後にかけての活躍であり、モダニズム期の代表的なデザイナーという紹介のされ方を見かける。
日本でもPiet Oudolfがかなり有名になってきているし、HIGHLINEを含めかなり注目を浴びている。僕はガーデニングの専門家ではないけれど、Pietを含めたThe Dutch Waveは現在においてもかなりの影響を与えており、4人の中でもHenk Gerritsen,Ton ter Lindennにインスピレーションを与えたことがレクチャーでも紹介され、オランダ国内でPiet達の先駆者として再認識されている。
彼女自身のガーデニングのスタイルは、父親の会社の設計からはじまり実験的に作庭しつづけたことや、英国での滞在中にGertrude Jekyllに会ったことが影響しているらしい。(Pleasant Place 5. Mien Ruysより)
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彼女の功績としては、先駆的なガーデナーとして、戦後の都市住宅・集合住宅開発におけるオープンスペースの設計をしたランドスケープアーキテクトとしての他に、雑誌や書籍などでの執筆活動によってガーデニングをオランダ国内で民主化したといった説明もなされている。
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彼女の庭にも行ってみたいけど、冬季は閉園しているので春を待たなければいけないし、学科長がGarden Landscape Architectなのでもう少しオランダのランドスケープの背景を理解してから取り扱ってみたい。Garden Futuresに関してはまた別に記事を書きたいと思う。以下にどなたかの訪問記事を見つけた。良いお年を。
カバー写真引用先
Seonyudo Park Garden of Transition, 2019. Photo: Yi Donghyup